彼女と出会ったのはつい最近。

三年になって初めて同じクラスになった。

それなのに…。



輝ける想い





「ねえ、ぬいぬい。」

「また新しいあだ名を考えたのかい?。」


二ヶ月で既に十個は出ただろうあだ名。


「うん、何かしっくり来ないんだもん。」


変わった人だ、というのが第一印象。

自分も重々変わっているとは思うが。


「ところで、一体何の用?」

「ん。渡したいものがあってね。」

「渡したいもの?」

「うん。あー、渡すって言うのはちょっと違うかな。見せるって言うのが正しいのかな。」

「気になるけど、教えてはくれないんだろう?」

「もちろん。」


何か企んでいるんだろう。

口の端を吊り上げてにやりと笑う

そんな表情でさえ可愛くて、見とれてしまう。


いつの頃からか、俺は彼女の姿を追うようになっていた。

この感情が恋だと気付くまで随分かかった。

こんな気持ちは初めてで、俺らしくない感情が芽生えて…。

どこかおかしくなったのかと思ったくらいだ。


「あー、移動教室じゃん。めんどくせぇ…。」


誰かの声で、皆が動き出す。俺も教科書を持って立ち上がる。


「あ、ちょっと待って、ぬいぬい。」

「ぬいぬいで決定なのかな。」

「ううん。今日は仮にぬいぬいで。」


ちょこまかとリスのように歩いてゆくが可愛くて、

抱きしめたくなってしまう。

そんな気持ちを抑えて、彼女の後ろを歩く。


「あ、菊ちゃんだ―。」

「およよ、乾にちゃん。あ、そっか。11組って次移動教室?」

「うん。6組は次体育だっけ?」

「そーなんだよー。テニスがやりたいのにまだバスケなんだって―。」

「いいじゃん、バスケ。頑張っておいでよ。」

「わーかってるって☆そのかわりー。」


菊丸がに抱きつく。


「うひゃあっ!!」

「にゃははー。充電、充電っと。」

「暑いー重いーっ!」

「英二ー。」

「ほいほーい、今行くよん。じゃ、またねー。」





「どうしたの?ぬいぬい。」

「え…あ、ああ。」

「何かボーっとしてたみたいだけど…大丈夫?早く行こう。」



妬く、という感情も、最近知った。

の周りに俺以外の男が居るだけでも嫌だ。

ましてや、菊丸のようにスキンシップの激しいやつだと、引き離して

は俺のものだと宣言したくなる。

でも…それを言ってしまったら、


嫌われる確率、86.9%


悶々とした気持ちの捌け口を見つけられないまま、俺はただぼんやりと

授業をこなしていった。


















「ぬいぬい!!帰るぞっ。」


放課後のチャイムがなると同時くらいには俺のところへ来て、

腕をぐいぐい引っ張っていく。


「俺、部活があ…。」

「休ませる!」

「……。」

「じゃあっ!私とテニスどっちを取るのよ!!」


誤解を招く発言をするなって…。俺としては嬉しいけれど…。


「とにかく、今日は私の用事を優先させてよ!」


無理だといっても無駄だろう、この勢いは…。

俺はほんの少し嬉しさを含んだ溜息をついて、大人しくについていくことにした。







「ココよココ。」


が連れてきたのは、ビニールハウス。

中に緑色の草木が生えているのがぼんやりと分かる。


「さあさ、入って。」


入ると、湿度のある生ぬるい空気。

そして、せせらぎの音。


「一体何だ?俺に見せたいものって。」

「ふふふ。」


は笑って、ビニールハウスについていた電気を消す。

夕方の日も落ちかけた薄暗い世界。

そこに現れたのは、光。


いくつもの、緑がかった光が飛び交う。




「…蛍…?」




「うちのお父さんが、蛍の生態研究をしているの。ここはいつでも夏の川辺。

 だから、いつでも蛍が居るのよ。」

「でも、何で俺にこれを?」

「ぬいぬい。今日は6月3日…でしょ?」


6月3日…俺の、誕生日。


「ぬいぬいの誕生日にはこれを見せようって決めてたの。

 初めて、男の子を招待するなら、好きな人が…いいって思ったから。」

…。」


耳を疑った。

でも、間違いなかった。

蛍の光に照らされた彼女の顔は、耳まで赤く染まっていたのだから。





最高の、誕生日プレゼントだ。

ありがとう…


これからは、は俺のものだと、宣言させてもらうからな…?











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後足掻き

うわ、うわ、微妙。乾さんの誕生日おめでとうドリ。なんですが。うーん。いまいちまとまってねえ。

急いで書き上げたからかしら?ごめんねーぬいぬい。大好きなのに。最近乾さんを「ぬいぬい」

と呼ぶのが好きなので登場させてしまいました―。あはははー。というか、何でうちの乾さんは

あんまりキモくならないんだろう…?謎。自分が好きだからかなぁ…。

思いっきりキモい乾さんが書ける人が羨ましい。(羨ましがり方が変だ)とにかく…もっと頑張ろう。

はひ。修行あるのみですな。

2003・6・3 月堂 亜泉 捧





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