彼女に出会ったのは、寮の前だった。

うろうろしていたから、困ってるんだろうと思って声をかけたのが始まり。

 

その時に、彼女の瞳が寂しげだったのが、気になったんだ。

だから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日だけは微笑んでいて 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、いるー?」

 

元気な声が寮内に響き渡る。寮にいた数人の生徒は何事かと辺りを見まわす。

オレはその声の主に近寄ってぽんっと頭に手を乗せる。

 

「何やってんだ、お前は。」

 

こいつ…は、オレより(かなり)背が低いせいで、ほぼ真上を見るようにオレを見る。

 

「あ?あー、裕太。お兄ちゃん知らない?」

「寮長なら今日はどっか行ったぜ。」

「ええー?そんなぁ…彼女とデートとかかなぁ〜。」

 

の兄貴は、この寮の寮長だ。

随分と仲のいい兄妹で、こうして月に一回わざわざ寮まで遊びに来る。

 

「彼女か。も彼氏くらい作ってみろよ。兄貴にべったりじゃなくて。」

「むぅっ、いいじゃん!その言葉、そっくり裕太にお返しよ!ずぅ〜っとテニスばっか

 やって。テニスが恋人、なんてサムいコト言うんじゃないでしょうね。」

「言わねーよ。」

 

頭を軽く叩くと、「叩かないでよっ!」と文句が跳ねあがってくる。

 

「じゃあさぁ、裕太が付き合ってよ〜。」

「はぁっ?何がだよ。」

「デート。」

 

何でも無いようにオレの隣を通り過ぎていった寮生が一気にこちらを振り向く。

 

「ばっ、何言ってんだお前!」

「何焦ってんの?」

「いいからっ、ちょっとこっち来い!」

 

か細いの腕を引っ張って、オレは寮の外へと出た。

 

「お前な〜…あんな人がいるところで誤解を招くような発言するなよな。」

「何が?」

 

あまりに鈍感なに、オレはため息をつく。

 

「…もういい。」

「ねえ、早く行こうよ。」

「どこへだよ?」

「お買い物〜。裕太が外へ連れ出したんだから、責任とって一緒に来てよ。」

 

悪びれもしない(って、本人は悪いと思ってないからだが)はにこっと笑って、

オレの腕をぐいぐい引っ張って買い物へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、何でこんな混んでんのよ〜?バレンタインが終わったから、今が狙いどきだって

 思ったのに!」

 

近所のデパートは家族連れよりも、学生のほうでごった返していた。

 

「これじゃねぇのか、。」

「え?」

 

そこには、随分大げさなキャッチコピーで、ホワイトデーの売り出しを謳っていた。

 

「なにそれ。まだ1ヶ月もあるじゃん、ホワイトデーだなんて。」

「かったりーんだよな、ホワイトデー…。」

 

うちは姉貴が毎年気合入れて作るから(いや…美味いんだけど)きっちりお返しまで

要求されるし。

 

「かったるいって、どういうこと?」

「はあ?」

 

不機嫌な声が俺に言う。

何怒ってんだ?の奴。

 

「ふ〜ん、裕太はホワイトデーかったるくなっちゃうんだね〜。

 さすが、もてるんですね〜、裕太は。」

「おい、?」

「私、あっちのほう見てくるから!」

 

人込みをすりぬけて、は走り去ってしまった。

…ったく、何やってんだあいつは。

 

 

「探すか…。」

 

 

いつもいつも、振りまわされてばっかりだ。

喜怒哀楽が激しいだから、何かにつけて衝突する事はしょっちゅうだ。

でも、今日のはどこか変だった。

 

怒っているくせに、随分…寂しそうな表情をしていたから。

俺が初めて声をかけたあの日のような、ほっておけない表情。

 

「ああっ、くそっ。」

 

訳が分からない。

巧く言葉に出来ない「もの」が騒ぐ。

 

 

ッ。」

 

2月の寒空に白いため息を上らせる、彼女がそこにいた。

 

「…何やってんだ、お前は…。」

「何がよ…。」

「お前な、人に付き合わせておいて1人でどっか行くなよ、バカ。」

 

くしゃっ、と髪の毛を触る。冷えた感覚が手に伝わってくる。

 

「バカじゃないもん。」

「そーかよ。」

「…ごめん…。」

 

謝る必要がどこにある、と聞き返す。

は曖昧に微笑む。

 

「…買うもん買ったら、さっさと帰るぞ。これ以上寒くなったりしたらいやだからな。」

「…うん。」

 

今は、何も言わないでいい。

その寂しげな顔が、笑ってくれればそれでいい。

 

甘酸っぱい気持ち、というものを抱えながら、寮への道を急いだ。

 

 

 

「裕太。」

「なんだ?」

「…また、デートしてくれる?」

「あのなぁ…。」

 

俺はまた、の頭に手をのせて、

 

「勝手に嫉妬して、勝手にどっか行っちまうようだったら、ご免だからな?」

「ッ……。」

 

単純。俺もそうかもしれない。けど、こいつは更に分かりやすい。

 

「またな。」

「…う、うん!…またね!」

 

 

何かが変わった、二月の日。

 

風の吹いていない、穏やかな日。

 

 

 

 

 

 

それが俺の誕生日だったとが知るのは、もう少し後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

ゴメン裕太。いや、ホントマジゴメン(全部カタカナだと何語かと思うよね。)

なんか…また不発に終わりました(爆)ちょっと時間置いてまた書き直そう…。(苦笑)

いろんなところに気を散らしながら書いたのが一番いけないですね…。

誕生日にこんな酷いの書くなんてイヤガラセに思われるよう…(汗)反省しマス。

 2004・2・18 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

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