一目見た瞬間から、惹かれていた

 

 

運命といえば陳腐だが、

 

 

その言葉が妙にしっくり来るのは確かだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イトシキミヘ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下駄箱近くの職員室前。

 

相手は大概そこで待っている。

 

 

普通に下駄箱で待っていると、教室も近い分冷やかしもあるから、と

比較的生徒が寄り付きたがらない職員室前にいるのだとか。

 

 

極度の恥ずかしがり屋の彼女らしくてその話を聞いた時、俺は笑ってしまった。

 

 

「笑わないでくださいっ、僕にとっては死活問題なんですから」

 

 

真っ赤な顔でそう怒られ、冷やかす人達の気持ちがよく分かる。

 

 

でも、そんな恥ずかしがり屋の彼女が、そこで俺を待ってくれているのがとても嬉しい。

 

 

 

階段を降り、真っ先にその場所を見遣る。

 

一瞬、こちらを向いていた様子が見えたのに、すぐ職員室の方を向いて気付かない振りをする。

 

 

 

 

待ち遠しくて、階段から降りて来るのを何度も見ていたのだろうと思うと愛しくて、

すぐ駆け寄って抱きしめたい衝動に駆られる。

 

 

 

何とか抑えて、いつも通り相手の元へ行く。

 

「直斗。」

 

名前を呼ぶと、小柄な相手がくるりと自分に向く。

 

いつもの帽子を被って、こちらを見上げてくる姿は本当に少年に近い。

最初は「少年」だと聞き、それに疑いを持つ事はなかったのに、何故か胸が高鳴った。

 

「先輩。」

 

男性を装うために普段から低い声で喋っていた直斗。

憧れの存在になる為に、女性である事を隠していた。

でも最近は、「ありのまま」を見せてくれるようになった。

 

 

 

恋人になれたからだろうか、なんて自惚れてみる。

 

 

 

「今日は何か用事がある?」

「特には…ないですよ。」

 

この言い方は、待ちわびてたってサイン。

素っ気ないように聞こえるのは、照れているから。

 

「じゃあ、一緒に帰ろう。」

「いいですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他愛ない話をしながら、先輩と下校する。

先輩は寡黙に見られがちだけど、話してみると色々な事をよく知っているし、

話し方も上手くて面白いから引き込まれてしまう。

 

 

先輩の歩幅は、僕と帰る時少し短くなる。

僕の歩幅に合わせてくれているのが嬉しくて、でも何だかくすぐったい。

 

「凄いですね、魚釣りなんて」

「うん、仲良くなったお爺さんに色々教えて貰ってるんだ。この間は夜釣りもしたんだ。」

 

生き生きとした先輩の様子。

 

最初の印象とは違うけれど、ますます…惹かれている。

 

 

 

 

最初は、事件に関わっているかも知れない人間として見ていた。

 

だが、彼は失踪した人々と行動を取るようになる。

 

 

 

 

理論は覆ったが、僕はますます気になりはじめた。

 

「遊びじゃない。」

 

僕の言葉に、真剣な口調で言い返してきた先輩。

どこか、他の人とは違うオーラ。

 

 

 

あの時からもう既に、意識していたのかも知れない。

 

 

 

「そうだ、先輩。薬師寺さんからこれを預かってたんでした」

「薬師寺さんて、あの黒服の人?また俺に何の用だろう。」

 

僕らが絆を深めるきっかけになった「怪盗X事件」。

御祖父様と薬師寺さんが与して僕に純粋に探偵に憧れていた頃を思い出してもらおうとした

この「事件」。始まりは、先輩の元へカードが手渡された事からだった。

 

「また怪盗ごっこですかね?」

「どうだろ。…あ、今回は普通の手紙みたいだ。」

 

便箋の文字を目で追い、先輩が小さく笑う。

 

 

 

僕の…好き、な…優しい表情。

 

 

 

 

「先輩、何が書いてあったんですか?」

「うーん、これは…直斗にも見せていいのかなぁ?」

 

悩んでいるそぶりを見せてはいるけど、その表情はどこか楽しそうだ。

余計に気になった僕は先輩の持っている手紙を覗き込む。

 

「……。」

 

「直斗?」

 

様。

 いつも直斗様がお世話になっております。

 最近の直斗様は貴方のお話を嬉しそうになさり、楽しそうな様子に

 御当主も喜んでおられます。

 

 様は直斗様が女性である事を隠されていた理由をご存知かと思いますが、

 直斗様は様と交流なさるにつれ、ご自身の性別を受け入れて行かれているのが

 何とも喜ばしく、そんな様にならば直斗様を幸せに出来るのではないかと

 勝手ながら思っております。

 御当主も聞き及ぶ様の人柄を気に入られたようですので、

 是非一度、直斗様と共にお会い頂けると幸いです。』

 

 

先輩が見せていいのか、と言った理由が分かる気がする。

 

もし僕が先に見せてもらっていたら恥ずかし過ぎて破り捨ててしまいそうな内容だ。

 

「薬師寺さん、なんて手紙を先輩に出してるんですかっ、ごめんなさい、先輩…」

「どうして謝るの?俺は嬉しいのに。」

「えっ?」

「だってこの手紙、俺と直斗の事を公認してくれるって事だから。

 …それにいつかは、ちゃんとご挨拶に行かないと。」

 

何だか先輩の視線が真剣になる。

妙にドキドキしてしまい、目を逸らしたいのに逸らせない。

 

「直斗のお祖父さんに会って、お嬢さんを僕に下さい、って言わないとね。」

「せっ、先輩っ…!」

 

恥ずかしい、けど嬉しいやら、頭の中がパニックだ。

沸騰したみたいに顔が熱い。

前はこんな事言われても、「女」である事を拒否していたからきっと嫌がっただろう。

 

 

でも、先輩だから。

 

 

 

僕をありのまま受け入れてくれた先輩。

 

「直斗」が好きだと言ってくれた先輩。

 

 

優しくて素敵な先輩に想われ、女である事を受け入れられた。

寧ろ…先輩の為に女でいたくなった。

 

 

 

「ダメ…かな。俺は割と本気なんだけど。」

 

急に幼く、小首を傾げて尋ねる先輩が何だか可愛く思える。

先輩の色々な表情が見られるだけで、僕は嬉しくなるんだから、相当参っているみたいだ。

 

「…それは…。」

「それは?」

「…僕だって…本気、ですから…ダメじゃ、ないです。」

 

 

必死に絞り出したその言葉を聞いた先輩の顔を、見られなかった。

 

恥ずかしすぎるから。

 

 

 

ただ、僕の手をしっかりと握って歩き出す先輩の足取りの軽さに、

 

その眩しいくらいに素敵な表情を見ておけばよかったと、ちょっと後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

でもいつか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見つめあって、笑い合って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

苗字が一緒になれる日を、目指して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

直斗ぉぉっ!(殴)すいません…女の子キャラでかつてない萌えぶりをしたので…。

何て可愛いんだろう直斗。可愛過ぎるやろ、うん。そんなわけで付き合いだした

初々しい二人☆みたいな。お互い大好きでしょうがないうちの主直。

色々萌えとかは日記で叫ぶことにします…はひ。

    2009・5・3   月堂 亜泉  捧

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