父親の仕事の関係で色々な学校を点々としてきた私には、「友達」といえる人が少なかった。
むしろ、居ないと言った方が近いかもしれない。
でも、そんな私に初めて出来た「友達」。
大事な、友達。
BEST…?
窓の外を景色が走っていく。
本当に走っているのは私達のほうなんだけれど。
青い山並みや、民家、田んぼ。
もう遠くなってしまった、小さくて巨大なビル。
ほんの少し都会を離れるだけで、あの灰色の空から抜け出せる。
「、ポテチ食べる?」
「あ、うん…。」
都心じゃあまり見かけないボックス席に座って。
正面に座る彼は私にスナック菓子を勧めた。
でも、私は生返事をしたまま再び窓の外を向いてしまった。
「どうしたんだよ、〜。」
「ん…景色に見惚れてたの。」
「景色?」
私の言葉に誘われるように少し窓の外を見た後、彼はまた目線をこちらに寄越す。
「綺麗でしょ?」
「う〜…綺麗には綺麗だけどぉ〜…。」
「?」
「オレ、どーにもダメなんだよね。電車から景色見ようとすると、すげぇ近くのものまで
目で追っちゃうから、目が痛くなるんだよね。」
眉を寄せてあからさまに困ったような顔をする彼に、つい笑みが零れる。
「英二ってば、動体視力良過ぎるからね。遠くの景色に集中するって出来ないの?」
「う〜ん…難しいにゃ〜…。」
チャレンジしているものの、眉間に深くしわを寄せて見ている。
「無理しなくていいって。そんなの面白くないでしょ?ほら、手塚君みたいになってる。」
「んあ?あ〜、ホントだ!」
慌てて眉間を撫でてこちらを向き、にっこりと邪気のない笑みを浮かべる。
つられて笑うと、しばらく笑いが止まらなかった。
「目的地到着〜☆」
そこは、昔保養所だった場所のテニスコート。
数年前にここの町が買いとって、無料解放しているとか。
たまに英二と私はここでテニスをする。
とはいえ、英二と私じゃ勝負にならないからほとんどお遊びラリーだけど。
「行くよ〜。」
「いっつでもOK、ドンとこいっ♪」
軽いステップで私からの送球を待つ英二。
あの日も、これくらい元気だった。
私が転校してきた日。
遅刻してきた彼は、私に衝突してからこう言ったのだ。
「うわぁ!ゴメン!………おりょ?……転校生かぁ!ヨロシク〜☆」
余りのテンポの早さに思わず握手してしまったと言う…。
それ以来、英二と仲良くして、さらに彼の(沢山居る)友達とも仲良くなった。
それでも、私にとっての一番の親友は、間違いなく英二だった。
「あ〜!!!ごめん、英二!」
「うわぁぁ!ホ〜ムラン〜!いいよん、オレ取ってくるから!」
竹林の方へ走っていく英二。
私はベンチに腰掛けて、彼のテニスバックを何気なく見つめる。
ファスナーについてるキーチェーン。
キーチェーンについた、プリクラ。
そこには、英二と彼の部活仲間が写っていた。
「…ぁ…。」
ズキリと胸が痛んだ。
プリクラに写っている英二は、とっても楽しそうな笑顔をしていて。
あの笑顔は…私だけのものじゃないんだって、改めて気付かされた。
「ふひぃ〜、あの竹林、入ってみるとけっこー深かったにゃ〜…。
…?どーしたの?」
「え、あ、ううん?何でも…ない。」
「…ウソつかな〜い。」
英二は私のほっぺたをむにーっと引っ張った。
「ひたひ、えーひ、ははひへ。」
「にゃははは、変な顔〜♪」
ぱっと手を放してから英二はくるっと後ろを向く。
竹林の間から見える、海。
「オレは、この景色すっごい好き。…それも、の見るのが格別!」
「…え?」
「大切な人としか見ない。……ここの景色は…。」
向き直った彼の顔は、見た事がなかった。
私は、なりふり構わず飛び込んだ。
その、素敵過ぎる笑顔を、1人占めするために。
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後足掻き
ザ☆暴挙です。何と、告る直前…?…いえ、多分この二人は告りません。
もう、お互いの思いは分かっちゃってるので、今更言葉にする必要も無いって事です。
菊ちゃんが相変わらず苦手の癖に、ネタが思いついたがゆえ書きました。ちなみに
出てくるテニスコートは、ホントに似たような場所を知ってるので…実家の近くに(笑)
そこは解放してませんけどね。にしても…菊ちゃんが某人物に似てきてしまうのは
深い愛の故でしょうか(殴)
2004・10・14 月堂 亜泉 捧
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