凄い、大切なんだと思う。

相手を名前で呼ぶ事って。

でも、何となく照れくさくて…。

最初は、真っ赤になって呼んだっけ。

 

 

 

 

君の名前

 

 

 

 

「ふっざけんな不二ぃっ!!!」

 

今日も今日とてぎゃあぎゃあ言ってるのは私、青春学園中等部3年、 

これでも一応女です…。

 

「そう怒られてもね、勝てないものは勝てないんだよ。」

 

真反対に余裕綽々でいるのは、同じく3年、不二周助。幼馴染みの腐れ縁ってやつ。

 

「そういうところが腹立つっちゅーんじゃオノレ!」

 

何で私が怒っているのかと言うと…チェスの勝負です。

ついついマジになっちゃうのよねぇ…。

 

「もっかい勝負だ不二っ!」

。あれで僕に勝つのは、まだ早いよ。」

「ムカツクー!!てめぇ絶対いつかいてこます!」

「ふふ。」

 

そんなこんなで日々過ぎて行く。

ああ、無駄な労力使ってるなあ、私…。

 

 

 

 

「また不二君に喧嘩売ってたの?」

 

呆れ気味に話しかけてきたのは私の親友、彩。

学校内にはびこっている不二ファンの大ボス的存在。

 

「ありゃー不二が悪いのっ!」

 

いや…単に負けたから怒ってると言った方が正しいけど…でも

あいつって作戦が姑息なんだもんっ!!

 

「あんた、そのうち不二君の取り巻きに殺されるわよ?不二君に毎日罵詈雑言叩き付けて。

 私より恐い子いーっぱいいるんだから。不二君と話せるだなんて一握りよ?

 まあ、私はのお陰で話せるけどねぇ。感謝してるわ。その辺。」

「あ、ん、た、ねぇー。友達の私と不二とどっち取るのよっ!」

「不二君。」

「彩ーっ。」

 

くそう、友達甲斐のないやつめー。

 

そりゃ不二はテニス部のNO.2だの、天才不二だのって言われてるらしいけど、

昔から一緒にいた私には、ちょっと実感がない。私の中では昔の不二からあんまり

変わっていない気がする。…ムカつくところも変わらないし。

 

 

 

「ところで。ちょっと聞きたいんだけど。」

「何?また不二のこと?」

「違うわよ!あんたのこと。って、不二君と幼馴染みなんでしょ?なのに何で

 不二君はあんたの事、「」って呼んで、あんたは「不二」って呼んでんの?

 周助、って呼ばないの?」

「ま、いいじゃん呼び名なんて。」

「そうかなぁ。」

 

確かに、私は不二を名前で呼ぶ事ってない。

その事、不二はどう思ってんだろ。

 

ま、気にしてないだろうけど。

 

 

 

 

 

 

「また今日も、は相変わらず、か。」

 

自然と笑みが漏れるのを、自覚する。

昔から自分を飾らず、ありのままをさらけだしてくるは僕にとって眩しいくらいだ。

 

 

僕が笑わせようと思った言葉に笑ってくれる。

 

 

怒らせようと思う言葉に本気で怒ってくれる。

 

 

真っ直ぐで、

 

純粋な君。

 

 

 

そんな君に、僕は…。

 

 

 

 

 

「不二先輩!」

 

 

戸口に女の子が一人。後輩らしい。

僕は努めて優しく話しかける。

 

「ん?僕に、何か用かな?」

「はい、あの…」

 

 

 

 

 

 

「ったく、不二のやつ、一体どこ行ったんだ?」

偶然テニス部の人に逢って、不二にある書類を届けてくれるよう頼まれ、不二捜索中。

どーでもいいときにはすぐ見つかるのに、探すと見つからない。

諦めはじめて私のクラスに近付くと、

 

「ん?人がいる。女の子と、あれは…。」

 

 

 

不二!?

 

 

 

 

なんとなく入り辛くて入り口近くに立ち往生。

 

「あの…。不二先輩は、先輩の事が好きなんですか?」

「は?」

 

不二の声が私の心の声とハモる。

そりゃ、「は?」とも言いたくなるわよ。

 

「だって、噂で聞きましたもん。不二先輩は先輩と付き合ってるって。」

 

あれれ?

 

 

 

何で心臓がドキドキ言うんだろう。不二の答えが、何なのか…。

 

 

 

 

 

不安?

 

 

 

 

 

「君は何か誤解しているんじゃないかな。とは、ただの、幼馴染みだよ。」

 

 

 

 

何かが、粉々になった気がした。

 

 

 

 

私が不二の事を名前で呼ばないのは壁を作りたかったから。

名前で呼んでしまったら、私の気持ちはきっと止まらない。

その想いは、不二にとって迷惑にしかならないかもしれない。

 

 

 

だから不二と壁を作った。

 

 

 

不二に拒絶されるより、少し離れていたほうが、辛くないから。

でも、不二の口からはっきりと聞いてしまった。

 

 

 

―――――――とは、ただの、幼馴染みだよ。――――――――――

 

 

 

バサバサッ!

知らないうちに力の抜けた腕から、書類が零れ落ちた。

 

「!!」

「あ…あのっ…ごめんっ!」

!!」

「不二先輩!…答えてください…!」

 

 

「…僕は…」

 

 

 

 

 

「へくっ、っく、ぐずっ…。」

 

あーもう、かっこ悪。あれじゃバレバレじゃん…。

不二も幻滅しただろうなー…。

失恋するならもっとドラマチックにしたかったなぁ…。

あんなありがちな漫画のオチみたいな失恋って…。

 

はぁぁ……。

 

 

。」

 

話しかけてきた声は、間違いなく不二。

私は動揺しつつも、涙声をなんとか抑えようと必至に強がった。

 

「何しに、きたのよ。私のザマを笑いにきたわけ?」

「あははは、凄い言われようだね。これでも心配して追いかけてきたのに。」

いつものにこにことした顔が何だかムカついて、私はつんけんと

「ただの幼馴染みにお優しいことで。」

「珍しく卑屈だね、。らしくないよ。」

「私にだって卑屈になりたいときもあるもん。」

「…さっきの台詞は、に言うべきかな。

 君は何か誤解しているんじゃないのかな。」

「…はい?」

 

不二、大丈夫かこいつ…。

何をどう誤解してるっつーのよ。

 

「ただの幼馴染みだろう?今の僕らは。今だに名称は変わって無いはずだ。

 僕がまだに気持ちを伝えてないからね。

 

 

…好きだよ。。他の誰でもなく、が。」

 

 

頭ん中はパニック状態。

突然、失恋したと思ったら、今度は逆に告白されて…。

 

はらら、こりゃ三流ラブストーリか??

 

ふ、と覗き込む不二の綺麗な青の瞳が、私を捕らえる。

 

その瞳は、嘘をついていなかった。

 

は?」

 

「…バカ、分かってるくせに。」

 

うわわわっ、赤いっ、今全身赤い!!茹でダコさんだよ!!

 

「でも、の口から聞きたい。」

 

私が小声で答えると、不二はにっこりと満面の笑みを浮かべて私を抱き締めてくれた。

その時の笑顔は、いつもの仮面みたいな笑顔じゃなくて、

本当の、心からの笑みだった…。

 

「好きだよ……周助。」

 

 

 

 

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。えぴろーぐ。

 

翌日の事。

 

。今日も勝負する?」

「もちろん!」

「じゃあさ、もし僕が勝ったら、今度の日曜、デートしよう。」

「っ、周助!」

 

しまった、と思ったときにはもう遅い。好奇の目が私達に注がれる。

 

「こういう…。」

「時には…。」

 

 

「「逃げるっ!」」

 

 

 

 

 

「勝負は無効だけど?。」

「おおまけにまけて、デートしたげるよ。」

「クスッ。…大好きだよ。。」

「周助っ…!」

 

ううっ…悔しいけど…ま、いっか…。

 

End☆

 

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後足掻き

不二ドリ。見えなくても不二ドリ。いやあ…罵詈雑言叩きつけ。

私が言いたい台詞を丸々言わせてみました。不二ファンには悪いですが私は

アンチ不二なので。(いわゆる観月派)でも不二は基本的に書きやすし。

でもこの私の拙い文才の中でのお話な訳で…精進します。

 2002・11・11改  月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

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