水に浮く泡は

とける トケル…

この想いもまた

とける トケル…

 

 

 

Bubbles IN Chocolate

 

 

 

 

水の音が聞こえる。

ザー…と、断続的に。

 

「何してるんです。水道代の無駄ですよ。」

「んー…。」

 

生返事を返した彼女は洗面所から離れず、蛇口から流れ落ちる水を見ている。

 

。止めますよ。」

「あっ…。」

 

僕が蛇口を締めると、名残惜しそうな声を上げた。

 

「一体何してたんです。ずっと水道出しっぱなしで。」

「うん…。泡見てた。」

「泡?」

「水の中の泡、見てたの。」

「なんだってそう、非生産的な事を。」

 

彼女は時々、こうして意味不明な事をする。

 

「水の中の泡って、どうして泡でいられるんだろう。」

 

そして、彼女の考えはひどく哲学的だ。

ここで僕が正解を言ったとしても、彼女はけして納得しない。

 

「辞書でも引いて調べればいいでしょう。」

「…観月は、そういう事不思議に思わないの?」

「思わない。」

「うわ、言いきったし。」

「そんな事を考えるより、別のことを考えた方がよほど役に立ちます。」

「―――じゃ、泡って不必要?」

「そういう事ではないです。僕の考える領分ではない、だけです。」

「ふーん。」

 

は黙り込んで、ぼんやりとどこかを見つめている。

 

「なんなんです、今日は。突然押しかけてきたと思ったら何をするでもなく…。」

「泡が入ったの。」

「は?何に?」

「―――…。」

 

また黙り込む

 

はいつも主語が足りません。会話を成り立たせる気があるんですか?」

「それなりに。」

「―――もういいです。」

「―――泡が入ると見栄えが悪くなるなぁって。」

「…謎かけですか?」

「んー?事実だけど。」

「事実?」

「半分事実、半分例え。」

 

どうしてこうも端的にしか話さないんでしょうか。

普段は普通に話すくせに、時々こうして訳のわからない事を言い出す。

 

「…分かるように言えよ。」

「わー、地が出た観月さん。」

「うるさい。で、何なんだよ。」

「コレです。」

 

が気まずそうに渡してきたのは箱。

可愛らしくラッピングされた箱。

 

「……なんですかコレ。」

「見てわかんにゃーですか。」

「……チョコレート?」

「そうデス。」

 

そういえば今日はバレンタインデーでしたね。

忙しさにかまけてすっかり忘れていましたが。

 

「――あなたにしては安直ですね。」

「悪い?」

「いいえ。」

「――――――で、泡が邪魔なのです。」

 

やっとの言いたい事が分かって、深く溜息をつく。

 

「…つまり、チョコレートを作ったはいいものの、泡が入ってしまって見栄えが悪いと。

 泡がなければと思う…と。そう言いたいわけですね。」

「そうなんです。さすが観月君。」

「はぁ…バカですね、貴女は。」

「結論は結局それかよ。」

「当たり前だ。泡が入るのはの作り方が悪いせいでしょう。」

「あーはい、悪うございました!どおせ私は不器用ですよーだ。」

「いつものに戻りましたね。」

「は?」

 

僕は包みを開けて、チョコレートを取り出す。

小ぶりなハート型のチョコレートには、確かにいくつか気泡が見られた。

 

「渡すのが照れくさかったんですか?」

「…うるっさいなー。」

 

僕は躊躇いもなく1つを口に放り込む。

ふわりと甘い味が口に広がる。

うん、味は悪くないですね。

 

「美味しいですよ、、ほら。」

 

と、不意打ちで彼女にキスをする。

 

「…ね?」

「……本体くれればいいじゃない…。」

 

はそっぽを向いた。

その耳は、赤く染まっていた。

 

「嫌ですよ、せっかく貰ったんですし。それにほら、。」

「何よ。」

「気泡、溶けたでしょう?」

「は?」

「気泡、無かったでしょう?」

「まあ、そりゃ無かったけど…。」

「僕はどんなに見栄えが悪くても、のものなら喜んで食べますよ。

 それに、貴女が心配するほど貴女は見栄えが悪くありませんよ。」

「…気付いたの?」

「もちろんです。貴女らしい考えだとは思いますがね。でも

 空気は必要なものなんですよ。僕にとって。」

「…………。」

 

「分かりませんか?

 

 

 

 

 僕はが好きで、必要としている…という事ですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

また抽象的だ…。もう半分諦めました。仕方ないんです、私はこうなんです。

バレンタインという事で、チョコ話にしてみました。…言い訳から参りましょうか。(汗)

さんが悩んでいたのは、気泡(私)があることでチョコ(観月)の見栄えを悪くして

いるのではないかと。思ってたと。はい、分からないですね。すいません(泣)

月堂はバレンタインチョコなんざ作りません。作れません。匂いで死にます。

というわけで父には毎年既製品。そしてそれは姉の手に渡る。(笑)バレンタインって

なんだろう…。 まあとりあえず、逝っときます。

 2003・2・14 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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