出会いは突然で、衝撃的で…

 

でもそれは、かけがえのない出会い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

meet to lovers

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちびちゃん、練習再開だぜ。」

「その呼び方はやめろって何度言わせりゃ気が済むんだよっ!」

 

昔、小学生の俺は身長が低くていつもからかわれていた。顔も母親に似たのが災いして、

時に女に間違われる事もあった。

 

結構、コンプレックスだったな…。

 

「誠人、お前がセンターで…でお前がその横で…」

 

俺がただ一つ誇れるもの。それはヒップホップダンスだ。

 

まだ物心つくかどうかの頃からずっとやっていて…く踊るのが楽しくて夢中で。

昔から今も夢は世界を股にかけた一流…いや、トップのヒップホップダンサーになる事。

ダンス教室のレッスンでチビだからという理由でセンターに配置されて踊ることが多かっ

たけど、センターは重要なポジションで、そこが崩れると全体的なフォーメーションに

問題が出る…つまりは、踊りは意外に評価してもらえてた。

文句も出なかった辺りからもわかる。

 

「3、2、1、GO!」

 

踊っているときは本当に楽しい。

全身に曲がしみ込んでいって、

難しいトリックを決めた時のぞくぞくするような興奮と快感、

それに通りすがりの観客の歓声。

 

全てが俺を夢中にさせた。

 

 

「誠人、今度午後の部のやつらと合同練習があるんだけどな、どうだ?」

 

先輩からの提案。俺は実力が試せる場所にはどんどん出たがった。

それが、トップダンサーになるためのステップだと思っていたからだ。

 

「場所は?」

「ココで。…参加人数は50欠けるくらいだな。午後の部にもなかなかのダンサーもいるし、

 何しろ…っと。これはオフレコか。」

「ん?何しろ、の後はなんだよ。」

「秘密〜。お子ちゃまなおチビちゃんには教えられないっと。」

「お子様でもチビでもねぇよ!」

 

 

そう、俺はこの時、本当にまだまだガキだったんだ。

何も気づかずに、ただ、ダンスの事だけしか頭になかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと…。やっぱ結構人数いるな…負けねーようにしないとな。」

 

準備運動しながら俺は辺りを見回す。午前と午後を合わせると、人数は50人以上はいる。

 

「…ぜってー目にモノ見せてやる。」

 

決意を込めて小声で口にした後、俺はポジションを聞きにリーダーのところへ行く。

 

「なぁ、リーダー。俺のポジションは?」

「そーだな…センターに回ってもらうか。」

「よっし!」

 

ガッツポーズをする俺を見て、リーダーが楽しそうにくすくす笑う。

 

「な、何だよ?」

「いやいや、別に?」

 

なんかよく分からないけど、からかわれている事だけは察した俺は、口を尖らせながら

ポジションに着く。

 

でも、いつもならすんなり始まるのに、今日に限って遅い。

 

「…どうしたんだ?」

「誰か遅れてきてるんじゃねぇの?」

 

隣の仲間がちらっとそんな事を言う。

 

「遅れてくるのが悪いんだから、さっさと始めちまえばいいのに。」

 

俺がそう言うと、隣の仲間もくすくすと笑う。

そう、リーダーのような、からかっているような笑い方。

 

「何なんだよっ。」

「ん〜?遅くなってるのって、多分誠人のためだと思うけどなぁ…。」

「…何で俺のためになるんだよ?」

「さぁね〜。」

 

そんな事を話しているうちに、曲が始まった。

軽く踊り始めながら、徐々に気分を高揚させていく。

 

「ぅ〜!遅刻〜〜!!」

 

小さいけど、バタバタと慌てたような足音が近づいてくる。

風になびく、色素の薄いふわふわとした髪の、俺より小さい男の子。

それが…。

 

「んわぁあああ!!」

 

目の前で豪快にこけた。顔から突っ込んで…。

しかも、咥えていたパンはしっかり離さず。

 

「……大丈夫…?」

 

ビックリした、って言うのが最初。

相手を気遣うって言うより、ひょっとしたら好奇心があったのかもしれない。

こんなこけ方をする奴ってどんな奴なんだろう、とか。

よほどパン好きなのか…?とか。

 

「…う?…あーっ!!!キラキラの人!」

 

キラキラの人…?

 

「僕、鳳白 恭介!よろしくでありっ!」

 

舌っ足らずで自己紹介する相手は…細身で色白で、目がくりくりしてて…。

何でだろう。目が離せなくなる。

惹きつけられる。

 

「…俺は、清瀬 誠人。」

「まこと…?」

「そう。キラキラの人なんて言ったって俺、振り向かないからな。」

「うんうんっ!まことなっ。覚えた!」

 

その時の無邪気な笑顔。

心が妙にざわついた。

 

 

一目惚れなんて言葉すら、知らなかった。

 

 

 

実は俺と恭介は一緒の学校だった。出会わなかったのが不思議なくらい。

皆が、恭介が俺を見て憧れていたのを知って、引き合せてくれたらしい。

 

それ以来、ずっとそばにいた。

学年は一つ違ったけど、俺はいつも恭介を探して。恭介も俺を探してくれて。

 

好きだって…「そういう」対象として見るようになって…。

ずっとずっと、こんな日が続くんだと思っていた…のに。

 

 

「誠人。来月…転校しなくちゃならなくなりそうなの。」

 

 

母親がそう告げた。

 

俺が中学二年の、少しばかり夏の気配がする頃の事だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

誠人と恭介くんの出会い編・その1でございます。誠人は小さい頃、チビで女顔でした。

近所のお兄さんに連れてかれそうになりそうな可愛子ちゃんです(笑)

成長期は中3から始まって、高校2年までに20cmくらい一気に伸びてます。

現在も成長中…。ただし、女顔の残りはあるそうで、ちょっと気にしてるとか(笑)

 

 2005・9・22 結城 麻紀 拝

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