「また、この季節がやってきたなあ…。」

 

カメラのファインダーから目を放し呟く。

 

 

たった一年。

 

 

いや?

 

 

まだ一年?

 

もう一年?

 

 

 

 

 

 

 

君との、時間。

 

 

 

 

 

今、瞳を閉じて心のまま、僕は君を思う。

 

 

 

 

 

 

「…周助?」

「あ…。」

「どうしたの?急にぼーっとして。何かあった?」

「ああ、ここ。」

「交差点がどうかしたの?」

「あ、は分からなくて当然、だね。僕の一方的な思い出だから。」

 

 

 

 

 

 

 

あの日。

 

 

 

交差点の反対側にいたのは、君だった。

 

風に踊る髪を少し払って、信号が変わるのを待っていた。

 

同じクラスだったから、のことは少なからず知っていた。

 

確かに可愛い子だと思ってはいた。

 

けど、それ以上の気持ちは生まれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

…生まれていたのに、気付くきっかけがなかっただけなんだ。

 

でもあの日、ふいにスイッチはONになった。

 

 

君が、微笑んだから。

 

「相変わらず元気だね、男子テニス部は。」

 

彼女は青学女子テニス部の副部長をしている。

腕もよく、真面目な練習ぶりから、先生から信頼されている。

そんな彼女を、男子テニス部の皆も慕っていた。

 

先輩!」

「やだなあ。ちゃんって呼んでって言ってるでしょ?」

 

さばさばとしてて明るい、付き合いやすい性格。

僕は、そういう女性が嫌いじゃなかった。

 

さん、どうも。」

 

僕が微笑んでそう言うと、彼女は、

 

「あ、って呼んでよ。同級生なんだからさ。私も周助、って呼んでいい?」

「うん、いいよ。…。」

 

一瞬驚いて、次の瞬間に見せた君の笑顔。

すべての物がかすんで見えてしまうほど、美しく輝くような笑顔。

 

赤から青に変わった信号機のように僕の、への思いは憧れから恋に変わった。

 

 

そして。

今に至る。

 

 

 

 

「うひゃあっ!」

 

の踵から水飛沫が飛ぶ。

彼女の足元には小さな水たまりが出来ている。

 

「そういえば、昨日雨が降ったんだっけ。大丈夫?」

「うん。私は平気だけど。」

 

は笑ってみせる。

 

 

あの時と変わらぬ、優しい微笑み。

 

 

 

「ちょっ、周助っ!?」

 

 

 

の困った声が聞こえる。

 

でも、

 

 

 

―――――離してあげない…。―――――

 

 

 

 

 

信号が変わり、一気に横断して行く人の波のように。

 

 

 

僕の想いは、溢れ出す。

 

 

 

「周助ってば、こんな道の往来で…恥ずかしいよ。」

 

今、自分を抱き締める男の事を、ずっと考えていて。

 

 

他のことが、考えられなくなるくらい。

 

 

 

 

僕も今抱き締めている君を、ずっと想っているから。

 

 

 

 

 

そう心の中で言って、を放す。

 

 

 

 

 

「どうしたの?周助。」

「…が、この上なく愛しくなっただけ。」

「???…まあいいや。ほら、行こう?周助。」

 

 

 

 

 

 

僕の事、好き?」

 

 

 

尋ねると、は真っ赤になった。そぉっと僕に近付いて、

 

「うん。」

 

僕が笑うと、はますます顔を赤くして、

 

「ほらっ、もう行くよっ。」

 

僕はクスッと笑って、彼女の後を行く。

 

 

 

 

 

二人でバスへ乗る。

 

あの日、乗り遅れそうになって駆け込んだせいと、

 

君と出会ったおかげで…胸がドキドキいって治まらなかった。

 

 

 

今日は、心地いいドキドキ、を感じる。

 

 

 

 

君はいつの間にか眠って、僕の肩にもたれていた。

 

僕も瞳を閉じる。でも瞼の裏に映るのは、君の笑顔。

 

 

 

 

 

まあ、いいか。

 

 

 

 

このまま、

 

 

 

瞳を閉じて、心のままに。

 

 

 

君の事を想っていよう。

 

 

 

 

 

 

ずっと、ね。

 

 

 

 

 

〜FIN〜

 

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後足掻き

不二ドリムです。ヴォーカルCDを元にしていますが…。

不二スキーの友人は、「長い髪じゃないもーん!!」とか文句ぶーぶーだったので

あえて細かく書きませんでした。っていうか、ホント往来でなにやってんのさ、不二(笑)

文句はBBSにでも…。ハイ。

 2002・11・11 改  月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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