「私はね、隠された紋章の村にいたのよ。」

 

オレにはもう身体がないから、泣く事はできない。

それが余計に、あるのかどうかわからない「心」を、締め付けた。

 

 

 

無対象の愛情

 

 

「…テッド。」

 

俺は知っている。がいつ、何度、オレを呼んだか。

ソウルイーターに取りこまれたオレは、誰よりも強くの心がわかる。

でも、こちらからの声は聞こえない。

 

『俺はここにいるよ。』

 

そう言っても、には聞こえる事がない。

互いに歯痒い思いをしている。

もう、何百年たっただろうな。

が活躍した解放戦争も、昔の伝説として語られつつある。

今、を知っている人といったら、あの小生意気なガキ、ルックと、

レックナートさんくらいなもんか。

 

「いらっしゃいませ。」

 

が入っていったのは占い屋。

こいつ、武将の息子だったくせに、妙に信心深いところがあるんだよな。

 

 

『テッド、夜に口笛を吹いちゃだめだよ!お化けが来るんだよ!?』

『なんだよ、お化けが怖いのか?。』

『そんなんじゃないけど…。』

『ほらほら、声が震えてるぞ。』

『だっ、大丈夫だもん!』

 

 

ついつい思い出し笑いをしてしまう。

 

「貴方、何がおかしいのかしら?」

 

え?オレ??

は笑っていないし…。

 

「そう、貴方。」

 

ええっ??ちょ、ちょっと待て、オレの声が聞こえるって言うのか?

 

「ええ。だからこうして話しかけているのよ。さん、ご覧のとおりよ。」

「テッドと…話せるって言うのは本当なんですね。」

「もちろん。」

 

おいおい、オレ一人話について行けてないんだ、どういう事か説明してくれよ。

 

「ごめんなさいね。テッドさん。私の名前は。職業は占い師なんだけれどね、

 時々霊媒士みたいなこともしているわ。」

 

にしたって、オレは単にこいつへ乗り移っているわけじゃないんだぜ?

一介の霊媒士がオレの声を聞けるとは思えねえんだけど。

 

「そうね、普通の人じゃあね。何せ私は貴方より年上よ?」

 

オレより…。オレは、もう400年以上生きてるんだぞ。

 

「知ってるわ。ソウルイーターを所有していたんだものね。」

 

!?あんた、何もんだ?

 

「あんたじゃなくて、。…私はね、隠された紋章の村にいたのよ。

 私は出生の時から奇怪だといわれていたの。ある日、紋章のようなものが、母の

 お腹へ入って、私が出来たの。村の人々も首を傾げていたわ。

 そして、私が生まれると、皆驚いた。

 

 まだ、ほんの10センチ足らずの小人みたいな赤ん坊が生まれたんですもの。

 

 だからといって未熟児ではなく、ちゃんとした体つきでね。

 それから、少しずつ、長い年月をかけて大きくなっていたのよ。

 そしてあの、村が襲撃された日。

 

 私は地下に逃げ込んだわ。そうしたら、隠し扉があって、そこから逃げる事が出来たの。

 まだその時は三十センチぐらいの身長だったから、姿をくらます事が出来たわ。」

 

そんな話、聞いたことが無かった…。

 

「そうでしょうね。貴方が生まれるずっと前だもの。」

「テッド…聞こえてるの?」

 

ああ、聞こえてる。

 

「聞こえてる、って言ってるわ。」

「…テッド、よかったね。同じ故郷の人が、見つかって。」

 

ああ…。

オレにはもう身体がないから、泣く事はできない。

それが余計に、あるのかどうかわからない「心」を、締め付けた。

 

「じゃあ…貴女は信頼できるんですね。」

「もちろん。例の件も、しっかりお任せください。」

 

例の件?

ちょっと待て、、もう少しこの人と話したいんだけど…。

 

さん、テッドさんが、まだお話したいとおっしゃるので、これをお持ち下さいな。」

 

水晶球?

 

「ええ、これを持っていれば、離れていても私と話せますから。」

 

…分かった。

 

 

不思議な感覚だった。

にこりと寂しげに微笑む、あのという人が、オレの中に強く残った。

 

『あら、早速なのね。』

 

優しくて、哀しそうな声。

何故だか分からないけど、胸の辺りが熱くなる。

 

『聞きたいことがある。』

『ええ、何でも。』

は、あんたと会って何がしたいんだ?突然、こんな事実をつきつけて…。』

『…逢いたいんですって。貴方に。』

『無茶言うな、俺はソウルイーターに飲み込まれているんだ。

 こうして話すのだっていつ出来なくなるか…。』

『だからこそ、いまやっておきたいんです。』

『それがまたあいつに、暗い影を落とすとしても?』

『何を恐れているんです?』

 

凛としたの声。

 

さんを悲しませたくないから?それとも、自分が苦しむのが怖い?』

『…っ。』

『…私は、嬉しかったわ。』

『何が。』

『テッド、貴方に逢えた事。…不思議ね。

 ずっと昔から貴方を知っていて……恋焦がれていたような気持ちよ。』

 

急に、そんな事を言われるから照れくさくなる。

 

『…一度でいいのよ。それだけで、思いを昇華できるとは限らないけれど、何かしら

 きっかけは掴めると思うわ。』

 

…。

分かった。俺も会いたくないわけじゃないしな。

 

『そう…なら良かった。』

 

でも、会うってどうやって…。

 

と、聞こうと思ったら、一方的に話は終わらされた。

何にせよ、明日…。

全て、分かるしな。

 

そう思って俺は、眠るふりをする為に瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

テッド君主役ドリー☆でも、1話におさめきるつもりだったのに気付いたら続き物に

なってしまったよ(汗)これはカップリングかドリームかどちらかお好みで選べる様に

したいと思います、はい。私は選択肢を作るのが相当好きらしいです。人それぞれで

選ぶ道が違ってもいいんじゃないかなぁ。なんて思ったりしちゃうんですよね。にしても

微妙な仕上がり。もう少しテッド君を出張らせたかったのに、ヒロインが多い。

もう一作かこうかなぁ…(まだ懲りていない自分。)

 2003・1・3 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

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