「屋根よ〜り〜高〜いこいの〜ぼぉり〜。」

 

隣でのんびり、少し調子外れに歌う声。

 

「ねぇ、静かにしてくんない?」

「ん?なによお、人がいい気分で歌ってるのに。」

 

くるっと振りかえり、歌を中断させられた事に不服を訴える。

 

「人を不快にさせる歌声聞かせといてそういう事言うんだ。」

「祝ってあげてるんでしょ〜?」

「何を。」

「子供の日。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君のいる日々

ACT・2 子供の日とこい心

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っていうか、俺を祝う前にも子供じゃん。」

 

茶を飲みながらそう返してやると、相手は頬を膨らませ不満げに俺を見る。

 

「端午の節句は男の子のお祝いでしょ?私は雛祭りで終わったも〜ん。」

「中学生にもなって今更端午の節句ではしゃがないし。」

「でもいいなぁ〜。私の男兄弟もいなかったから、こいのぼりなかったんだよね〜。」

「(…シカトだし)」

 

庭に上げられた大きな(邪魔くさい)こいのぼりを見ながらが言う。

俺の家はアメリカにいた頃からこいのぼりを上げていた。

向こうの奴らには、「どうして魚を空に上げるんだ。」なんて不思議がられたけど。

 

「リョーマさん、ちゃん、柏餅食べましょう?」

 

奈々子さんがお盆に柏餅の載った皿を持ってくる。

さっきまでこいのぼりを真剣に見ていたの目線は一気にそちらへ方向転換する。

やっぱりに情緒とかってものはないんだとしみじみ思う。

 

「やった〜!待ってました♪えへへ、いただきま〜す!」

「ふふっ、落ちついて食べてね?喉に詰まらせると危ないから。」

 

柏餅を口に満載して笑むに奈々子さんが声をかける。

 

 

ホント、色気ない。

 

 

 

ってそういう死に方しそうだしね。」

「しふれひなほほひははひへ〜(失礼な事言わないで〜)」

「食うか喋るかどっちかにしなよ。」

 

は、いつでもよく喋る。

確かにうざったいこともあるけど、時には場を和ませてくれる。

俺はそんな事しようとはおもわないし、出来ない。

これも一種の特技かもしれない。

 

、どうだい。こいのぼり気に入ってくれたかい?」

 

べたべたと足音を立ててやってきた親父が、柏餅を横から奪い取り食い始める。

 

「あ、おじさん!うん、スッゴイ気に入った!こんなに大きいの見た事ないんだもん。

 東京ってどこもごちゃごちゃしてるから、こんなに大きなこいのぼりなかなか

 あげられないもんね。」

「へへ〜、そうだろ?」

 

自慢げに鼻の下を掻く親父。こんなのが親父なのが心底嫌になる。

 

「あれ、。そういやぁラケット準備してあったけど、ありゃなんだ?」

「あー、そうそう!練習しようと思ってたの。ゴールデンウイーク中は練習休みに

 なってはいるけど、明けたらすぐにランキング戦があるの。」

 

一応、テニスの事は忘れないんだ。

なんて思ってると、くるっと俺のほうに振り返り、にっこりと微笑みかけてくる。

 

「勿論リョーマも練習するよね?付き合ってよ。」

「やだ。」

「やだ…って何でよ!」

「決まってるじゃん。練習って言うのは上達するためにやるもんでしょ?

 相手にしたって上達みこめるわけないし。」

「それって私のレベルが低いって言いたいわけぇ〜?ムカツクー!

 ワンセットマッチで勝負!」

 

すぐ挑発に乗るところはまだまだだね。

まぁ…正直言えば、の成長は凄いと思う。

ほんの一ヵ月足らずの初心者中の初心者の癖に、もうランキング戦で

上位に食い込んできているし、男と同じメニューをこなしても、泣き言は言わない。

むしろ、純粋にテニスを楽しんでて、強くなる事に関しては貪欲で。

 

 

ひょっとしたら、凄いライバルになるかもしれない。

 

 

なんて事は、本人には死んでも言ってやらないけど。

 

「ねぇ、ハンデあげようか。」

「え?何で?」

「柏餅の食べ過ぎで体重くなってるんじゃないの?」

「ムッカッ!結構ですーっ!」

 

まだ春の残る強い風が吹きぬける。

こいのぼりがばさばさと音を立てて空を泳ぐ。

の長く伸びた髪が、さらさらと風になびく。

 

 

「……。」

 

 

「行くよー?」

 

ボールをバウンドさせ、こちらを見るの目は輝いている。

ぎゅっとグリップを握り、俺はゆっくり構える。

 

「いつでも。」

 

 

 

 

 

どうしてこんなに、胸が高鳴るのか。

 

 

 

強くなる相手を期待しているから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、きっとそうなんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

うぉ、ぎりぎり子供の日で書きあがったー!(笑)神が降りてくる時とはそんなもんです。

全く勝手な神で困りまし。明日は学校なのに(苦笑)とりあえず君のいる日々続編です。

S&Tを売るという暴挙をやらかしたのでだいぶ忘れ気味。というかさらに続作が

出てるのにまだやってるんかい(汗)月日の流れが遅いのです…月堂体内時計(笑)

 

 2005・5・5 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

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