最近ずっと。
毎日のように彼女は訪ねてくる。
それはもう、俺にとって違和感がないくらい
逢いに来るのは…。
「お邪魔しまーっす☆」
明るい声が玄関口から聞こえる。
「…また来たの?よっぽど暇なんだね。って。」
俺が皮肉を言ってやると、はさらっと返す。
「あら、暇じゃないわよー。愛しのカルピンの為に、無い時間をやりくりして
来てるんだから。」
そう、は毎日家の猫、カルピンに逢いにやってくる。
別に勉強の邪魔をするわけでもないのに、なぜか俺はそれが気にいらなかった。
「カールピンっ☆本当にお前は可愛いなー。欲しいなカルピン。リョーマ。
ねえってば、カルピンちょーだい?」
「やだ。」
この問答も、ほぼ毎日やっている。
「いいじゃーんっ。欲しいよぉー。…じゃあねぇ、カルピンのお嫁さんになるぅ!」
「は!?」
毎度毎度おかしな事を言い出すけど…これにはさすがに驚いた。
「驚いた顔見たの久々だわー。って、そでなくて、お嫁さん…駄目なの?」
「駄目、じゃなくて、無理。」
「うーん、じゃ、越前家へ養子に入る!」
「…。」
「駄目ー?じゃあね、おじ様の愛人になる!」
「ぐっ!」
思わず、飲んでいたファンタを吹き出しそうになった。
「何で吹くのよ!私は本気よ!」
「…なんでそこでそうなる訳?」
「だからっ、リョーマがカルピンをくれれば問題なし!ねー?」
「…あげない。」
だって俺は……。
――――――気付いてしまう…自分の、気持ちに。
いや、もう知らないふりは出来ないんだけど。
俺は、が…。
口では迷惑そうに言ってるけど。
カルピンに逢いに来るんじゃなくて、俺に逢いに来て欲しくて。
カルピンに嫉妬してるなんて。
「まだまだだね。」
「何がよーっ。リョーマがカルピンくれないから悪いのよー!」
「やだ。」
カルピンじゃなくても。
猫をにあげたら、もう家には来ない気がする。
「あっ、もうこんな時間!そろそろ帰らなくちゃ怒られるよ!」
「ふーん。じゃあ早く帰ったら?」
「うーん…。カルピン、バイバイ。また明日ね。」
名残惜しそうにカルピンの頭を撫でる。
「…また明日も来る気なんだ…は…。」
とはいいつつも、表情筋は俺の嬉しさを如実に表してしまった。
「休み?」
「うん。今朝メールが入ってね、野良猫に引っ掻かれて、そこにバイ菌が入って
膿んだらしいの。念のため病院行ってくるってさ。」
多分、カルピンにちょっかい出すみたいに、野良猫に手を出したんだろう…。
「そういえば、越前君に伝言。
『帰りごろにはそっちへ行くからね☆』
…だって。」
…懲りてないみたいだね。
「分かった。」
俺が背を向けると、後ろの方の女子が騒いだけど、気にしないことにした。
「あ、お帰り、リョーマ。」
…居るし…。
「右手。引っかかれたんだって?」
「あー、うん。がりっと。やっぱ野良はいけないね。カルピンが一番よ。」
にこにこといつもの調子で話して、カルピンを撫でる。
「危ないから、野良に近づくのは止せば?」
「でも野良でも可愛いのがいるんだよー。…いや、野良だから可愛いのもいるね。」
…?どういう事かわからない。
その気配を察したのか、はクスッと笑った。
「野良ってね、なかなか懐かないんだよ。一度捨てられたり、人間に傷つけられたりして、
人間不信に陥っちゃってるのがほとんどだからさ。だけどね、そんな子達でも毎日、
恐くないんだよ、私は大丈夫、仲間だよって思って接していると、心を開いてくれるの。
そうして懐いてくる子達が可愛くてさ。でも今回はちょっと焦りすぎたのね。
早く仲良くなろうとして、触っちゃったから。」
「…ふーん。」
「にぶいね、リョーマ。」
「は?」
「…もういい。」
俺に背を向ける。いつも拗ねる時にする行動だ。
「あのね、私、猫飼う事にしたの。」
それは、猫好きなであれば普通の事であって、何も、
俺のところから離れる、最後通告というわけでもないのに。
「…だ。」
「なによ、リョーマ……!?」
そむけられた背中から、を抱きしめていた。
「猫飼うのは良いけど、俺の家にも来て。」
バカバカしい独占欲だけど。
だけど、は誰にも渡したくないから。
「…やっと懐いてくれた。」
クスッ、と笑って、は回された俺の腕に、自分の手を重ねた。
「一番懐いて欲しい、不器用な猫さんの為に、私は毎日来ていたのに。」
カルピンが俺の足元に擦り寄って、くすぐったかったけど。
胸を熱く焦がすこの気持ちの方が、
くすぐったくて、
嬉しくて。
―後日。
「…、猫飼うんじゃなかったの?」
「うん、そうしたかったんだけど。リョーマのお嫁さんになれば、カルピンが
貰えるなーって思って。ね?だから、お嫁さんにして?」
「………言われなくても。」
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後足掻き
リョマドリです。これでも。カルピンばっかなのは管理人’s趣味です。
いや、ホントにカルピン欲しいです。猫好きなので。リョーマと海堂引き連れて、
にゃんこ同盟作りたいです。(半分マジ)うちのリョーマはどうもひねくれさんですね。
自分の中ではスイッチオン系だと思っているのに…。ただやっぱり、
リョーマを書くのは自分の中では大変らしいです。うーん、修行せねば…。
2002・10・26
2002・11・11改 月堂 亜泉 捧
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