秘めたるもの

 

 

 

「越前リョーマっ!!」

 

びしっ、とオレへ向けて指を差す人。(人を指差してはいけません。)

彼女の名前は 。青学の2年生。

一方名指しされたのは、オレ。青学1年、越前リョーマ。

最近恒例の事だから、もう驚きもしないけど。

 

「何っスか、先輩。」

「知らばっくれるなっ、越前リョーマ!勝負をすると言ってあるだろーがっ。」

「先輩が勝手に決めたんじゃないっすか。」

 

なぜか先輩はオレを敵視してるみたいで、時折こうして訪ねて来る。

 

「いいか、明日の放課後、勝負する様に。」

「……はい。」

 

命令口調の先輩に、後輩であるオレは反抗する事もなく、

溜め息をついてコートへ戻る。

オレはこうして、この人と接点を持つことになった。

 

 

秘めたるもの

 

 

 

 

「よっ、モテモテだな、越前?」

 

コートへ戻ってきたオレへ真っ先に言葉をかけた桃先輩。

「桃先輩…。」

 

明らかにからかっているんだろう。口元が緩んでる。

 

「おチビも罪作りだなっ。ちゃんは結構人気あるんだぞー。」

 

菊丸先輩がニヤニヤしながら言う。

この二人、オレをからかって楽しんでる。

 

「そうなんスか。ふぅん。」

「うわあ、興味なさそうな感じ。もてるからっていやみだにゃー。そう思わない?桃。」

「うんうんっ。すっげー思うっす。」

 

 

あの人のどこがいいんだ?

 

高圧的な態度といい、

露骨な敵対心といい。

別に俺が何をしたわけでもないのに。

俺にはいまいち分からない。

 

 

 

「でも、さんてバトミントンやってるから、きっとテニスも上手いよね。」

 

不二先輩がいつのまにか話の輪に加わる。

この人ってホントに食えない人だと思う。

 

「何で分かるにゃ不二?」

「バトミントンとテニスは、基本的に動きやフォームなどが似ているからだ。

 テニスの基本練習の為にバトミントンをやらせる人もいる。」

 

手塚部長が補足説明をしてくれる。

 

「へぇー。」

の対戦データは、全十二試合中、十勝一敗一分。

 全国大会出場の経験もあり。相手にとってしても不足はないぞ、越前。」

 

乾先輩が自分のデータノートを見て言う。

この人、一体どれくらいのデータを持ってるんだろう…。

 

「そうそう。何で乗り気じゃないんだ?」

 

 

…彼女の瞳が妙に、辛そうな色をしているから。

そんな瞳は、見たくないから。

 

―――どうして、俺なんスか。―――

 

前にそう言ったら、大きくて綺麗なはずのあの瞳は、

更に辛そうな色を濃くした。

 

どうしたらいいのか分からない。

先輩はオレと試合する事で、救われるのか、辛くなるのか…。

 

 

 

 

「遅い、越前リョーマ。」

 

掃除当番だったんだ、と言えばいい。

 

けど、言えない。

 

喋る事はもともと得意じゃないけど、先輩の瞳は、オレを黙らせる。

恐い、とかじゃなくて。

 

 

 

 

 

 

試合をしても、勝負は目に見えている。

いくらバドミントンで強いとはいえ、テニスで、テニス部のレギュラーに勝つのは

無理だろう。なのに挑んでくる。

 

分からない。

 

「…先輩。」

 

分からないのは、嫌いだ。

 

 

知りたい。

 

 

 

「…俺の事、どう思ってるんスか。」

 

先輩の瞳が大きく開かれることで、オレはとんでもない事を口走ったのだと自覚した。

知りたかったのは、先輩が何故俺に勝負を挑んでくるかじゃなくて…。

 

 

 

先輩の、気持ちだった。

 

 

 

俺は知らぬ間に…先輩の事が、好きになっていたんだ。

 

勝負だけを俺に求める先輩。俺を見つつも、俺を見ていないその瞳に。

 

何とかして、俺の姿を映したくて。

 

試合とか、そういう事だけで逢うんじゃ物足りなくて。

 

先輩は俯いている。

俺は、まだ身長が追いついていないからちょっと背伸びして、

先輩のおでこにキスを落とした。

 

「…っ!!?何を…!」

 

「まだまだだね。…先輩も…そして俺も。

 俺は、先輩の事、いつの間にか…好きになってたんだ。

 負けたよ、その事に関してはね。でも、テニスでは負けない。」

 

そう言って改めて先輩の顔を見ると…。

耳まで真っ赤になっていた。

今まで見たことのない表情に、胸が高鳴る。

 

「…越前リョーマ…テニスでも…その事でも…、私の負けだ。」

「先輩?」

 

「私は…越前リョーマが、好きなんだ。」

 

 

 

 

入学式の日。

の瞳に映ったのは、一人の新入生。

あまり背は高くなく、顔立ちもあどけない。

でも、心は惹かれていた。纏う空気や、その意思の強い瞳に。

 

しかしは人付き合いが究極的に苦手だった。

好きであればあるほど、つっけんどんになる不器用な自分。

それでもなんとか自分を変えようと、越前に初めて話しかけた言葉が、

 

      「越前リョーマ、私と勝負しろ。」

 

 

恋に不器用なあまりに、回り回って、やっと想いが伝わったのだった。

 

 

 

「あれ?今日はちゃん、宣戦布告してこないにゃー?」

「ホントだね、どうしたんだろう。」

 

先輩たちは首を傾げている。

先輩たちには悪いけど…まだまだだね。

 

「俺、早めに上がるッス。」

「え?どうしたんだ?越前。」

「…が、俺を待ってるんで。」

 

大石先輩が、顎が外れないかと心配になるくらいにあんぐり口をあける。

俺がの方に向かって歩いていくと、後ろから驚きの声が上がった。

 

「越前リョーマ、あんな事を言ったらっ…。」

 

最後まで言葉を言えない。

実はすごく可愛らしいんだ、この人。素直になれないだけで。

俺はの手を取って、

 

「俺がって呼び始めたんだから、も俺の事、名前で呼んでほしいんだけど。」

 

耳まで真っ赤にして俯く。なんだか、俺より年下みたいだ。

でも意を決したのか、小さく、

 

「…帰ろう、リョーマ。」

 

(カルピンに見せた以来、)久し振りに俺は、本当の笑顔を見せた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き。

 

うわぁぁぁ…。なんかもうダメだ!まとまりないです。

下手くそだー!!ごめんなさい。リョーマくん、想像以上に難しいッす。

リョーマファンの方に平謝りー…。

とにかくヒロインも素直じゃなくて、ぶきっちょ同士で恋愛させようと。

ただリョーマは、スイッチオン系だと思ったので、ラストはあんな運びで。

文才がないので…修行します…。ホントは試合の時を書きたかったんですが、

半端じゃなく長くなりそうだったので、カット…すまん、リョーマ。

お目汚しのものを、最後まで読んでいただき、感謝感謝です。

 

 2002・9・21 

 2002・11・11改  月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

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