冬は好きじゃない。

寒いし。

外に出たくなくなる。

 

 

季節はずれの花が咲く

 

 

季節は冬。早くもショーウインドウがクリスマスの飾り付けをし始めた。

夜は風が強く、身震いするほど寒い。

だからオレは部屋の中でカルピンとコタツで寝ようとしていたのに。

 

「…寒…。」

「文句言わない、そこーっ!」

「寒いもんは寒い。」

「打ち勝て、寒さに。若いもんが情けないぞっ。」

「年寄りくさい…。」

「うっさい。もー、いつもより更にテンションが低いなー。」

 

寒いんだからしょうがないじゃん。

オレは今、幼馴染の に無理矢理引っ張り出され、近所の公園にいる。

で、何でいきなりこんな所に居るかと言うと。

 

「うわ、あっつ!!」

「何やってんの。」

「ロウ…熱い…。」

「当たり前じゃん、溶かしてるんだから。」

 

いきなり。

はオレの家を訪ねて来て。

 

 

「花火やろ?花火!!」

「…、今何月だと思ってる?」

「ん?12月。」

「…花火は普通何月ぐらいにやる?」

「夏場だねぇ。」

「12月は夏場?」

「いいじゃん!普通の人と同じような事はしたくないの!!やろうよぉ〜はなびぃ〜。」

 

 

…こう言う経緯で。

 

「あーもう、上手く立たないよ!!立て、ローソク!!気合で!!」

「―――…貸して。」

 

ロウソクを傾けてロウを溶かし、ロウの柔らかいうちにロウソクを立てる。

 

「おー…上手い。」

が下手すぎるんだよ。相変らず不器用だね。」

「う゛…しょうがないじゃん…ささ、とにかく早くやろーよ!!」

 

と、が取り出したのは線香花火。

 

「いきなり線香花火やるんだ…。」

「何で?」

「普通線香花火って最後にやらない?」

「ううん。最後はド派手にドカーンっと☆」

「これ?」

 

噴射型の花火を指差す。

あんまりコレ、ドカーンって感じじゃないと思うんだけど。

 

「何その顔ー。いいじゃない。」

「…いいけど。オレ、これにしようかな。」

「あ、3色花火だー。それも綺麗だよね。でも私、線香花火が一番好きだな。

 小さくって、仄かな明かり…すごく健気な感じじゃない?」

「ふーん…。」

「綺麗だねー…季節はずれもいいと思わない?」

「別に…。」

 

オレの3色花火に、の顔が明るく照らされる。

その顔は幸せそうに綻んでいて、

 

いつもと違った印象に一瞬…目を奪われる。

 

「あ、おしまーい。バケツバケツ。」

 

水を張ったバケツに、終わった花火を入れる。

じゅっ、という音がして、辺りに独特の火薬の匂いが広がる。

 

「よしっ、次やるぞーっ。何がいいかなぁ??」

 

嬉しそうに花火を選ぶ

その光景を見ていてついつい、口元が緩む。

夜で良かった、なんて思う。

 

「あ、火貸してっ。」

 

まだついているオレの花火に、が花火を近づける。

 

「こういう事ってしちゃだめだって書いてない?」

「いいのっ。ああもう、揺らさないで、火がつかないよ。」

 

が俺の手を掴んで固定する。

その手がすごく冷たかった。

もっと、の手は暖かかったはずなのに。

 

「手…冷たい。」

「あ、ゴメン。寒いからねー。さすがに花火じゃ暖はとれないしね〜。」

 

今まで色鮮やかに散って辺りを照らしていた火の粉が不意に止まる。

そうすると、周囲は何もなかったかのように、また静寂を取り戻す。

 

「終わるとなんだか空しいよね。…花火ってさ、“飽きるまでやった”って思える事

 無いと思わない?いっつも終わると、あーあって思うもん。」

 

ね?とこちらを見て笑ってみせる。

 

「でも、楽しいよ??やっぱり、リョーマを誘って良かったな。」

「何でオレ?」

「お友達少ないの〜。」

「嘘だ。クラスで十数人と会話してるのに。」

 

は明るくて素直だから、結構誰にでも好かれる。

クラスでも一人でいる姿を見る事はまずない。

 

「あはは…。でも…そうだね。なんでだろう?

 リョーマと一緒が良かったんだ。」

 

心臓が、とくん、とくんと早い脈を打とうとしてる。

別にヘ聞こえるわけはないのに、それをなんとか止めさせよう、なんて思う。

 

「うおっ、もうあと少ないし!!ミニパックじゃない方が良かったかな??」

「いいよ別に。やりきれないじゃん。」

「…終わって欲しくないし…。」

「…?」

「じゃあ、もうこっちやりましょうか!」

 

は噴射型の花火を手にする。

 

「待って、オレがつける。」

「え?いいよぉ。」

はどんくさいから点火したあと逃げ遅れそう。」

「ぶー…失礼ねー。でも、やってくれるっていうなら、はい。」

 

オレはライターと花火を受け取って、着火する。

ちょっと小走りにの方へ駆けより、花火を見る。

 

「こういうのって、花見って言うの??」

「さあ?」

「お花見、行きたいね。」

「春にはまだ遠いよ。」

「でも…リョーマと見たいんだ。」

 

俺の気持ちに反応するかのように、一つ目の花火が終わる。

辺りは暗くなる。

の顔は、月明かりに照らされてやっと見えるくらいだった。

 

「お花見も、海水浴も、紅葉狩りも、スキーも…。全ての行事を、リョーマと一緒に

 過ごしたい…。」

…。」

「ダメかな?リョーマ…私のお願いは、贅沢??」

 

俺は答えず、もう一つ残っていた花火に火をつけに行く。

 

「…リョーマ…。」

「オレは。」

 

後ろで、花火がついたのだと、自分の影で分かる。

…照れくさい事を言うのを覚悟だから、顔は、見えないほうがいい。

 

「ずっと昔から…そしてこれからも、は俺の側にいてくれるって、思ってたけど。

 

 …いやだって言っても、オレからは絶対放さないから。」

 

 

の顔が、花火の火に照らされているせいだけじゃなくて、赤く染まる。

 

「…嘘…。」

「嘘言って、どうすんのさ。」

「…リョーマ!!」

「うわっ!」

 

が抱きついてきた。

ふわんと香るやさしい髪の香りが、妙に甘く、くすぐったい。

オレよりも小柄で細身のを、少し強く抱きしめる。

 

「大好きだよ、リョーマ。ずっと、ずっと、一緒だからね?」

「…。」

 

後ろで、花火が消えた。

でも、もオレも、花火が終わったからと落ち込む事はない。

 

 

 

季節はずれの花は、咲いたから

 

 

 

――――…俺達の心に。

 

 

 

 

ずっと枯れない花が。

 

 

 

 

 

互いを想う度に成長し、美しくなる花が。

 

 

 

 

 

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後足掻き

リョーマ。記念すべき40作目のドリムですが…。進歩しないなぁ…自分(汗)

未だにリョーマが苦手で仕方ありません。さて。これの元ネタはですね。

こんな季節はずれ(ただ今11月下旬。)の時期に花火をやろうという計画が部内で

持ちあがりまして。(詳しい話は端折りますが。)でですね。友人に報告したところ、

『こんな時期に花火なんてやるか?』なんて言われまして。そこで思いついて。

でも、冬の花火っていいですよ〜?ただ、乾燥しているので火事にはお気をつけ下さい☆

それより私は日本語を書こうよ…。文章構成力とかも身につけよう…ハイ。

 2002・11・27 月堂 亜泉 捧

  

 

 

 

 

 

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