曼珠沙華

 

 

 

 

「…何やってるんです、こんな所で。」

「はい?」

 

寮の裏にある土手。女子寮と男子寮を隔てる役目もある川が流れている。

まあ、小さな川ですから、なんの役目も果たしていないというのが事実ですが。

 

そこに、見知った顔があった。

 

「…見て分からない?」

「分かりますが、どうしてその行動に至ったかという考えをお聞きしたいんですが。」

「うわー、遠まわしに遠まわしを重ねたね。」

「誤魔化さないでください。」

「まあそう急かすなって観月クン。この心優しい様が教えてしんぜよう。」

「(ムカッ…)で、何をしてるんです?」

「このお花を摘んでおりますです。」

 

さんが片手に抱えているのは、真っ赤な花。

…彼岸花だった。

 

「よりにもよって、何で彼岸花なんです?」

「あっ、彼岸花をバカにしたな。」

「別にバカにしてはいません。」

「いーや、今の口ぶりはそうだった。」

「そう思いたければ思いなさい。とにかく、僕の質問には早急に答えてください。」

 

いつもこんな感じで、彼女との会話は無駄なことが多い。

おかげで最近はあしらうのが上手くなった気がする。

それでも、無駄な会話はつきませんが。

 

「摘みたかったから。以上。で、観月クンはなぜこんな所にいるんだい?」

「人影が見えたから気になって足を運んだまでです。忙しいので、僕はこれで失礼します。」

「ちょーっとちょっとちょっと待った!」

 

さんは目の前にある川を飛び越え、僕に縋りつくような形で着地した。

 

「ねえ、も少し話し相手になってよ。薄暗いところで一人は寂しいんだよ―??」

「貴方が自分でここへ来たんでしょう。」

「いいじゃん、ね?忙しいって言っても、今朝先生から頼まれてたレポートの事でしょ?」

「…なんで知ってるんです?」

「そりゃあもう、観月クンはよく見てますから。」

「そうですか、それは光栄ですね。」

「…そこでもっと喜ぼうよ。」

「なぜ?」

「なぜって…。自分が好かれてるとかーって…思わないわけ?」

「万が一、の確率ですね。」

「…もーいーよ、冷たいやつね、観月クン。」

 

彼女は大仰にため息をついた後、手に抱えたたくさんの彼岸花を地面に降ろした。

 

「彼岸花が好きなんだよね―、私。」

「そりゃあ嫌いな花をそんなに摘む人はいないでしょう。」

「…あんたって人に聞いといて半分しか聞こうとしてないでしょ。」

「いいえ、重要な部分だけ聞こうと思っているだけです。貴方の話は、半分くらい

 無駄な部分ですから。」

「人の話を無駄だと言いきるし。」

「じゃあ早く本題に入ってください。」

 

水の流れる音と、木々の間を流れる風の音が辺りを支配する。

妙に心臓の音が気になる。

 

「彼岸花ってさ、必ず彼岸近くに咲くんだよね。」

「ですから彼岸花というんでしょう。」

「…だからさ、すごく律儀だと思わない?」

「律儀…。」

「うん。時間に正確で、抜け目なくて。憧れるなあって。」

 

 

ドクン…

 

 

 

「はあ。」

「それに、すごく華やかじゃない。すらっとした茎に、ほんわかと乗っかった赤くて

 大きな花弁とか。綺麗じゃない。」

 

 

ドクン…

 

「まあ…そうですね。」

「聞く気ないでしょ。」

「何を。しっかり聞いてるじゃないですか。」

「いや、聞いてるんだけどさー、理解しようとしていないでしょ。」

 

 

ドクン…

 

 

「理解に時間がかかるような謎かけはよしてください。」

「失礼ね。観月クンなら、分かってんでしょうに。」

「はあ。」

 

 

ドクン…ドクン…

 

 

「万に一もないんでしょ。どうせそんな事だろうと思ってたし。じゃ、私、行くから。」

 

さんは彼岸花を抱え、向こう岸へと飛ぶ。

 

「誰が…。」

 

ドクン…

 

「え?」

「誰が、万に1つもないなんて言ったんです?」

「あんた自分のいった事忘れたの!?」

「僕は、万が一、の確率って言いましたよ。」

「同じじゃない!」

「違いますよ。」

 

僕はさんの渡った側へ飛ぶ。

さんは大きな瞳が零れ落ちそうなほど瞼を見開いている。

 

「してやられましたよ、貴方には。万が一、の確率だったのに…。その『一』の中に

 入ってしまったんですからね。」

「…え?」

「ああもう…皆まで言わせないでください。」

 

そこにあった彼岸花を1輪手折って、彼女に渡す。

 

 

 

 

。貴方が好きなんです。」

 

 

僕の言葉を聞いた後、彼岸花のように頬を染める

 

「はあ…。そんな顔しないでください。…抱きしめたくなってしまうでしょう。」

「っ…でもっ…でもでもっ…嘘でしょ?」

「律儀な僕は、そんな事しませんよ。」

「!!…気付いてたの?」

「ええ、しっかり。」

「…意地悪。」

「んふっ、そんな赤い顔で言われても、可愛らしく聞こえるだけですよ。」

 

 

 

 

あの時大量に摘んだ彼岸花は、彼女の部屋で瑞々しく生けられている。

 

 

そして、僕の部屋にも1輪。

 

 

 

 

 

僕は穏やかな気持ちで見つめる。

 

 

光を受けて輝く彼岸花を、あの時のと重ねて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

……………………………………………………………………………………………………ダメダ。

うわ、もう何だこれ。彼岸花好きですよー、私。でもこの話はないだろうよ、自分。

酷い出来ですね。素敵なのは題字ぐらいだよ(爆)突発だからってわけも通用しない

ダメ文だ…。修行しよう、マジで。これはヤバイ。

 2003・3・31 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

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