太陽の色、君の色。
「…。」
「…。」
真剣な顔で互いの様子をうかがう。
「…おっしゃあっ!!勝った☆ふふ、約束通り昼食奢れよ?仁。」
「チッ。」
悔しそうに舌打ちして煙草を吸いはじめる仁。
現在3限の授業中。それをサボって仁と賭けなんかしてます。
私、山吹中3年、 は、同じく3年の阿久津 仁と腐れ縁的幼馴染み。
仁は目つき悪いし、色々やったりしてるけど、根はいいヤツ。生徒指導の先生には
目をつけられてるみたいだけど、警察のご厄介にはならないもん。
「あ〜れ〜?阿久津にちゃ〜ん☆」
のー天気な声が頭上から降ってくる。
「うっせぇのが来やがった…。」
「やっほー、千石。何、あんたもサボり?」
「んー?どうだろね?ちゃんに会いたくてレーダーが働いたんだよ☆」
「何言ってんの。どぉせまた女の子ひっかけに行こうとでもしてたんでしょ?」
この明るい、オレンジ頭の男の子は、3年の千石 清純。ナンパ魔として名高い。
それさえなきゃ、テニス部でも結構な腕だし、頭だって顔だってなかなかなんだけどね。
「で、二人ともなにやってんの?」
「「花札。」」
仁とハモった。珍しい、仁が千石の質問に答えるなんて。
「渋いね〜…。まあいいけどさ。ねえねえ、サボりついでにさぁ、コートで打たない?」
「あ?なんでてめえと試合しなきゃなんねえんだ?」
うーん、仁は絶対断ると思うんですけどねえ?
運動は非生産的な事だと考えてるよ、きっと。
私と仁って根っこはほとんど同じ考えだから、私の考えてる事ってだいたい仁の
考えてる事なんだよね。昔っからそうだもん。
「ふーん、阿久津、怖いんだ?負けるの。じゃあ良いんだけど。
そんじゃま、南でも強引に掻っ攫ってこようかな〜☆」
千石は仁を挑発するの、めちゃくちゃ上手いと思う。
ある意味天才?
「…てめぇ…上等だ、やってやろうじゃねーか。」
ああ、ほら…。
あんた達ねぇ…今授業中だよ?まあ、一緒にサボってる私が言えた義理じゃないけど。
「さてと、阿久津、Which?」
「Smoose!」
くるくると回転して、ラケットはラフを見せた。
「ラッキー。サーブ頂きっ。」
ラッキー千石との異名をとるだけあって、サーブ権はしっかり頂く千石。
千石、フォームが綺麗だなぁ…。
さすが、実力ナンバーワンといった所かな…。
なんて思っていたら、この対戦に気付いた生徒が窓から身を乗り出して見始めた。
先生が止めにこないのも、仁がいるからだと思われる…。
「わーすっごい、女の子達も見てるよー?嬉しいなーっ。」
「ギャラリーがいんのか…最高じゃねーの。」
いや、ちょっと待て。どっかズレてるぞ、あんたら。
でも、私も止める事が何となく出来なかった。
なぜか、もっと千石のテニスしているところを、見ていたかった。
「うわっ!!」
ふいに、千石が崩れ落ちた。
「どうしたの、千石!」
「足、捻っちゃったかなー?今日はラッキー少なめなのかな?」
「そんな事はどうでもいいって、ほら、保健室行くから!」
私は千石の目の前へ後ろ向きにしゃがむ。
「何?」
「おんぶしてくよ。」
「無理だって!ちゃん、女の子なんだから。」
「いいからっ。」
私は結構強情だよー?仁とためはって喧嘩する女だからね。
「そんなに重傷じゃないんだから、平気だよ。」
「口答えしない!」
と、突然身体がふわんと軽くなった。
???
「ほら、オレこうしても大丈夫ぐらい平気なんだから☆」
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「ちょっ、ちょちょっ、千石っ!!」
千石は私の身体をやすやすと抱き上げていた。
しかもお姫様抱っこ!?!?
生徒の目があるって言うのに!!
私はそのまま、問答無用で保健室に同行されたのだ。
「ったく、なに考えてんのよ、千石!!」
保健の先生が出張中のため、急遽私が手当てをする羽目に。
というか、さっきやってきた千石のクラスの担任に頼まれたんだけど。
千石のクラス担任は気弱な先生で、なおかつパニック体質。
だから「千石君をよろしく頼みます、私、校長に呼び出されてますので!!」
とか青い顔して、早口に告げて嵐の様に去ってしまった。
「んー、なに考えてるかな。ちゃんのことかな?」
「ふざけないでよ!もー、あんなの恥ずかしくてしょうがないわ!おまけに千石の
ファンに呪い殺されるわよ!」
怒りでついついテーピングを巻く手に力がこもる。
「いたたた、ちゃん、もーちょい優しくしてくんないかなぁ、オレ一応怪我人
なんだけど…。」
「あっそ。」
もー、この男は…。
「そんなにオレ、嫌い?」
「は?」
「オレは、ちゃんのこと好きで好きでしょうがないのに。」
何言ってんの、といつものテンションで言おうと思った台詞は、喉で回れ右をして
引っ込んだ。
千石の瞳が、まっすぐに私を見つめていたから。
「あのさぁ…千石…。」
「清純。」
「………清純。」
「なに?」
「別に…嫌いじゃないけど…。」
「ホントに?やった、ちゃんがオレの事好きだって!!やっぱオレ、今日ラッキー☆」
「ちょっと待ってよ!」
どうしてそこに話が飛躍する!!この人ホントにマイペースだわ…!
「今更訂正はなしだよ?オレばっちり聞いちゃったもん。」
「別に私、嫌いじゃないって言っただけだよ?」
「うん、今はそれで十分☆大丈夫大丈夫、オレ、絶対ちゃんにオレの事
好きって言わせてみせるから、覚悟しといてよ?」
ばちっ、とウインクをする千石はなかなか様になってて、
ほんの少しだけ、ヤバイかな…なんて思ったり…。
「それにさ、オレに見蕩れてたっしょ?ちゃん。」
「!!!」
「結構脈ありだったり?ラッキー♪」
この人の運は、一体どれくらい強いんでしょうか。
まるで太陽のように明るくて、強い運。
私は、その運の力に引っかかっちゃいそうです…。
☆☆えぴろぉぐ☆☆
「あのやろう…わざとこけやがったな…。」
みっちり生徒指導のお目玉を食らった阿久津は、そう愚痴をこぼしていた。
道ゆく生徒にガンを飛ばしつつ、ポケットに入っている煙草の空き箱を握りつぶす。
(は、千石と居れて嬉しいだろうがな…。)
なんて、幼馴染み思いの阿久津だが、けしてそんな事をには話さないのだった。
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後足掻き
初千石ドリです。うーん、難しい…千石がエセだわ…。千石は性格的に私と反対だと
思われるので、書くのは難しいです。最近阿久津はなんだか好きです。何でだろう??
憎めない不良。ホントにいいヤツなんだもん、阿久津。友達になりたいかも。
でも友達になったら大変そうかな…肺ガンとか(笑)。千石は何か、グループの中で
一緒に騒いだら楽しそうかも。サシで居たら疲れそう(汗)とにかく、修行しようっと…。
2003・1・19 月堂 亜泉 捧
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