庭先にぽってりと咲く花。

優しい色合いをしながら、どこか悲しげなその花は、

まるで……。

 

 

花の色は…

 

。」

 

庭先から彼女の名前を呼ぶ。少し間を置いてから、パタパタと可愛らしい足音が聞こえた。

 

「源次郎!来てくれたのね。」

 

青紫の着物が良く似合う。襷がけをしているところから、家事をしていたのだと

うかがえる。

 

「うん。どうだい?元気だった?」

「ええ。何せ私は丈夫さが取り柄だもの。」

 

屈託なくにっこりと笑う

ボクはこの笑みがこの上なく好きなんだ。

 

「ははっ、でも前よりも可愛くなったね」

「またそういうこと言って。一体何人の女の子にその台詞を言ったんだか。」

 

はそう言いつつも、馴れた手つきで座布団と火桶を用意する。

こういうちょっとした心遣いも、ボクは嬉しい。

 

「ひどいなぁ、に初めて使ったのに。」

「本当かしら。」

「本当だってば。信じてよ。」

「分かったわ。信じる。…そうそう。ねぇ、源次郎。今日はいいお抹茶が入ったの。

 ちょっと一服しない?」

「いいね。あー、それならお茶菓子持ってくれば良かったな。」

「ふふ、大丈夫。お団子とお饅頭あるわよ。」

「さすが。用意がいいね。いいお嫁さんになれるよ。あ、ボクのお嫁さんになって

 くれるのかな?」

「冗談言って。まったく、その気にさせるのが上手いことで。」

「冗談じゃないんだけどな。」

 

茶の間へ立つの背を見送る。

何だか、すごく幸せな心地がする。

ふと庭に目をやると、一角に椿の一種である花が咲き始めている。

そう、ボクらを繋いだ、侘助の花が。

 

 

「才蔵。」

「はっ。」

「あの侘助の植えてある家は、誰の家か分かる?」

「あの家、でございますか。確か茶人の家だと記憶しておりますが。」

「茶人の家か。だから侘助があるのかな。才蔵、ちょっと行ってきていいかな。」

「お待ちください幸村様!」

「大丈夫だよ。才蔵は屋敷に戻ってて。」

 

足早に駆けて行く主を見て、才蔵はそっとため息をもらす。

 

「…全く、自由奔放なお方だ。」

 

その庭には、様々な花が植えられていた。

茶人は季節により飾る花を変えるという。

雑然としていながらも、どこか風情のある庭だった。

 

「あら?」

「こんにちは。」

 

丁度縁側に出ていた女性に話しかける。

 

「どなた?」

「別に怪しいものではありません。この家の侘助の花が気になって。」

「まあ…。ひょっとして、茶人でいらっしゃるの?」

「いいえ。豊臣の侍ですよ。」

「紀州に居ると言うことは、真田方のお侍?」

「…はい…まあ。」

「あ、申し遅れました。私、といいます。」

さん。素敵な名前ですね。ボクは源次郎って呼ばれてます。」

「源次郎さんですか。」

「ええ…。」

「でも、お珍しい。いくら豊臣のお侍様とは言え、侘助のお花をお気に召されるなんて。

 お侍様方は首切花と言って、椿はもちろん、侘助でさえも嫌うのに。」

「そうですね。でもボクは、潔くて好きなんです。」

 

そっと、侘助の花弁に触れる。艶やかな感触がほんのりと伝わる。

 

「精一杯に咲き誇り、栄華を極めた瞬間にふと散り行く。

 …そうなりたくは無いですけど、でも、そうなれたらどんなに幸せだろう、とも

 思うんですよ。」

「私は…散っているのではないと思うんです。

 花弁もそのままに落ちて行く花…。まるで、地上に花を咲かせたように見えるんです。

 木の上で力尽き落ちてしまっても、また地上で咲き綻ばんとしている様に…。

 ゆくゆくは、また木の上に咲き誇ろうと思っているかの様に…。」

 

ボクは、心中複雑な想いで聞いていた。

この人は、ボクが真田 幸村だと知っているはずは無い。

なのに、まるでボクらのことを励ましている様に…。

 

ダメだね、気が弱くなってるのかな?

こんなに都合いい事、無いと思っているのに。

 

「あ…すいません、こんな事言って…。お詫びに、上がっていきませんか?

 拙い腕ですけど、お茶、立てますので。」

「本当ですか?わぁ、嬉しいなぁ。じゃあ、お言葉に甘えて、ご馳走になります。」

 

 

あれ以来、ボクはの屋敷に遊びに行くようになった。

は早くに母を、最近は父をを亡くしたため、この屋敷に一人住まいなのだそうだ。

明るく、気立てがよくて優しいは、ボクに安らぎを与えてくれた。

…みずきの時みたいに。

 

「源次郎?」

 

が盆に茶と和菓子を載せて運んできた。

 

「あ、ありがとー。」

「なんかボーっとしてたみたいだけど?どうかしたの?」

「ううん?あ、に見蕩れてたって言えばそうかも。」

「もーっ、またそういう事言って。」

 

彼女には、ボクの本名も明かしてない。

明かしてしまったら、“また”何かがボクらの間を遮るから。

 

「……。」

「何?」

「…抱きしめていいかい?」

「えっ???」

 

了承も得ぬまま、の腕を引き寄せる。

細い身体は、華奢な方のボクでも、すっぽりおさまってしまう。

…こうして、どんなに近くにいようとも、僕らには遮るものがある。

 

それはけして、取り除かれる事はなく…。

 

優しい、暖かな“今”は、時に残酷で。

侘助の花はまるで、その暖かさと悲しみを…写している様で。

 

 

 

 

抱き合うボクらの後ろでまた一つ、侘助の花が音を立てて散った。

 

 

 

 

 

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後足掻き

幸村ーっ!!大好きだチクショーッ!!(謎)幸村が好きで仕方なくてついにかいちまい

ました。この幸村はどちらかというと漫画版の幸村にしたかったんですが…。手を出さな

い幸村…アニメ版風になってしまいました。だって!!漫画版にするとギャグになるし、

裏行きとかっ…(グハッ!!)そ、そんな感じです。アニメ版は皆ストイックだよー。

狂さんとか渋い渋い。ベリシブ。イイじゃん?深夜放送なんだし!!みずき(習性で

みづきって打つ私。)なんかは本誌見てないと分かりませんな。アニメファンの方は

すいません。いや…緒方さん嫌いじゃないですよ?むしろ大好きですよ!?

ただ…本誌第1話目からずーっと読みつづけている私としてはの意見なわけでして。

ああ…後書きが長い(死)そろそろ去ります。はい。

 2002・12・15 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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