私はカメラが嫌い。

とにかく姿を映すものが嫌い。

何で嫌かなんて分かんないわよ!!!

 

 

 

 

ファインダー越しの笑顔

 

 

 

 

 

「ヤダっ!ぜぇったいにヤダっ!」

 

現在必死に抵抗中。抗っているのはプリクラの前。

今、不二 周助とゲーセンに来ております。

はっきり言って不二とゲーセンは似合わないと思う。微妙にハイソだからね。

温和そうだし。図書館とか美術館にいた方が絵になる感じがスゴイするけど。

そんなヤツの彼女に、つい先日なっちまいました(嫌そう?)

 

「どうして。カメラじゃないんだから大丈夫でしょ?ね?」

「同じだよ、カメラもこれも!」

「いいじゃない。どうしてカメラ嫌い?」

「知るかっ、んな事!嫌いなもんは嫌いって言ってんの!OK!?」

 

不二の趣味はあろうことか、私の大嫌いなカメラ。

それでも付き合ってるんだから、こういう口論はしょっちゅうなのです。

友達のには「痴話ゲンカじゃん。」とか言われたけど…。

私は嫌なんだっての!ヘビまとわりつけられたらヤでしょ?そんな感覚なのよ、

私にとってカメラに向かうという行為は!!

 

不二は小さくため息をついて、私のほうを向き直った。

 

「でも、小さい頃は写真に写ってたんでしょ?どうして写らなくなったの?」

「それは…。」

「それは?」

「笑わない?」

「笑わないよ。」

「泣かない?」

「泣くわけないじゃない。」

「呆れない?」

「絶対呆れない。」

「逃げない?」

「逃げない。むしろ捕まえて離さない♪」

「(うわ、出たよこの変態)跳ねない?」

「(跳ね…!?)跳ねないよ。どこかの中学の『ミソ』じゃないんだから。」

「(ミソ?あー、あの…なんだっけ…「むかし」じゃなくて、む…。まあいいや。)…。」

「ネタ尽きたでしょう。さ、早く教えてよ。」

 

にっこりと笑う不二。

かっ、カッコイイんだけどさぁ?

どこかしら怖く感じるのは、私だけなのかなぁ??

 

「…心霊写真…になるのよ。」

「は?」

「呆れないっつったろそこー!」

「聞き返しただけだよ。心霊写真って、この間僕が撮ったやつはそんな事なかったよ。」

「うっさい!とにかくそうなの!だからっ、もう行こうっ!」

「撮ろうって。大丈夫だよ。もしに霊が取りついてるって言うなら、

 僕が払ってあげよう。…『僕の』の身体に触るなんて、許せないし…。」

「ちょっと待て、何で、いつから私は不二のものになったんだ?」

 

うわぁ…目がやばいぞ、こいつ…。

つか、人の話聞かないし…。

霊は私の身体触れんよ、死んでんだから。

 

「いい加減行こうよ、撮らないんだから。撮りたい人もいるから、迷惑になるでしょ?」

「ここにいるよ、撮りたい人。」

「……不二っ…あんたねぇ…。」

「じゃあ、すぐ襲われるのと、撮るのとどっちがいい?」

「選択肢少なすぎる!!」

「答えて。(にっこり♪)」

 

なんつー思考回路だ、不二の頭!!どこかに強打した!?

貴様のさらさらへヤーは頭ちゃんと守ってんのか!?(単なる僻み)

 

「…不二をコンパクトにまとめて逃げる。」

「(…まとめる…?)じゃあ、撮るっていう方向性で。」

「ちょっ、撮るなんて言ってないじゃん!?」

 

何でこうも自己中なの!?

 

「私、帰…。」

「『自分が嫌い。』」

 

不二が放ったその一言は、私の足を止めた。

店内に流れていたBGMのせいで、お互いの声はかなり聞きにくかったのに。

 

その言葉は、私にまっすぐ伝わってきた。

 

同時に、回りの音は全て、掻き消えて…

回りの光景は、全てフェードアウトして…

不二の姿と声しか…伝わらなくなった。

 

「『自分が嫌いで、こんな姿が気に食わなくて…出来る事なら消してしまいたい。

 それなのに、写真に映ったら、全てが残る。嫌いな自分が、残る。』」

 

不二の、男の子にしては高めの柔らかい声が、私の心を読むように言葉を紡ぐ。

 

「…そう、怖いよね…自分は…。誰よりも身近にいるくせに一番分からない、謎のもの。

 そして、自分の理解できない物は、排除する…嫌悪する。

 だから、自分が嫌いで…消してしまいたくなる。」

 

不二の綺麗な目が、まっすぐに私を捉える。

あの日と同じように、その…青くて綺麗な瞳が…。

 

けれど、あの日のような熱情はなく、

深く沈む陰鬱な色しかなかった。

 

「僕は、人から綺麗、とか言われることがあった。今でもたまに、そうだけどね。

 でも僕はその良さなんて分からないんだ。自分は自分でしかなくて、人の羨むような

 事はなかったから。でも…その事は言えずにいた。常に笑顔で、辺り障りのない言葉を

 かけていればよかった。それが変わったのは…に出会ったから。」

「…私に?」

 

不二はくすっ、と笑った。

 

「忘れもしないよ、君と一番初めに話した事。」

 

 

 

 

、あの人がほら、有名な不二 周助君だよ。』

『あー、うん。で?』

『で?って…カッコイイでしょ?後輩とかからもスゴイ人気なんだから。

 あっ、こっち来たよ!』

『ふーん…。』

『初めて一緒のクラスになるね。僕は不二 周助。よろしく。』

『うん、私、 ね。まあよろしく。ところでさ…疲労困憊してない?』

っ!?』

『いや、随分疲れてる感じじゃん。なんつーの?仮面被ってる感じ。そこがかっこ悪いね。

 もっと「自分のまま」だったらカッコイイかもだけど…無理しててもねぇ…。』

『…クスクス…面白い人だね、さんて。』

 

 

 

 

「あー…そうだっけ?」

「飾らなくて、率直で。ストレートで「綺麗」なが好きになったんだ。

 だから、そんなを写真に収めるのは…。とても素敵な事だと思った。」

 

ああ…そう、私は私が嫌いだった。

コンプレックスの塊で。

不二に言った言葉も多分、僻みなんだろうけど。

 

「カメラは、嫌い。」

「嫌いでもいい。今はね。でも…今のは、本当に綺麗だから…。

 自分が変わったかどうかも…残しておかないと、わからないよ、きっと。」

「…じゃあ、写真に映っても変わってなかったら?」

「それはないよ。僕が保証する。でも、自分が変わってないというんだったら、

 これから変わればいい。その手伝いの為に、僕も…変わるから。」

「…どう変わるの?」

「もっともっとを好きになる。」

「…変わってないじゃない、今と。」

 

そういいながらも、何だか目頭が熱くなってきちゃって。

そういう時、不二が何だかかっこよく見えてきちゃって。

 

「…泣かせちゃったね。ごめん。」

「ホントだよ…バカ…。」

「…好きだよ、…君の弱いところも、全部。

 でも、僕の記憶はそんな君の可愛いところをいつまでも残しておけないんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?、何そのプリクラ!!ちょーだい、不二君とツーショット!羨ましい!!」

「だめっ。」

「えーっ、ずるい!いいじゃない!」

「ダメなの、これは…。私の、成長記録なんだから。」

 

 

 

 

 

成長記録。

不二とプリクラを撮る。

少し目が赤いのは痛いけど、十分いい笑顔だと思う。

心霊写真が撮れるって嘘はすぐバレた。

怒る代わりに……キス、された………。

私の、カメラ嫌いはちょっと軽減された気がする。

不二と、絆が深まったような気がする。

不二となら、カメラも…ほんの少しくらいは好きになれそうな気がする。

 

 

 

 

 

 

 

========================================

後足掻き

書いてて途中から何だか訳分からなくなってきちゃった。(ダメダメ)ファインダー越し…

の続き。今回は変態度抑え目のちょっとシリアス?な感じで。この主人公、私の生き写し

って感じですね…。いやもう、ほんとにこのまんま?プリクラ…とってないねぇ…。

不二はゲーセンとか行きそうにないと思う。偏見で。つか似合わない。

とにかくもまあ…修行しよう…最近書いてなかったから余計に腕が落ちてるよ…(苦笑)

 2003・2・1 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送