貴女の元へ

 

 

携帯の着信音が軽やかに鳴る。

着メロで分かる発信者。でも、ディスプレイを見るとやっぱり顔が綻ぶ。

 

『メリークリスマス!、今何してる?』

 

私の彼、不二 周助からのメール。

私は急いで返信メールを打つ。

 

『今、ちょうどケーキ食べ終わってのんびりしてたトコだよ。』

 

送ったと同時に、早くメールが返って来ないかとディスプレイを見つめつづける。

そう言えば、普通クリスマスといったら、恋人同士で過ごすのは定番、って感じだけど、

私たちは中学生だから、夜逢うってのは流石に…ね。

だから、夜に逢うのは高校に上がってからにして、今年はとりあえずそれぞれの家で

家族とクリスマスを祝おうって話になった。

 

 

着メロがまた鳴る。

 

『じゃあ、まだ部屋には行ってないんだ?』

 

『ううん、もう自分の部屋にいるよ。居間でメールすると、何となく恥ずかしいし。』

 

 

 

『そっか。あ、僕もうそろそろ寝なくちゃ。』

 

 

『え、随分早くない?』

 

 

『うん、いろいろ忙しくてね。もっとメールしていたいんだけど…。』

 

 

『ダメだよ周助、無茶しちゃ。また部活で逢えるじゃない。』

 

 

『…うん、そうだね。じゃあ、おやすみ。』

 

『うん、おやすみ周助。』

 

 

 

 

少しだけ寂しいけど、仕方ないよね。周助だって寂しいだろうし。

それに、部活は三日間お休みになってるけど、周助の事だから自主練とかしてるだろうし。

もうちょっと、自分に優しくしてもいいのにな…。

 

「はあ。」

 

窓から外を見ると、きらきら光るイルミネーションの光。

最近は自宅ででもイルミネーションライトをつける人がいるから、結構道が明るい。

いつかは、凄いイルミネーションのトコを、周助と一緒に歩けるといいなぁ…。

 

「…寝よう。」

 

ちょっとだけ寂しさが増して、私は布団へもぐり込む。

ひやっとした布団が、なんだか妙に切なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん…。」

 

…ふと、目がさめる。

何時だろう?時計に目を配ろうと首を横に向ける。

 

 

「周ッ…!!!」

 

瞬間、周助が私の口を塞いで、もう片方で人差し指を自分の唇に当てて、

 

「しーっ。」

 

…その笑顔がスゴクかっこいいんだけどっ、けどッ。

 

「ほほひへほほひひふほほ!(どうしてここにいるのよ!)」

「フフッ、驚いた?…サンタさんの真似、かな。」

 

驚かないわけないでしょっ!?普通!!

っていうか、今ので通じたのがすごいなぁ…愛の力?

…そうじゃなくて。

 

「…っぷはっ、周助、どういう事?」

「どういう事も何も…。僕はここにいるよ?本物だし、生霊でもなんでもないからね?」

「そうは思ってないけど…だいたい、どうやって入ってきたの?」

「そこの窓から。」

「ここ二階だよ…!?」

「うん、いろんなトコ伝って入ってきたんだ。あ、二階だからって窓の鍵開けっ放しじゃ

 ダメだよ。可愛いがいつ、こうやって攫われるか分からないからね。」

「きゃあ!」

 

パジャマ姿のまま、周助にお姫様抱っこされる。

 

「フフ、可愛いなぁ、ってば。」

「ちょっ、やだ、降ろしてよ…。」

「どうして?」

「恥ずかしいし…私、重いでしょ?」

「そんな事ないよ。僕のお姫様は本当に照れ屋だね。」

 

にこっといつも通りの微笑み。

こういう恥ずかしい台詞もさらっと言えちゃう周助ってすごい…。

そしてそれが似合ってしまうのも……。

 

私を横抱きにしたまま、ベッドに腰を下ろす。

 

「さて、。手を出して。」

「え?」

 

私が素直に手を出すと、ポン、と置かれた小さな包み。

 

「…なあに?これ。」

「僕からのクリスマス・プレゼント。開けてみてくれる?」

 

言われるままに、そっとリボンを解いて、箱を開ける。

中に入っていたのは、可愛いリングだった。

 

「…周助。」

「気に入ってくれた?クリスマスプレゼントにリングなんて安直かなぁって思ったん

 だけど、僕の気持ちを表すのにこれ以上なかったから。」

 

そっと私の手を取って、リングを右の薬指にはめてくれる。

 

「ずっと途切れる事がない想い。…への想い。それを、約束したくてね。」

「周助…。」

 

 

まだ光っている外のイルミネーションに照らされた、周助の綺麗な顔。

 

 

それが、いつもとは違う気がして、不安な気持ちになる。

 

 

 

 

 

自分から、確かめるように唇を重ねる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…驚いた。いつもはしてくれないのに。」

「…っ。」

「ありがとう。…最高のプレゼントだよ。。」

 

周助のほうから、もう一度甘いキスが送られる。

 

 

聖なる夜。

 

 

交わす約束。

 

 

 

そして、甘いプレゼント。

 

 

 

それを届けるサンタはやっぱり、愛しい人のほうが…いいよね。

 

 

 

 

 

 

 

(でも、お願いだから夜中に侵入しないで…って言うか…寝顔、見られたのかな、私…!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

========================================

後足掻き

不法侵入不二様。本当はもっとギャグテイストにする予定だったのに予想以上に甘い…。

本当は侵入した不二様はクロロフォルムをヒロインに嗅がせたり、いきなりそのまま

拉致したりしたんですけど(笑)そのほうがよかったかなぁ…。うちの不二は黒い

からなぁ…。そっちのほうがうちの不二らしいっちゃらしいんですけど。(これも十分

黒いですが。)まあ、スイートクリスマス、という事で。

 2003・12・24 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送