「うー、あと二問あってればー…。」

 

一位、観月はじめ。479点

二位、。476点

 

「ちっくしょー、おかしいわよ、毎度毎度っ!カンニングでもしてるのかっ!?」

 

テストごとに聞く罵声。

今回も僕が勝ちましたから、プライドの高い彼女としては許せなかったんでしょう。

 

「人聞きの悪い事言わないでください。実力ですよ。んふっ。」

「あー…もう、呪っていい?」

「(呪!?)駄目に決まってるでしょう。」

「はぁ…まあいいや。部活行こーっと。じゃーね。」

「…。」

 

こんな肩透かしはよくあることで。

テストの点が負けているからとぎゃーぎゃー騒いでいたかと思ったら、ふっと

冷静になったり…。本当に不思議な人ですね。でも、僕は必死なんですよ?

 

貴女に負けぬように。

 

は、弱点というものが発見できないんですよね。勉強も運動もそつなくこなすし、

雑多な知識も多く持っているし…弱点が分からない。だから適わなくて、悔しいんです。

 

「観ー月っ!」

「ああ、。何です?」

 

調理室の窓から顔を出して、テニスコートにいる僕へと呼びかけてきた

家庭部のは、今まで調理をしていたらしく、制服の上にエプロンをつけていた。

 

「確か…ヴィシソワーズ好きだったよねー?」

「ええ。ですが、何を突然?」

「ポテトチップ作ったんだけど、ジャガイモあまっちゃってさー。もしよかったら

 作るけど、飲む?」

「…珍しいですね…欲しいものでもあるんですか?」

 

そんな風にからかうと、

「失礼ねーっ。人が善意でやるってのに。」

 

頬を膨らませて文句を言う…と、見事に予想通りの反応を返す。

 

「まあ…作るの三回目だから、実験台と言えなくもないけど…で?いらないの?」

「(実験台…)…作っていただけるのなら頂きますよ。」

「うっし。そーこなくっちゃね。腕によりをかけて作らせて頂くわ。」

 

満足そうに微笑んで頭を引っ込める

 

「羨ましいだーね。観月。」

「羨ましい?」

 

柳沢の言葉に、露骨に反応してしまう。

ライバルにご馳走されることが羨ましいんですか?

 

「うんうん。ちゃんって料理上手だもんな。俺も一度食べたことあるし。」

 

木更津、一体いつの間にの料理を食べたんです?…まあ、いいとして。

 

「そのくらいの事なら、もうすでに調査済みです。」

「さすが観月さんですね。」

 

裕太君、当然のことですよ。ライバルの事を調べるのは。

敵を知らずして勝利は無いですから。

 

「観月―。」

 

また調理室の窓から、が僕を呼ぶ。

 

「もう出来たんですか?」

「あ、うん。もう最初っから作るつもりでいたし。作ってる途中に思い出したの。」

「そうですか。じゃあ、ちょっと抜けさせてもらいますよ。」

「あっ、おい、観月!」

 

呼びとめたかったらしい赤澤の言葉を無視して、調理室へと向かう。

 

調理室の中はジャガイモの香りがした。

簡素なステンレスの調理台兼テーブルには、赤いチェックのテーブルクロスが

敷かれていて、その上にはヴィシソワーズと、ガーリックトーストが置かれていた。

 

「トーストはおまけね。ヴィシソワーズだけじゃ寂しいでしょう?」

 

椅子に座って、興味津々といった表情のの前で、ヴィシソワーズに口をつける。

 

「どお?」

「…美味しいですよ。」

「ホントに!?やったぁ、大成功!2回目のときは裏漉しがうまくいかなくて

 ざらざら口に残ってたんだけど…大丈夫??」

「ええ。」

「良かったぁ…。」

 

ドキッ…と、心臓が強く脈打った気がした。

気がしたんです…そう、気のせいですよ。

 

「嬉しいなー。あ!そうだ!それね、雑誌に載ってた有名レストランのレシピで

 作ったんだ。その雑誌、部室にあるから持ってきてあげるね。」

 

ぱたぱたと部室へと向かうを見送ったあと、またヴィシソワーズを飲む。

本当に料理が上手いんですね。久し振りに美味しいヴィシソワーズを飲みましたよ。

最近ははずればかりでしたから…。

 

「きゃあぁぁーーっ!!!!!!」

「!?」

 

の叫び声が聞こえた。

 

「どうしたんです、…っ!!?」

 

半ばタックルするような状態で僕に抱き付いてきた

パニックと恐怖で震えた声で、

 

「やだぁっ、恐いっ…!!」

「何が…。」

 

と尋ねかけた僕が、の肩越しに見たもの。

…女子…いや、男子でも、あまり好きではないモノが、いたんですよ。

僕も好きじゃありませんが、ここまで取り乱す事はないでしょうに。

仕方なく僕は、怯えるを宥め、そのモノを処分して。

 

 

 

 

「こんな事であんな叫び声をあげたんですか…。」

 

が落ち着きを取り戻したところで、話を聞いた。

 

「私、トカゲとかムカデは全然平気なんだけど、あれだけは大嫌いで……。

 ホントにダメなの。」

 

…何だか、妙なところで弱点を発見しましたね。

 

「はぁぁ…観月にだけは知られたくなかったなあ…。」

「何でです?」

「負けたくなかったから。」

 

はあ、やっぱり、と視線を逸らした次の瞬間、信じられない言葉が僕の耳に入って来た。

 

「観月に釣り合う女になろうと頑張ってたのになぁ…。」

「は??」

「…鈍いわね、観月っ!!」

 

真っ赤な顔をしてそっぽを向く。そして、耳を澄ませばやっと聞き取れるくらいの

小さな声で、

 

「観月が好きだから、観月に釣り合うぐらい立派な女になろうと思ってたのに、

 こんなとこでダメな女ってばれちゃったじゃない…。」

 

それを聞いて、僕の胸には甘ずっぱい気持ちが広がった。

この気持ちの正体は、分かってます。

 

…今まで、封じこめていただけで。

 

「安心しなさい、。…は十分に、いい女ですよ。」

「慰めなんか、いらな………!!」

 

その言葉を止める手段としては、究極的な方法で。

柔らかな唇を、そっと楽しんで。

 

「…これが、慰めだと思うんですか?僕、好きな人以外にこんな事はしませんよ。んふっ。」

 

また、は顔を真っ赤に染める。顔どころか、耳も、首までも赤い。

分かりましたよ、

貴女の弱点は。

 

貴女の弱点は、「僕」…だったんですね?

 

 

 

 

 

それから、だいぶ月日は流れ…。

 

「観月っ!!」

「ああ、ですか。」

 

パタパタと嬉しそうにかけてくる様子からして、何を言うのかは想像がつく。

 

「テストの結果、見た??」

「ええ、見ましたよ。…良く頑張りましたね。。」

 

へへ、と頭を掻いて照れ隠しをしながら、

「観月のおかげ。三人寄らないでも、観月と私が居れば文殊の知恵ってやつ?」

「使い方は少々違いますが。まあ、僕の愛ある教え方のおかげでしょう。んふっ。」

「…ちょっと不服だけど、今回は礼を言うよ。…ありがと、観月。」

「ありがとう、より、別の言葉が欲しいですね。」

 

そう言って耳元で教えてあげると、は顔を真っ赤にして。

 

「……………好きだよ、はじめ。」

「良く出来ました。」

 

でも、。気付いていますか?

も、僕にとっての「弱点」だという事…。

 

 

 

―――テスト結果。―――

一位、観月はじめ・。482点。

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

観月ドリ…。異常に長くなりましたね、はい。なんか無理矢理感たっぷりですが…(汗)

これは、私が学校でヤツにあった時に考え付いたネタです。ホントにダメなんです、私。

虫、は虫類、両生類全然余裕でOKな私が、唯一嫌いな虫です。ヤツは。女の子に

戻り(元から女ですが。)ます。奴に合うと。キャーという叫びなんかまずでないって。

アレは白亜紀からなんて生きすぎです。さっさと絶滅しなさい。

観月に助けてもらいたいなぁ…なーんて(死)。逝ってきます☆

 2002・11・1

 2002・11・11改  月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

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