風の寒さと君の熱

 

 

 

徐々に空が高くなり、雲も面白い形を見せ始めた11月。

秋が深まると共に、寒さもひたひた近づいている。

 

「うぅっ…寒いっ。」

 

木枯らし一号はもう過ぎたのに、今日はやたら風が強くて寒い。

運動しているみんなはいいかもだけど、雑用でちょこちょこ動くだけの私は、

 

 

か・な・り寒い。

 

 

 

「あーっ!」

 

誰かの叫び声と共に飛んで行くボール。

青い空に黄色い弧を描いてコート外の林に落ちていった。

 

「あららー。」

 

私はその様子をのー天気に見つめていた。

風が強いからコントロールも狂うのかしらねぇ?

 

「私が取りにいくからいいよー。」

 

部員の何人かがコートから出てきたけど、私はそれを制する。

寒いし、動いた方がいいなと思った私は、駆け足でボールの飛んで行った方に行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー?おっかしいなぁ…たしかこの辺に落っこちたと思ったのになぁ?」

 

がさがさと草むらを探る。

びゅうっ、と肌が切れそうなほど強くて冷たい風が吹くと、草むらも一層騒ぎ立てる。

 

「うぅっ、寒い…早いとこ見つけよ。」

 

黄色いボールだから、草むらの中にあればすぐ見つかるはずなのになぁ。

 

「すごいかっこうしてるよ、?」

「えっ、あっ!?木更津!」

 

私は四つん這いになって探してたから、かなり恥ずかしいかっこになっていた…。

慌てて立ちあがって服をパタパタとはたく。

 

「ボール、見つかったの?」

「ううん、まだ…って木更津く〜ん?」

「うわぁっ。」

 

後ろ手に隠したボールを奪い取る。

 

「…意地悪ーい。」

「クスクス…あまりに一生懸命探してるから声かけづらくてさ。」

「いっ、いつから見てたのよっ!?」

「独り言を言ってるちょっと前からかな。」

 

 

それって、かなり前からいたってコトじゃない…。

 

教えない木更津も意地悪だけど、気付かなかった私も…どうなんだろう。

 

 

「ところで、こんな所で油うってていいの?観月に怒られるよ?」

「いいよ。今日くらいはね。大目に見てもらうさ。」

「どうして?」

「今日、俺の誕生日だから。」

 

少し嬉しそうに微笑む木更津。

あ、珍しい…。素直に笑ってるよ(失礼)

 

「へーっ、そうだったんだ。おめでとー、木更津。」

「ありがとう。やっぱに言ってもらえるのが一番嬉しいよ。」

「はい…?」

 

 

今、って呼んだ…よね?

 

 

 

普段は、って呼ぶよね…?

 

 

 

 

「どうかした?」

「え、あっ、と…。」

 

ちょっと頭の中が混線状態のところで、木更津が一歩近づいてきた。

 

「ねぇ、俺…からプレゼント欲しいな。」

「え?」

 

強い風が吹き抜けて、木更津の長い前髪を揺らす。

普段は髪に隠されて見えない、少しきついけれど綺麗な瞳が見えることで、

端正な顔が更に際立つ。

 

…。」

 

女の人みたく綺麗な顔立ちからはちょっと不釣合いな、低く響く声。

 

「わっ、私、何も用意してないんだけど。」

「クス…じゃあ、コレでいい。」

 

半歩後ろに下がった私を、木更津は腰から抱き寄せる。

男の子の力で引き寄せられた私はなす術もなく…。

 

 

 

 

 

 

「…暖かいね、。」

 

 

 

 

「き、木更津…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永久にも思える長い時間だけど、ホントは数秒にしかならない時間。

木更津は、私に言葉を発するのを許さなかった。

 

「…ありがとう。とびっきりのバースディプレゼント。」

 

今度は、顔の間近でにっこりと笑う。

心臓の音が聞こえやしないか心配になるほど…。

 

「じゃ、部活に戻ろうかな。」

 

驚くほど普通に、木更津はコートのほうへ向かおうとする。

 

 

 

って…ちょっと待て!

 

 

 

 

「なっ、なんか言う事ないの?」

「何を?…俺、ちゃんとお礼は言ったけど。」

「っ…そうじゃなくて…。」

 

どういうつもり、それって!

好きでもなんでもないのにキスしたってことぉ!?

 

ひょっとして、いやがらせ!?

いや、いくら木更津って言っても、ここまで悪質な嫌がらせはしない…と思うし。

 

「ああ…。そっか。」

 

木更津は再び戻ってきて、

 

はどう思ったの?キスの意味。」

「えっ、えっと、そのっ…。」

「クスクス…分かってるんじゃないの?俺がわざわざ言わなくても。」

「…意地悪ーい。」

「うん、俺自身よく知ってる。」

 

にっこりと笑うのは、先ほどの優しさはなく真っ黒オーラ全開な笑みで…。

それでも。

 

 

「…木更津が、好き。」

 

 

どっちの笑顔もいいと思えてしまうのは、惚れた弱み…。

 

「良く出来ました、。」

「…って、返事は!?」

「あー、ほら、観月が呼んでるから行かなくちゃ。」

「話を逸らすな―っ!!」

「…言ってもいいの?」

「…う、うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「木更津、はどうしたんです?」

「さあ?寒いから防寒具でも取りに行ったんじゃないのかな?」

(まぁ…あの分なら防寒具なんて必要なさそうだけどね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…愛してるよ、。』

『っ…!!』

『クスクス…。可愛いんだから、ってば。』

 

 

 

 

来年からは、ちゃんとプレゼントを用意しておかなくちゃ…。

貞操が危ないかも…知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

うわ―…激駄作。ここまで酷くなるとは思ってもみなかったよ…。とりあえず言い訳。

えっと、ボールが飛んでいったのも、木更津の計算のうちです。ついで、何とかして

さんに告らせたかったんですね。だからわざと焦らしてました。そしてラスト。

コートに戻ってこないのは真っ赤になっちゃった顔をみんなに見られたくないだけです。

防寒具が必要ないかも、と木更津が言ったのもそのせいですね。つか、ここまで言い訳

せにゃならん文才のなさが切ない…。ごめんよあっちゃん、こんなBDドリムで…。

 2003・11・20 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

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