ゆらゆら揺れる水面。

 

 

光と躍る。

 

 

 

 

こぽこぽと、空気の音が周りから聞こえる。

 

普段は自覚しにくい空気の音。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水の縞模様

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はその感覚がすごく好きだ。

だから、こうして息が続くまでずっと水中に潜っている。

 

 

小さい頃はかなずちでプールが嫌いだったのに、

泳げるようになってからは水泳部に入るまで泳ぐのが好きになっていた。

 

 

プールに入ると、自分の周りにあるものが普段と違うからだろう。

小さな音や気配にも鋭敏に反応する。

 

 

 

 

ふっ、とプールサイドに人影が見えたような気がして、息継ぎがてらに水面に上がる。

そして、一緒に来たはずの友人の名を呼ぶ。

 

 

 

?」

「ふふっ、ハズレ。僕だよ。」

「周助っ?」

 

重そうなカメラをもって微笑んでいるのは、不二 周助。

小学校の頃から何の因縁か知らないけど、9年間も延々同じクラス。

いわゆる幼なじみってヤツかな。

 

「何であんたがここにいるのよ。」

「ん?今日は午後から部活だから午前は暇でさ。

 人気のない午前に校内の写真を撮りたいって思ったんだ。」

 

今日は夏休み真っ只中の日曜日。

学校にいるのは僅かな先生と盛んな部活の生徒くらい。

 

水泳部は夏場が盛りだからほぼ毎日練習してるんだけど、今日はたまたま休みで、

私は友人のと自主練に来ていた。

 

「いや、それはお好きにしていいんですけどね?何でプールにいるのよ?」

「プールの写真も撮る気なんだ。やっぱり夏場に撮っておかないと。」

「急に学校の写真を撮りたくなったの?」

「まあ…そうだね。もう今年で卒業だから、今から撮りだめしとこうかなって。」

 

 

卒業…。

そうだよね、今は全然自覚無いけど、来年の夏には、もうここにいないんだもんね…。

 

すっ、と水面を泳ぎながら、しみじみ思う。

 

「あっ、、ちょっと動いてて。」

 

突然、不二が少しトーンの高い声でそう言った。

 

「え?何で?」

「水の動いてる感じがいいからさ。」

 

それなら、と、私は軽く泳ぎ始める。

凄く柔らかい、澄んだ青色のゼリーのような水中を無心で泳ぐ。

手を伸ばすと、その周りをすぐに水がついてくる。

 

 

水を切り、その力に負けぬように泳ぐことも、

優しく、慈しむように水と戯れるように泳ぐことも時に必要だと、先生は言っていた。

私は後者の方がいい。一体になれるような、優しい感じが凄く好きだから。

 

 

「…惜しいね。」

 

潜水をしていたせいで、周助の声が聞こえなかった。

何を言ったか気になった私は水面にあがる。

 

「周助、今なんて…。」

 

プールサイドで周助の顔を見上げたとたん、

 

 

言葉に詰まった。

 

 

 

 

 

プールの中で見た青よりも、綺麗な青がまっすぐこちらを見ていた。

 

 

 

 

「周助…?」

「カメラは好きだから、それを止めようとは思わないけど…。

 こういう場面は、全て残しておきたいよね。」

 

カメラを濡れないところに置いて、ゆっくりとこっちへ歩いてくる。

熱く火照った周助の手が、私の冷たい頬に触れる。

 

「凄く綺麗だったよ、。光と水の帯の中を泳いでいく姿が、とっても。

 だから、ふいに僕の前から消えてしまいそうだった…。」

「何言ってんのよ周助、私は消えたりなんかしないっての。」

「うん…。」

 

複雑そうな微笑を浮かべる周助。

切なそうに見えたのは…気のせいかもしれないけど、でも…。

 

 

「…手、熱いね。」

「うん、今日も暑いから…。」

「プールの中、入る?」

 

思いかけない提案に驚いている周助。

 

「えっ、でも着替え無いよ?」

「惜しいなぁ。それこそ惜しいっすよ旦那。」

 

私はプールの中に仰向けで沈む。

 

 

また、周りに空気の音。

そして、遠くに聞こえるセミの声。

 

 

「…ぷはっ…。」

?」

「こうして、仰向けでプールに沈むと凄いんだよ?

 太陽を見ると、水に溶けたように光が揺らめいて、散らばって…。」

 

まるでそれは…。

優しい光の宿る、貴方の瞳のように。

 

「えい!」

「うわあっ!」

 

 

 

ひときわ大きな音がプールに響く。

 

 

「あはははっ!!」

「ちょっ…どうしてくれるの、着替え無いって言ってるのに。」

 

濡れて張りついた、色素の薄い髪をかきあげながら周助が言う。

周助を無理にプールへ引きずり込んだ張本人はけらけら笑って、

 

「大丈夫!今日天気いいからすぐ乾くって!」

「はあ…まったくもう…。」

 

とか言いながら、さっきの表情とは全然違う眩しい笑顔でこっちを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね?綺麗でしょ?」

「うん。写真に撮れないのが残念。水中カメラでもあれば話は別だろうけど。」

「い〜の。毎年こうしてプールで見ればいいんだもんっ。」

 

そう言うと、周助は

 

「なるほど。じゃあ、綺麗なものはずっとそばにおいて見ておけばいいんだね。」

「え?」

 

 

 

ちゃぷん、と水が少し波立って。

 

 

 

 

 

光も、それにつられて縞模様を描く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

撮影する事が出来ない一番綺麗なものが、心に波を立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

わー!!サムッ!!(苦笑)部活シリーズ第3弾、不二様でございます。水泳部です。

友人どこ行ったの(汗)おそらく不二とヒロインに気を使ったのでせう。(適当…)

プールの底から太陽を見上げるのは月堂が好きなんです。綺麗ですんで。あと、水独特の

模様なんかも好きなんで。つか、今日めっちゃ寒いのに真夏の話は辛い…。(汗)

だ、駄作の言い訳じゃないっすよ!!駄作は自分の実力不足です(よりダメじゃん)

 2004・3・20 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

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