街の風に冷たい粒 家路を急ぐ群衆にまぎれては

待つ人がいることの痛み 自分の弱さ 同時に感じてる

 

君がもし いつの時だって 僕のものならば

 

 

 

It Takes Two

 

 

じりじりと肌を焼く夏の日差し。

梅雨前だと言うのに、随分と暑い。

それなのに、俺の心はすっきり晴れていない。

 

 

。」

「あ、国光。」

 

長い髪を高く結わえた、オレの幼馴染、 が、俺のほうを向く。

幼い頃から変わらない一途で澄んだ瞳が、俺の姿を捉える。

 

「忘れ物だ。」

「あ…レギュラーウェア…。」

「もう着ることもなかろうがな。」

「うん。そだね。でも持っていくよ…ここで過ごした三年間のすべてが詰まってる気がするから。」

「…そうだな。」

 

少し、微笑う。

「寂しそうだよ?」

と、が言う。

昔からあまり感情表現が上手くない俺の心をは唯一、理解してくれた一人だ。

 

 

一年の、仮入部受付日。

俺とは、同時にテニス部の部室のドアをノックした。

 

「これから、絶対無敗で行こうね?」

「…ああ。」

「破ったらパシらせてもらうよ??うわー楽しみ☆」

「無理だな。」

「うわ、自信家だし!私だって絶対負けないもんね!!」

 

とは昔から気があった。

回りから見ると、

 

 

明るくてお喋りな

 

無口で無表情な俺。

 

 

 

その二人が仲良くしているというのはとてもミスマッチに見えたらしい。

だが俺達はさして気に止めることもなく、仲良くしていた。

 

「国光!国光!!あのね、私この間先輩との試合で勝っちゃった!!

 スゴイでしょ!?」

「良かったな。」

「でしょ??あ、そう言えば国光も今のところ無敗?凄いねー、オメデト!!

 でも国光の事だもん、このまま中学生の間は無敗で行けるよね!」

「…そのつもりだ。」

 

互いに成長し、部内で好成績をおさめるごとに、まるで自分のことのように喜んだ。

 

 

月日は流れ、俺達は3年に進級した。

オレは男子の、は女子のテニス部部長となり、俺もも、今だ無敗記録を更新しつづけていた。

 

 

だが。

 

「父さんの転勤が決まったの。」

「どこにだ?」

「……フロリダ。」

「…そうか。」

 

ぐわん、と地が揺らいだ。

なるべく平静を装っていった声も、ほんの少し、揺れていた。

 

、無敗を続けて、どうするんだ?」

「え?そりゃ決まってるってぇ。私達のいる間に全国制覇!!もちろん男女ダブル優勝

 でね。無理な話じゃないと思うよ?」

 

 

そうして俺とは、青学は男女で全国制覇をしようと誓いあった。

 

だが突然の、の転校。

 

女子は男子と違い、ダブルス要員の方が多い。数少ないシングルス選手である

大会前に抜けるというものは相当な打撃となる。

 

「私が在校中の全国制覇…ダメになっちゃったね。

 …フロリダは、遠いよね。」

「…ここへ残れれば良かったのにな。…大会が控えていると言うのに。」

「うん……。」

 

分かっている。

俺はそんな事でのフロリダ行きを止めさせたいと思っているのではないこと。

 

が好きで、

 

離れたくなくて…。

 

 

でも、止められないことは分かっている。

 

 

 

「全国制覇の約束はおじゃんだけどさ、無敗神話は破らないでよ?国光。」

は?」

「もちろん、向こうの学校で無敗神話を作ってやるわ!ゴメンねー国光、先に世界へ飛び立つね!」

 

 

たとえふたり 重ねた手を放そうとしても

心は置いていくから

たとえ今は 同じ時を刻めなくても

いつかまた めぐり会えるから

 

 

 

別れの日はとても急いでやってきて。

伏し目がちのは、いつもと少しだけ違っていた。

 

「国光。私もうそろそろ、行くね?」

「ああ…身体に気をつけてな。」

「国光もね。あんまりムチャしちゃダメだよ?…そうだ、はい、これ。」

「?」

 

が手渡してきたのは、一枚の紙。

 

「向こうでの住所。寂しくなったら手紙ちょうだい?私も、書くだろうけどね。」

「わかった。…必ず書く。」

「じゃあ、またね!」

「…またな。」

 

口に出かかった“想い”を飲みこんで、俺はそう返す。

 

“さよなら”ではなく、“また”。

 

最後までで、俺は笑った。

 

 

伏し目の美しい女性よ 離れた時もときめきは止まない。

今はまだ言い出せなくて 風の歌だけ 聞き流すふたり

 

 

…。」

 

愛しい、君の名を呼ぶ。

別れた日とは違って、今日は雨が降っていた。

街はせわしなく人が行き来していた。

 

がフロリダへ発った後の、全国大会。

俺は敗退した。

 

だが、今はプロテニスプレイヤーとして、日本ではそこそこ名も知れている。

 

「あのっ、手塚 国光さんですよね?あの、テニスの!」

 

と、傘を差した女性が話しかけて来た。

少々俯いているため、顔は良く分からない。

 

「え、はい…そうですが。」

「よかったあ!私、大ファンなんです!!」

「そうですか。」

「……くくく…。」

「?」

「あはははは!!!」

「!?」

「やだ、国光、分からないの??私よ、私!!」

!?」

 

久し振りに再会したは、大人っぽく成長していて、綺麗だった。

でも、変わらない一途で澄んだ瞳。

 

「ひゃー。カッコ良くなったね、国光。うんうん。」

も、変わったな。」

「そりゃあね。それより凄いじゃない?最年少で世界ランキングトップ50入り?

 国光はやっぱり才能あるのね。」

もそうだろう?」

「あはは。でも、これでまた私は、国光の隣を歩いて行けるわね。」

「どう言う事だ?」

「ふふ。二人でミクスドを組むの!それで、日本一、ゆくゆくは世界一!どう?」

 

は、常に上を目指し登って行く…俺も、負けてはいられない。

―――…それに。

 

…聞いてくれるか?」

「ん?」

 

あの日言えなかった、言葉を。

あの日から、今日の為に秘めておいた、俺の気持ちを。

少し、視線を逸らしそうになって…でも、吹っ切っての瞳を見る。

 

 

恋人の呼び名は 君のためだけにあるよ

 

運命も越えられる 奇跡も起こるはずさ 信じ続ければ

だから今は ひとりで歩こう

 

たとえ僕が 重ねた手を放そうとしても

心は 置いていくから

たとえ今は 違う景色眺めていても

きっとまた めぐり会えるから…

 

 

 

……これからは、ずっと…二人で歩んでいこう。」

 

 

 

 

 

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後足掻き

ハイ、部長さんです。無駄に長いです。歌詞が入るとどうにもがさばる…。

でですね、これの元ネタはCHEMISTRYのIt Takes Two

(題名まんま…。)です。この歌詞を見たと同時に「手塚だー!!」と叫びました。

手塚は絶対好きな人だろうが引き止めず、再会の時を待つタイプだと思います。

そして…。将来は絶対テニス方面へ進むでしょう。まあ、山岳家とかでも良いんですけど

彼は根っからのテニスバカですから。(断言)もうひとつケミで書きたい…手塚を…。

でも、ケミばっかになる。手塚ばっかになる(汗)もう少し考えよう。そして修行しよう。

 2002・11・28 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

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