時の胎動

 

 

 

 

 

 

 

「い、いいんですか?美鶴先輩…こんな豪華な処…。」

 

は周りを見回す。

かつて生活していた巌戸台分寮の部屋の2倍以上はありそうな広い部屋だ。

この部屋を用意した美鶴は、の反応にくすりと笑い、

 

「ああ、構わない。桐条の研究員用に建ててそのまま遊んでいたようなものだ。使ってもらった方が

ありがたい。何か足りないものがあれば用意させるが。」

「いえ、大丈夫です。先輩にはお世話になりっぱなしですから。」

「なに、私にできるのはこれくらいだからな。『義姉』としては可愛い『義妹』に

 何でもしてやりたいと思うんだ。」

 

両親がいなくなってからは、の戸籍は叔父の所に一時的に入っていた。

しかしながら、が「不在だった」二年間の間にどうにも戸籍が宙に浮いてしまったらしい。

そこを美鶴が引き受け、桐条が後見人の役をしている。

 

「もう十分いろいろしてもらってるんですけどね。」

「ふふ…まあ、いいじゃないか。甘えられる時に甘えておくのは必要さ。」

 

その時、部屋をノックする音が聞こえる。

 

「丁度来たようだな。入っていいぞ。」

「え?」

 

ドアを開けて入ってきたのは、見知った面々だった。

 

「よっ、!」

「えっ、順平?」

「私たちもいるわよ。」

 

順平、ゆかり、風花、アイギス。そして真田、荒垣、天田、コロマル。

S.E.E.Sのメンバーが、そこにはいた。

 

「どうして…っ?」

「皆が来るといったくれたのだ。お前の記憶も取り戻さないとならないからな。」

「皆…ありがとう。」

「…困ったときゃお互い様だ。」

 

二年前のニュクスとの戦いで、「滅び」と戦ったは、激しい生命力の消耗と、

滅びを止めるためにその魂をかけていた。

が皆に語ったその後の話は、驚きのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

は滅びを食い止めるために自分の命、魂を使っていた。

そんな時に現れたのが、『死』と同化しニュクスとなったはずの綾時だった。

 

「ようやく気付いたんだ。僕がこうして現れた意味。

 君が残してくれていた希望の種を、君を含めて分からなかったんだ。」

「…どういうこと?」

「…僕はニュクスになった。でも、こうしてニュクスと綾時…二つに分かれている。

 それは、『滅び』を『滅ぼす』ために、君が綾時として自分の中に住まわせてたんだ。

 僕がこうして力をふるえるのは…君にはまだやる事が残っているからさ。」

 

にとっては驚きの結末だった。

 

綾時の力によって、『滅び』は『滅ぼされ』たのだから。

 

「さあ、早くお行き。」

「綾時…君は?」

「僕は『滅び』だよ?」

「…君の言った理屈なら、滅びである君も、君自身の力で『滅ぼす』事が出来ると思う。

 負けないで。」

 

そして、気づいたとき、は巌戸台の駅に佇んでいた。

手にしたいつもの音楽プレイヤーの日付を見て、屋上に行かなければ、と思い立った。

 

だが、一つの違和感があった。

 

学校の場所がどうしても思い出せないのだ。

 

「…何で?」

 

一年しか通っていないが、毎日通学した学校の場所をなぜ忘れるのだろうか。

戸惑っていると、久しぶりの「あの感覚」がする。

 

「…お久しぶりでございます。またお客人として貴方様がいらしたとは。」

「イゴールさん。…また何か、起こるんですか?」

「貴方様が『滅び』を抑えていた鎖…。それは貴方様の中から『大事な記憶』を

 使っていたのでございます。それを外した時、貴方様の記憶は戻らずに、

 欠片として散り散りになったのでございます。」

 

すると、黙って控えていたエリザベスが一つの箱を持ってきた。

 

「ただ一つ、こちらへ落ちてきた記憶の一片を拾っておきましたので、どうぞ。」

 

箱の中には、薄く七色に光る不思議な花弁が入っていた。

が触れると、それはを取り囲むようにふわりと光になって消えていった。

 

「…あ…。」

 

その瞬間、毎朝通っていた学校までの道がすっと頭の中に浮かんだ。

 

「…失ってる記憶…どのくらいあるんだろう。」

「それは定かではありませんが、おのずと貴方様が進むべき道は見えてくるでしょう。

 ベルベットルームに再びお呼びすることとなったのも必然でしょう。」

 

 

 

 

 

 

 

再会した皆に全てを話すと、風花が思いついたように

 

「ちょっと待って?リーダー、その部屋で確か、色々ペルソナを付け替えてたんだよね?

 なら、またペルソナが必要になるっていうこと?」

「…多分。ペルソナの力を感じるから。風花のユノが使えれば、もしかしたら

 記憶の欠片のありかが分かるかも…。」

 

「召喚器ならば、ラボに置いてある。少し待っていてくれればすぐに届けさせる。」

 

美鶴が携帯を取り出し、連絡をし始める。

 

「とりあえず、私がやってみます。私は召喚器が内蔵されていますから。」

 

アイギスがそう言うと、力を込める仕草をする。

彼女の体から僅かに機械音がする。

 

「…アテナ!!」

 

何か硬質なものを割るような音が響く。

 

アイギスの前には、ふわりと浮くアテナの姿が具現していた。

 

「うぉ、出たっ!じゃあオレっちのペルソナも普通に召喚出来るってことか?」

「そうみたいね。でも場所を考えないと、何事かと思われちゃうわね。」

 

その後、美鶴がラボから持ってきた各々の召喚器を試すと、

やはり皆ペルソナの能力が戻っていることが分かった。

 

「…ここは…。」

「何かわかったの?風花。」

「何か、高性能の機械があるみたい…。真っ暗で……沢山の椅子がある…。」

 

風花の呟きに一同が考える。天田がふと思いついて、

 

「映画館とかですか?あそこなら、真っ暗で、映写機があって、沢山の椅子があって。」

「ううん、円形に椅子が配置されてるの。」

「…もしかして、プラネタリウムか?」

「そうです!ちょうどそんな感じです。でも…ここって。」

 

荒垣の言葉に合点がいったように答えるが、ふっと気になる言い方をした。

 

「ん?どうしたんだよ、風花。」

「…ここって、学校の天文台です。あそこは一般生徒は立ち入れないところですよね。」

「なーに心配する事があるんだよ、風花。ここには桐条グループのご当主サマがいるじゃん。」

「何で伊織が偉そうなんだ?」

 

順平の胸を張った様子に真田がさりげなく突っ込む。

 

「ともかく、天文台だな。管理のものに連絡はしておく。

 ただし、学校周囲の人間の無用な詮索を避けるために夜に行動するとしよう。」

「へへっ、S.E.E.Sの復活っスね。」

「もちろん、探索リーダーはさんですよね。」

 

天田がにっこりと笑いながらの顔を覗き込む。

小さく微笑んでから、は頷く。

 

 

 

「今夜0時。出撃場所は月光館学園脇に立つ天文台。各自準備を怠らないように。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

========================================

後足掻き

今回は一応影時間を作っていません。あ、でもあった方がいいのかな…ううむ。

ちなみに設定は各話でちょいちょい変わるかもしれないので、

あんまり信用しないでください(オイ)

ベースとして、全員が集まったのはこの件がある、ってことだけでOK…だと思います。

多分P4とかも出てくるんで。そのための二年後とか…げふげふ。

この本篇もちょいちょい更新するよて…予定は未定☆(死)

 

         2010.2.9   月堂 亜泉 捧

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送