ボールが弾んで、こっちへ戻ってくる。
何度も何度も、ボールは飛び、戻っていく。
そう、まるで何かを暗示するように。
キミを想うから
草木を揺らす爽やかな夏の風。
木陰にいると照りつける日差しが弱まって、心地いい。
「リョーマ。」
頭上から現れた影に、俺は気付かれないよう小さくため息をつく。
。
一応俺の彼女だけど、本人は頑なにその事実を秘密にしようとしている。
だから、こうして学校内で会うのは珍しい。
俺がたまたま一人でいるのを見つけたからなんだろうけど。
俺は嬉しい気持ちは隠して、自分でも無愛想だと思う声を出す。
「何の用?」
「おやっ。ご挨拶だね。」
はいつもの事に気にすること無く俺の隣に座り、芝生の上にファンタを置いた。
「差し入れで〜す。珍しくお財布裕福な私の奢りなんだから、感謝しなさい?」
「そうだね、いつも金無いって俺にたかるお前にしては、珍しい。」
ぷしゅっと小気味いい音を立てた缶に、口をつけようとする瞬間。
「ちょい待った。」
俺からファンタを奪い取ると飲み口のところをハンカチで拭き、もう一度渡す。
「何?」
「飲み口のトコにどんな黴菌がついてるか分からないでしょ?」
確かにそうだけど。
…こいつって案外…。
「お前ってさ、意外に……。」
「意外に?」
ずいっと身を乗り出して聞き返してくる。
…喋りにくいんだけど。
「意外に…その……。気が利くんだな。」
相手はぽかんとして、俺の顔を見つめたまま時が止まったように動かない。
しまった…。
こんな事言うんじゃなかった。
「いや、その……あ…」
「何それっ!?それって私がいつも気が利かないみたいじゃない!」
俺としては誉めた…つもりなんだけど。
何だか、誤解されたみたいだ。
「…面倒くさ…。」
俺が肩を竦めてそう言うと、またはきゃんきゃん突っかかってくる。
「面倒くさってどういうコトっ!?いつもそうやってリョーマは……」
ぴたり、と相手の言葉が止まる。
互いの唇が重なっているから。
「…少し黙っててくんない?周りに気付かれてもいいわけ?
ま……俺はそれでも構わないけど。」
唇を少し離した状態で囁くと、相手が耳まで赤くなって口を噤む。
「黙ってりゃ可愛いのに。」
「んなっ…どういう…。」
「―!どこ行ったの〜!?」
「あっ、ごめん、今行く〜!!」
友達に呼ばれ、は慌てて立ち上がる。
ふと俺のほうを見て、悩んでから少しだけ。触れるくらいのキスをして走り去っていった。
…やられた。
俺は赤くなった顔を隠すために帽子を目深に被り、テニスコートへと入っていった。
夏の午後。
じっと木陰に座っていては
キミを想ってしまうから。
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後足掻き
あははは……web拍手用に書き上げたとはいえ何だこれ。短過ぎてめちゃくちゃ
頑張って起承転結つけた感じ。無理やり感たっぷり…。(汗)越前は不意打ちさせたい
症候群の月堂です(笑)もっと素敵な越前を書きたい………。
拍手ありがとう御座いました☆
2004・8・16
2008・1・5 改 月堂 亜泉 捧
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