ボクは、無。
何もない、から、無。
じゃあ、ボクは…何?
記憶。
「ヴェイグー!」
「何だ、マオ。」
この長身銀髪の剣士はヴェイグ。フォルス能力を集めていたボクらの一番最初の仲間。
気づいてみればこの旅で2番目に長く一緒にいるんだよね。
「じゃじゃん!こんなもの拾っちゃいました☆」
「…何だこれは。」
ソレを手に取った無表情なヴェイグの表情が少し変わる。
「なんかねー、珍しい植物で…スネイカビルって言ってね〜、これはね、
脱皮する植物なんだヨ!すごいでしょー!」
「…そんなものがあるか。…大方ティトレイあたりは騙せたんだろうが。」
「ううっ、ばれたか…やっぱりヴェイグは騙しきれないか。残念〜。」
がっくりと肩を落とすと、くすくすと笑い声が聞こえる。
「ほらね、だから言ったでしょ?マオってば。」
「アニーだって最初は驚いたのにさっ。ちぇ〜。」
ボクは手にしたそれをじっと眺めてみる。
もし、この草が本当に脱皮するなら楽しいのに。
皮を脱いで、新しい自分に生まれ変わる。
それは、どんな感じなんだろう。
つい最近まで、ボクはその感情を知っていたはずなのに。
『オルセルグ』なんてピンとこないけど、記憶なんて、元からなかった。
ボクはつい最近「始まった」んだ。
ヴェイグたちみたいに家族と過ごしたことも、友人と遊んだこともない。
それは、寂しいことかもしれない。
でも、それが寂しいのかボクにはよく分からない。
ない、ことが分かっただけで…。
「マオ。何しているんだ。」
フォルスキューブを浮かべさせていたボクに、話しかけてきたのはユージーン。
ボクに「マオ」の名をつけてくれた人。
「んー?別に、何でもないよっ?…あ、消えかけてる。ちちんぷいぷいっ♪」
キャンプにあるかがり火に、フォルスで火をつける。
このフォルスは、ボクを創ったフェニアからもらったものらしい。
「マオ。俺に隠し事が出来ると思っているのか?」
「あはは…ユージーンは何でもお見通しだ…困っちゃうよ。」
小さく尻尾を揺らして、ボクの隣に座る。
カレギアの城で初めて会ったときとちっとも変らない、頼りになる姿。
「ユージーンの言葉が、今更分かったんじゃないかなって、思ったんだ。
ユージーンがマオってつけてくれなかったら、ボクはマオじゃなかったから。」
「…自分の出生が分かったから、か。」
「ずっと考えてたんだヨ。考えるのはニガテだけど…ヴェイグやアニー、ティトレイや
ヒルダ、クレアさん…それからユージーンと、ずっと一緒に旅して。
ようやくボクはマオがこれだって言えるんだなって。」
そう。
ボクは、まだ始まったばっかり。
脱皮じゃなくて、これからどんどん、「経験」や思い出の皮を着て行く。
それは、皆そうなんだって、ユージーンがあとでこっそり教えてくれた。
ボクは、今ボクの道を歩いている。
マオっていう、一人の「ヒト」として。
仲間と一緒に…ネ☆
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後足掻き
ぱっと思いついたんでガーっと書きあげたマオSSです。ティトレイとヒルダがいないのは
別動隊ってことで…スマン。時期的には結構後半かな…?
リバースは賛否両論あるけど、僕は好きですよ。うん、ストーリーメッセージが好きかな。
あとは日記でいろいろ言い訳します。はひ。
2009・5・31 月堂 亜泉 捧
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