彼は私と全然違う。

考え方も、生き方も、全部。

 

 

「どおしたのっちゃん。虚ろなカオしてさっ。」

 

いつもなんでこんなに明るい顔が出来るのか、とも思う。

 

「いいよねぇ…千石は日々が幸せそうで。」

 

先輩にタメ語を使うのもどうかと思うけど、千石はそうして欲しいと言ったから。

今じゃコレがすごく普通になっている。

 

「へ?」

「私はもうお先真っ暗。」

 

そう、私忍足 は、不幸の名のもとに生まれてきているのよ…。

 

「何があったのさ、いきなり。」

 

すごい事があったのよ。もう、泣けてくるほどだよ?

私は大きく息を吸ってから、

 

「今朝の事です。道を歩いていたら植木鉢が落ちてきて、それを避けたら側溝の蓋の溝に

 傘が引っかかって転んで、鞄が空いちゃって中身全部飛び出してお弁当台無し。」

「…ちゃん…それって…。」

「私も思ったわよ。三流のギャグ漫画みたいねって。兄さんにも笑われたもん。

 千石のラッキーが欲しいわ…。」

 

溜息を盛大についてみせる。千石の笑顔が憎々しいほどだわ…。

 

「今日兄さんに用事があって氷帝学園まで行かなきゃならないんだけど…。

 もう今からスゴイ不安…。」

「じゃあ俺がついてってあげるー!!」

「遠慮しておきます。」

 

と、立ちあがって1歩歩いたと同時に、

 

ドゴシャーン!!

 

ちゃん!!」

 

私の足はどういう風になっているんだか。自分の椅子に足を引っ掛け、その椅子が

倒れてきて背中直撃。

 

「…氷帝学園にいく途中に、私死ぬかも……。」

ちゃんてさぁ、見かけとのギャップが激しいよね。」

「どういう意味よ。」

「もうまさに日本美人って感じで、お嬢様な雰囲気漂ってるのに、こんな状態だもんねー。」

 

悪かったわね、こんな状態で。

どうせ、私が行くところはなぜかいつも轟音にあふれているわよ。

 

「千石はそのまんまよね。髪もオレンジでへらへらしてて。で、その幸運さ。」

「うん、オレすっごいついてるんだよねー。ね、だから俺も一緒に行くよ。」

「いいって言ってるでしょ。」

「うわーい、いいんだね☆」

「そうじゃなくて……もういい。私って不幸…。」

「それって、俺のせいなの?」

うん。」

 

 

 

 

 

 

「兄さん。」

 

テニスコートにいた兄さんを発見して、手を振って呼ぶ。

でも、いつ見てもここはスゴイよね…部員が尋常じゃない量なんだもの。

 

「よー『来れた』な。」

「それってシャレならへんからよして。」

 

ああ、兄さんといると関西弁に戻ってしまう…。

 

「ところで、無事に来れたんはそのボティーガードはんのおかげ?」

「あー、単なるお邪魔虫やよ。」

 

私が嫌そうな目で見ると、千石は身を乗り出してきて、

 

「あんた、忍足 侑士だよねー?氷帝学園の天才とかって言う!」

「せや。あんたは…千石 清純やったっけ?Jr選抜の。」

「あ、名前覚えてもらってるんだ。」

 

そう言えばこいつってテニス部だったんだっけ?

Jr選抜ってなんだろう??兄さんはテニスに詳しいけど、私はサッパリ分からない。

 

「兄さん。Jr選抜って、強いん?」

「ああ、めっちゃ強い。ところで…。ホントのところどうなんや?」

「?何やの??」

「千石の事、好きなんとちゃうか?」

「なっ…!?」

 

そんなはずないっ!

珍しく私は怒鳴るくらいの気持ちになったのに、その後の言葉が出てこなかった。

 

「まあ、俺には言えんやろ?…お前が後悔せんように頑張り。な?」

「うん。」

 

子供扱いされてなんだか少しだけ微妙な気持ちになったけど…。

どういう事なんだか。

 

「あっ、危ない!!!!!」

 

ふと振り向くとこちらへ一直線に飛んでくる黄色のボール。

 

「きゃあぁぁっ!!!」

!!!」

 

…って呼んだのは…?

兄さん…じゃない…。

誰…?

 

と言うか、私はテニスボールに当たって死ぬだなんて嫌よ…。

 

 

 

なんて思ってるって事は…。

 

「生きて…る…。」

「良かったー、ちゃんに怪我がなくて。」

 

その声は紛れもなく、千石の声。

顔はすぐ目の前にあって…。

急に真面目な顔なんてするもんだから、

 

「イタッ!!突き飛ばすことないじゃーん!?」

「あ、つい…。」

「助けてもらった先輩にはなんてゆーんだっけ?ちゃん?」

「……アリガトウゴザイマシタ。(棒読み)」

「心こもってなーい。清純ちゃん泣いちゃうっ。」

 

確か、さっきボールが飛んで来た時に私の名を呼んだのは、千石だった。

 

「何しとんねん、お前!!俺の妹が怪我したらどないするつもりや!」

 

うん、あの声じゃなかった。

 

ちゃん、用事終わったなら帰ろうよ。ねー?」

「…うん…。」

「どうしたの?やっぱりどこかぶつけた??」

 

ひょい、と顔を覗き込んでくる千石。

なんでか知らないけど、急に照れくさくなってそっぽを向く。

 

「まあ、安心してよ。俺が側にいてあげるからさ☆」

「何それ、どういう事?」

「だって、俺はラッキーなんだから。ちゃんの側にいればきっとアンラッキーなんか

 なくなるって。ね?」

「…おメデタイ頭。」

「むっ、しつれーだなぁ!俺の一世一代の告白なのに!」

「えっ?」

 

彼の目は、純粋で透き通っていて、嘘なんかついていない風だった。

 

「…帰るから、あんまり騒がないでついてきてね。」

「ホント?わーい、帰ろう帰ろう!!」

「静かにって言ってるでしょ!」

 

兄さんに別れを告げて、山吹中への道に。

その間、私はしっかりと自分の気持ちを整理しようと頑張った。

山吹中に戻ったら、しっかり言おう。

この時が不幸な結果にならない為に、今まで私は不幸だったんだと思えるように。

 

 

 

「千石 清純が、好きになったんだ」と。

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

ああああああああああああ…(以下エンドレス)もう、千石ちゃん書きにくっ!!

話の大枠は出来ていたくせにまとまりが悪いのは人物が固まってないからですね。多分。

えと、主人公を忍足の妹にしてしまいました。いいお兄やんを書きたかった。それだけ(汗)

そしてめちゃくちゃ不幸キャラ。もっと不幸にしてもよかった(汗)のですが。

にしてもありきたりだなぁ、これ…。千石ファンならびに忍足ファンに平謝りを通り越し

て紙謝り。(ペラい)もっと頑張らなくっちゃ…。

 2003・2・23 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

 

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