に濡れる街。

 

車のヘッドライトが、暗闇にの筋を浮かび上がらせる。

 

何台も、

何台も、

 

同じようにして。

 

 

 

小走りに道をかけていく人、

傘をさし、ゆっくり街へ吸い込まれていく人。

みなが、に遮られる、無言の世界。

 

 

街灯はちかちかと明滅を繰り返し、小さなさえ近づかない。

 

 

 

 

何かの明かりがぽとりと落ちた。

投げ捨てられた煙草の

 

にあらがいきれずに悔しいと、紫煙に叫ぶ。

 

 

 

ガシュッ

 

 

 

 

 

「…つまらねぇ。」

 

さえ隠れる重厚なに、

さえ羽ばたかぬ狭い

 

[咢、もうそろそろ帰ろうよ…。]

 

己の中のもう1人の者の言葉が、脳内に反響する。

 

「うるせぇんだよ亜紀人、黙ってろ。」

[アギト…。]

「どうせてめぇはあのクソアマに逢いてぇだけだろ。」

[クソアマって…のコトをそんな風に言わないでよ!]

「ほぉ、オレにたてつこうってのか。」

[っ…は、絶対守るって決めたんだ。

 

咢の眉根がひそめられる。

 

「亜紀人、お前いつから…。」

「あ、アギト発見!」

「な…。」

 

A・Tを履いた真っ赤な傘の少女は、咢の姿を見てそう叫んだ。

 

「あんだ、くそアマ。犯られに来たのか?」

「アキトは〜?」

 

汚い言葉を浴びせ掛け怯ませようとする咢をはさらっとかわし、更に近づく。

 

「オレは女だろうが容赦しねぇぜ。それ以上近づいたらブッ殺す。」

[アギト!]

「どうしてかな、アギト。」

「ああ?」

 

「どうして君は強いのに、を剥くの?私なんか、1秒で粉に出来る『牙』の王の君が、

 どうして手負いの獣のように、威嚇するの?」

 

しみも、りも、同情も、恐れさえ。何も映さない、虚空の瞳

 

「道を追い、上り詰め、王となったから?前に何もないのが怖い?」

「…。」

追われる、恐ろしさ?

 

ガジュッ、と地が抉れるような音を立ててA・Tを走らせ、一気にの元へ行く。

華奢な咢…亜紀人…の指が、それより更に華奢なの喉元を押さえる

 

「それ以上その口動かしやがったら、締めんぞ。」

 

ギリッ、と噛み締めたに、のように尖った犬歯が血の紅を施す。

 

「一騎当千…だけど、君は脆い鎧しか身に纏っていない。だから、どんなに武器が強く

 ても、もっと強い兵が懐に忍び込んだとき、君はあっけないんだよ。」

「うるせぇ!」

[やめて、アギト!にだけは手を出さないで!!]

「南 樹…。君の、恐れ…。」

「黙れ!!黙れぇっ!!」

 

の音がすべてを消し去る。

哀しい獣の慟哭を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……。」

「…ごほっ…今度、アギトに伝えておいてよ。私を黙らせるなら、もっと色気ある

 黙らせ方にして、ってね。」

 

亜紀人は、の身体をそっと抱きしめた。酷く冷え切ったその体を抱いて、

ますます胸が締めつけられた。

 

「…ごめん。」

「どうしてアキトが謝るの?」

「君を、守れないから。好きなのに…。」

「ありがとう、アキト。…でも、そうすると、私も謝らなくちゃ。」

「え?」

「…私、アギトもアキトと同じくらい好きだもん。ごめんね?」

 

亜紀人は静かに首を横に振った。

道路の水溜りをはじいて行く車の音は、咢のA・Tの音とよく似ていた。

 

上手く、想いを伝えられないんだ。

「僕も、そうだよ。…アギト、今は不貞寝してる。」

「…時間はかかるかもしれない、けど、私、頑張るよ?アギトに、想いが通じるように。」

「大丈夫…だって、後ろ姿だけで、僕らを『どっち』か判断できたんだから。」

(お兄ちゃんでさえ、出来なかった事を。)

 

自分は貴方を水の底から引き上げるための、ロープでいい。

「彼」のように、「」になる事は叶わないけれど。

貴方と空とを繋ぐ、ロープになれれば、いい。

 

大好きだよ。

 

押し潰すようなこの雨雲を抜けて、永久に広がる青空の元へ。

 

 

大好きな貴方を、導く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

いえーい、自己満足!!(笑)亜紀人と咢の話を書きたくて書き始め、抽象的に進めて

いったら、最後まで抽象的で終わりました。(ダメじゃん)

えーっと、言い訳すると長くなりそうなんでやめます(苦笑)好き好きにとってください。

 2004・2・25 月堂 亜泉 捧

 

 

 

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