意外に、この目の前で微笑んでいらっしゃる少年は、

身体が頑丈だったりする。

 

 

「不二って、結構身体丈夫だよね〜?」

「そうだね。風邪とか引かないし。」

「じゃあバカなんじゃない?ほら、バカは風邪引かないって。

 とゆー訳で私はバカじゃないって事ね!」

「あ、でも……夏風邪はバカが引くって言うよね。」

 

そして根性も頑丈にひん曲がっていると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天邪鬼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…いちいち嫌味な奴ね〜。」

「僕は客観的な事を述べただけで、誰かさんがバカだなんて一言も言ってないよ。」

「いーや、腹ん中では絶対思ってる!そしてせせら笑ってるわ!!この鬼!悪魔!」

「酷い言い様。」

 

クスクスと余裕の笑みを浮かべている辺りからしてムカツクわ〜!!

何でか不二は昔から私の事を目の敵にしてるみたいで、

いつもこうして2〜3倍の嫌味が返ってくる。

 

それでも、腐れ縁なのかどうにもクラスが一緒になったり、

同じ役職に就かされたりする。(例えば委員然り。)

 

……なんだろう、神様総出で私をいじめてないかなぁ……(涙)

 

 

 

 

 

 

 

 

「不二くん、皆には優しいけどね?面倒見いいからほら、勉強教えてくれたりとか。」

「だから、私だけなんだってば。いじめを受けてるのは。」

 

お昼。食堂で親友のといつもの通りにご飯を食べながら愚痴大会。

割合のんびりした性格のは、パックジュースを飲みながらのほほんと言う。

 

そう、不二は皆にすごく「いい子」で通ってる。

優しくて、カッコ良くて、勉強もスポーツも出来て。

一部の熱狂的な女の子たちからはまさに「王子様」って呼ばれるほどの扱い。

 

 

…あんな腹黒王子でいいのかな…。

 

 

あ、でもこの間風の噂で聞いたのは、私が不二に散々いじめられてるのを見て

「私もあんな風にされたい」って子がいるらしい。

 

世の中変わり者もいるものね〜。

何なら代わって欲しいわ、うん、マジで。

 

「不二くん、昔からあんな調子だったの?」

「ん?知らない。」

「え、知らない?」

 

パンの最後の一口を口にほうり込んでから、私は答える。

 

「んと…小学校の頃も、5〜6年ぐらいから不二と話し始めたんだけど…。

 その頃からあんなだったし。その前は知ってはいてもそんなに話さなかったなぁ。」

「…?じゃあ、特別何かしたわけじゃないのね?」

「そりゃそうよ!この素直でイイ子なちゃんが悪い事すると思う?」

「あはは、じゃあ別のところに原因があるわけだ。」

 

さらっと流したな、…う〜ん。

でも、他に原因って言ったって、私にはホントに何も思い当たらないし、

絶対私は悪くない。うん。

 

「ところで、その夏風邪のほうは大丈夫なの?。」

「え?あー…うん…多分ね。熱もでないし。」

「でも、気をつけたほうがいいよ?夏風邪って侮ってると、おっきな病気に繋がる

 事もあるから…ね?」

 

几帳面にパックジュースの箱とパンの袋を折り畳みながら、が心配そうに言う。

友達には恵まれてるよなぁ〜私。

 

不二は友達なのかって言うと、ちょっと違う気がするし。

 

「うん、アリガト。でも明日休みだし、今日はちょっと用事もあるし。」

「そう?うん…無理はダメだよ?」

「はいはい。」

 

に倣ってパンの袋を畳みながら、私はぼんやりと考えてた。

 

不二が私にだけ嫌味なことの、他の原因かぁ…。

どう考えても、嫌われてるとしか。

 

だから、その嫌われる原因が分からないし…

いや、別に嫌われてるからって何も問題ないわけだけど。

シカトされるとかよりはマシだし、嫌味な事以外はイヤガラセするわけでもないし。

 

…って、何考えてるんだか、私。

風邪の時に似合わない考え事しないようにしよう。

悪化しそうだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと、あとはこの備品チェックを……くしゅん!」

 

体育委員会の私は、こうして体育器具の点検や備品のチェックをするのも仕事の一つ。

「うーん、ちょっとマットのほつれが酷いかな…。予算に余裕があれば買ってもらって、

 無理だったら修理かなぁ。…と、後は外の器具か。」

 

靴に履き替えて外に出ると、夕方で気温が下がったとはいえやっぱり蒸し暑さを感じる。

 

「うぅ、気持ち悪い暑さ…っくしゅん!」

 

くらっと眩暈を感じるほどの暑さの中でも、くしゃみが出る。

やばいなぁ、さっさと終わらせて早く返って寝よう。

 

「…えっと、ボールは十分ね。んー、あとは…あっ、テニス用のネットが足りないなぁ。

 テニスのネットなら部活との折半で費用出してもらえばOKかな。」

 

用紙に書き込んでいると、文字がグニャッと歪む。

あー、これは本格的にヤバめ?

 

私はゆっくりその場に腰を下ろすと、深呼吸をする。

 

「…?」

 

呼ばれた声にゆっくり振り向く。

 

「不二ッ!?」

 

ビックリしたけど、叫んだ声でまたくらっとする。

やばい、大人しくしないと。

 

「何やってるの、こんな所で?」

「うるさい…ちょっと眩暈がしただけよ。」

「…ちょっと大人しくしてて。」

 

そう言うと不二の手が私の額にぴたっと触れる。

少し冷たくて気持ちいい。

それに、指が長いから華奢だとばかり思ってたけど、意外にしっかりしてる。

 

「…、水分取ってる?」

「え?」

「水分。今日何か飲んだ?」

「…えーっと、今日は…朝に牛乳一杯。」

 

私がそう答えると、不二は呆れたようなため息をつく。

 

「それは眩暈も起きて当然だよ。…軽い脱水症状になってる。

 こんな暑い日に全然水分取らないだなんて、自殺行為だよ。

 風邪引いてるんだったら余計に水分取らなきゃだめって知らないの?」

 

うっ、こんな時まで嫌味な…。

でも、今回ばかりは私の失態だもんなぁ。

 

「ごめん…。」

 

素直に謝ると、不二はどこかに走り去り、また戻ってきた。

 

「ほら、飲んで。」

 

口元にストローが当たって、私はゆっくりそれを飲む。

適度に冷やされたそれを飲むと、私は随分喉が乾いていたんだと分かる。

半分程度飲んで、私は不二に返した。

 

「…凄い、本当に遠慮もなく飲んだね。」

「っ、しょうがないじゃない。」

「僕の飲む分が減ったから、今度買ってよ?」

「え…って、飲めって言ったのあんたじゃん!」

 

少し復活した私は、不二の理不尽な言葉に言い返す。

 

「僕との間接キス代も含んでるから。」

 

その一言で、固まる。

 

「はぁっ!?」

「じゃあ、僕もう行くから。良かったね。僕が見つけなきゃ倒れてたよ。」

 

言いたい事だけ言ってから去ろうとする不二の服の裾を掴んで引き止める。

 

「何?」

「……その、ありがとう。」

 

素直にお礼を言うと、不二は一瞬止まって、

 

「どういたしまして。」

 

 

 

不二はそのまま部活に戻ったけど。

 

 

でも、しっかり私は見てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お礼を言った時、不二の顔が…赤くなっていた事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

腹黒めな不二様です。でもこれは中身が白いかも。本来は逆ですけどね!(ぇ)

スッゴイヒロインに辛く当たる不二を書いてみようと思って書き出しました。

なんか久々過ぎて感覚を忘れています(爆)ちょっと頑張らないとなぁ。(笑)

 2005・7・31 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

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