『出会い』
―まもなくドアが閉まります―
「はぁ…間に合った…」
休日の午前。俺は電車に駆け込み近くの壁に手をつき呼吸を落ち着ける…
「7時…か…」
不意に触った携帯を開き時間を確認。
いつもこの時間なら寝てる時間…。
自慢じゃないけど朝は凄く苦手だったりする…
そんな俺が何故こんな時間に一人で電車に乗ってるかと言うと一つの理由があったから…
「はぁ…っ。見たいけど…今回の情報おっそいっつーの…剣一っ」
情報網の広い知り合い゙霜山
剣一"からの情報でこんな朝早く電車に乗り込んでいた…。いつもなら数日前に情報が来るはずだが手違いで4時間前に連絡が来ていた。
そのときに見れていれば良かったけど
ちょうど夜のことで疲れきって寝てしまっていてそれどころではなかった。
「ふあ〜あ……。返事こないからって…朝早く電話してこなくても……。
ったり〜…全然頭働かねーじゃん…」
目を擦りながら俺は目的の車両に移動する。
夏に…しかも海へ行くときにしかみれないかと思ってたせいもあった。
すぐさま電話を切るなり着替え財布を持ち家を飛び出たしていた…
と言うのがこの電車に乗るまでのこと。
もちろん「電車に乗ってくる」などの置手紙など残さず…。
「…今頃騒いでそうだな…。いや…もしかするとコアラ等身大人形が俺と思い込んで……
…うわ…嫌な図だな」
勝手に想像しながらも目的の車両につくなり一点の壁を見る。
そこにはまだあった…
俺の思い出の証が…。
―手書きのコアラの落書きが―
俺がまだ5〜6歳の時に兄貴とはぐれ途方に暮れていたときに
あいつが慰めで描いてくれた絵…。
それを見るのは年に1度の俺の日課になっていた…。
お世辞でも上手いとは言えないけど…俺にとっては心の安らぎだった……。
今では本人が傍にいる…日課もなくなってもいいとは思う…けど、俺はまた見てしまう…。
夏にしか見れないはずのもの…。それが今年2度も見れた。
「んっとに…下手だな…もっと絵の勉強しろってな…♪」
この思い出の電車がなくなるまで…俺はいつでも見に来る…絶対に…
『おまけ』
「さてと。あとは降りて家まで戻るか……………ゲッ!連絡するの忘れてた!?」
この後、電車を降り携帯を見ると何十件もの電話とメールが来ていたことは
言うまでもない…仕方なく迎えを呼んだ事も…
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