どんなに好きでも、勿論嫌いでも譲歩できないことがあるわけ。

それはずっと、変わらないんだろうな、と思っていたのに。

 

 

 

君の思うところ。

 

 

 

 

っ、助けてよーっ!」

 

私は親友のを見つけると同時に叫びつつ抱き付いた。

 

「うわわっ、ちょちょっと、急にタックルしないでってば!」

「だずげで。」

「(うわあ、凄い顔…。)切羽詰まってるわね。」

「だって!あの人絶対頭変だって!どうにかしてよ!」

 

そう!私は困ってるのよ!あの、観月はじめという男に!

 

まあ確かに、顔は悪くないわよ。成績だっていつもトップクラスだし、お金持ちだし。

ただ問題は性格と服のセンスよ!

あれはもう人知を超えてるって言うか…。ね!?

 

「あいつと従兄弟同士なんでしょ、ーっ。」

「まあ、そうだけど…私はじめくんは止められないと思うな。ごめんね、の力に

 なれなくて。」

「…っ、何ていいやつなのっ、血が繋がってるはずなのに、どこがどうなって

 あいつはああもひねくれたんだろ!?」

「んふっ、楽しそうですね、。僕も混ぜて下さいよ。」

「うぎゃあっ!来たあっ!!歩く景観破壊!」

「照れなくていいんですよ。」

「誰が照れてるかっての!」

「もう、素直じゃないですね。そんなところがまた可愛いんですがね。んふっ。」

「ひいいいーっ!何言ってんのよあんたわ!!脳味噌沸いてんじゃないの!?」

 

もう…ストーカーかってぐらい、私をつけまわす。

同じテニス部のマネージャーだからまだこれでも譲歩してやってるようなもんだけどね!

 

 

 

でもこいつ、一番凄いのは部活のとき。

 

さん、皆さんにドリンクを配って下さい。」

 

人が変わるのなんのって。いつもは私をって呼ぶくせにさんて呼んで。

急に真面目…じゃないね。

態度大きくなってさらに、私を顎で使うのよ。

 

さん、今日終わったら僕の部屋へ尋ねてきてくれますか?」

「は?」

「部員の練習メニューに関して、食事面にも気をつけないとなりませんから。

 ですから、さんにも来ていただきたいんですよ。」

「あ、はいはい。分かった。」

 

そういうことなら別に構わないけどさ。

 

 

言われた通り、私は男子寮を尋ねた。

寮長に理由を話すと、案外あっさりと通してくれた。

…観月って、なんでか年上うけがいいのよね…。

えーと、観月の部屋は……あ、ここだここ。

 

 

「いらっしゃい、…」

 

ばんっ!

と轟音が男子寮の廊下に響いた。

 

いや、だってもう閉めるっきゃないっつーか、もう言い表しようのない景色が扉を

開けた私の眼前にあったわけですよ。

 

っ!どうしたんですか!?開けさせなさい!」

「嫌だ!」

「一体僕が何をしたっていうんですか!?」

「その服が目に悪い!景観汚染!!着替えてこい!でないと私帰る!」

 

渋々、といった具合にドアから足音が遠ざかる。

あー、無自覚って怖い。

 

暫くしてからドアが開く。白のハイネックに黒のスラックス。なんだ、普通の服も

持ってるんじゃん。

 

「これでよいでしょう?」

「うん。じゃ、あがらせて頂くからね。」

 

うわ、部屋キレー…ひょっとしたら私の部屋のが汚いかも。

 

「どうぞ、こっちへ来て下さい。」

 

勧められるままテーブルへつく。

 

「飲み物、何がいいですか?」

「あ、いいのに。気にしなくて。」

「いいですよ、僕が差し上げたいんですから。」

「じゃあ、紅茶ある?」

「ええ。」

 

勉強机はきちんと辞書や教科書が並んでいて、ノートパソコンもカバーをかけて

置いてある。

 

「はい、どうぞ。。」

 

はあ、これであの変な性格と服のセンスさえよければなあ…。

 

「では、一人一人にメニューを考えなければなりませんからね。少々骨が折れますよ。」

 

そか。完璧主義者の観月の事だ。身長や体重、プレイスタイルその他もろもろを

考慮してメニューをはじき出そうとしてるんだ。

私、きっと頭痛がしてくるな、それは…。

 

 

 

 

 

 

「疲れたー。何でうちの部員はこうも個性強いんだかねぇ。」

 

ぐてーっと机にもたれかかると、観月が苦笑しながら机の上を片付ける。

 

「まあ、全国から集められていますからね。仕方ありませんよ。…ちょっと休憩

 しましょうか。」

 

ふう、と息をつくと。目の前にクローゼットがあった。

あのなかに、世にも恐ろしい地獄絵図のようなものの数々が入ってるのか…。

うわぁ…考えただけでキモっ。

 

「…あのさ、観月。何であんなど派手な服着るの?」

「…そうですね…母が送ってくるんですよ。」

「へ?」

「半分は母の手作りですね。」

「は????」

「…昔、母は貧乏で、いい洋服などまともに着れる事は無かったそうなんですよ。

 それでも、それを悟られたくなくて。せいいっぱいの虚勢が、あの服です。

 虚勢を張りつづけて、今じゃあれが普通になったようですが。」

「…。」

「…なんて、信じました?」

「んなっ…嘘だって言うの!!??」

「さあ、どうでしょうね。んふっ。」

 

くあっ!!むっかつく〜〜〜!!!

ちょっと信じそうになった自分もむかつく〜!!

 

「あんたやっぱ嫌い!大っ嫌い!」

「それは困りますね。…僕は、が大好きですから。」

「は???」

 

はっ!!ここで騙されるんだから、私は!!

 

「ま、また冗談言って!!」

「冗談じゃありませんよ。…僕は、本気です。」

「ちょっ、ちょっと待った!観月っ!」

「はい。」

「…本当に私の事が好きなわけ?」

「もちろんですよ。」

「じゃあ、私があのド派手ないしょうがいやだっていったら、止めてくれる?」

 

観月はちょっと考えてから、

 

「やめませんね。…に合わせてやめたとしても、それはその瞬間に『僕』では無くなる。

そんな偽りの『僕』ではなく、ありのままの『僕』を好きになって欲しいんですよ。」

「観月…。」

「さあ、答えを聞かせてください、。」

 

その声があまりにも優しくて、何だか泣けてきた。

 

「…今はまだ、イエスとは言えない。」

「…ならば、ずっと待ちますよ。貴女がイエスと答えるその日まで。

 まあ、もちろんじっと待つなんて、出来ませんけどね…んふっ。」

「…まさか、観月…。」

「んふっ。ここから出られればいいんですけれどねぇ…。」

 

急いでドア口に向かうと、普通の鍵にプラスされて、キーロック式の鍵が。

いつの間にこんな物つけたのよ、こいつわ!!

 

「鍵かけやがったな!!卑怯ーっ!!」

「んふっ。」

 

その後…。

私はの助けでなんとか救出されたものの、

観月の執拗な追跡は、更に激化する事となった……。(泣)

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

はーい、観月さんです。変態観月さん。私としては珍しいです。うちの観月はどうにも

ツッコミなので。さて、観月の『冗談』ですが、あれは友達の馬鹿バナがまたも元ネタ。

何で観月があんな派手派手なのか、という話ででして。単なる派手好きとか、色々な

案が出たところ、この『母の手作り』が一番面白かったものですから…。ありえないです

けど(笑)自分で買ってくるでしょう、観月は。しかし、どこに売ってるんだか、

あんな服(苦笑)とりあえず、細かいところは見逃しちゃってください。

 2002・12・25 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

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