「期限は今日一日。貴方が本当に逢いたい人の元へ行けるように念じてね。」

 

オレは、神妙な気持ちでその瞬間を迎えた。

 

 

 

 

無対象の愛情

 

 

 

 

『オレを生き返らせる?そんなの無理に決まってるだろ!?』

 

ついつい俺は声を張り上げていた。

まあ、その声はにしか聞こえないんだが。

 

「ああ…そんなに大きな声を出さないで。水晶球が壊れてしまうわ。

 だからね、生き返らせる事はいくらなんでも私には無理よ。私は貴方を生き返らせる

 のではなくて…。何て言ったらいいんでしょう?…そうね、貴方の時を元に戻す。

 ソウルイーターに取り込まれる前の貴方に。」

 

取り込まれる前の俺に?

取り込まれる直前の俺は、ウインディの魔法にかかっていた…。

その状態に戻るってことか?

それだったらお断りだ!

 

「記憶もろもろは、今の貴方のままよ。安心して。

 だから、今逢いたい人のところへ行けるの。」

 

そこでは言葉を切って、

 

「でもね、色々と制約があるの。その力は今日一日しか続かないわ。

 それに、逢える人は、ただ1人。それ以上の人と逢ってしまえば貴方の魂は消費されて、

 消滅してしまうわ。」

 

それでも、やる?

そう尋ねて来た

 

ったく…のヤツ…俺が居ないとダメなんだからよ。

 

とか言いつつも、オレは本当に嬉しかった。

 

『頼むぜ、。』

「…分かったわ。さん、彼は了承したわ。

 いい?期限は今日一日。貴方の、この世で最後にいた地へ飛ばされるから。

 そこから、貴方が本当に逢いたい人の元へ行けるように念じてね。」

 

が何やら呪文を唱え始める。

俺は目を瞑り、神妙な気持ちでその瞬間を迎えた。

 

ソウルイーターの中での、最後の記憶は…

 

 

 

 

 

の優しい微笑と…

 

 

 

の不安そうな顔だった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……。」

小さな隙間から覗く太陽からの光を、水晶分の多い谷はキラキラと乱反射させて、

辺りを神秘的に照らす。

 

「ここは…シークの谷…。」

 

オレが最後に、と話した場所。

そこは相変らず綺麗な場所で、月下草の小さな蕾がそこかしこに見受けられた。

 

水晶分の多い岩石の表面に映ったのは、あの時と変わらない俺の姿。

 

「すげぇな…。」

 

ぺたぺたと自分の身体を確認する。

ふと気になって、右手の手袋をはずす。

 

そこに、あの禍禍しいほど黒い紋章の姿はなかった。

 

「…当たり前だろ…あの紋章は、今が持ってるんだから…。」

 

ふっ…と思い出したのは、

さっきのの顔。

泣きそうなくらいに不安げな顔。

 

 

それと同時に思い浮かんだのは、

の、慈愛に満ちた微笑。

出会って間もないのに、奇妙な親近感を感じる、同郷の人。

 

 

 

 

 

オレの、今一番逢いたい人は…。

逢いたい…人の元へ…。

 

 

 

 

 

 

 

あいつのこと…やっぱりほうってはおけないな。

 

この感情を知るために、「オレ」として逢いたい…。

 

 

 

 

 

 

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