暑い夏の若葉

 

 

 

 

今年私は、青春学園テニス部マネージャーとしての三年目の夏を迎えた。

三年目ともなると、流石に馴れたもので雑用をこなして行く。

しかし。

冷夏だった去年とは違って、五月の時点で30℃を越すような猛暑。

いくら(自称)敏腕マネージャーとはいえ、そりゃばてるってモノで。

 

「暑い!暑すぎる!ちくしょー、温暖化のバッカヤローめぃ!」

 

水道で濡らしたタオルを頭に被りながら、憎々しいほどに照りつけてくる太陽へ私は

だだっこのように文句を言う。

 

…少しは静かにしろ。」

 

手塚が眉間のシワの数を増やしてため息をつく。

 

「だって!暑いんだもん。手塚だって暑いでしょうが。」

 

つか、ジャージ脱がないでいるところあたり、強者だわ…。

 

「騒ぎ立てる程ではないだろう。」

 

むきー、なんっか腹立つー。一人涼しい顔しちゃってさ!騒ぎ立てるほどのもんなの!

私はもうなりふり構わず体育着の袖を捲り上げてノースリーブにしてるんだから。

ああ…また焼けてゆく。私のかつての色白美肌はどこへやら。

 

、ドリンクの用意をしてくれ。」

 

乾がぬっとやってきて言う。

背が高いからそういう事されるとマジでビックリするんですけど。

 

「乾…あんたも平気そうな顔してるわね。」

「ん?ああ。は暑いのが苦手だったね」

「苦手も苦手、大っ嫌いよ。」

 

文句を言いながらも、私はドリンクの用意をする。

 

「はい、菊ちゃんのぶんね。大石はこっち。こっちはタカさんので…これは不二のね。

 ああっと、桃ちゃんの。海堂と、乾も。越前は…早々に自分の持ってったのね。」

 

私はなれた手つきで全員のドリンクを配り歩いて行く。

 

「はい、手塚…。」

 

手塚にドリンクを渡そうとしたその時、ぐらっと地球が揺れた気がした。

 

?」

「な、に…?」

「何、じゃない。ぼーっとしていると怪我をするぞ。」

 

あー、ぼーっとしてたのか、私…気をつけなくちゃね。

 

、これクーラーボックスに…。」

 

んー、誰か話し掛けてる…?誰だろう…分かんないや。

 

…おい…どうした?」

 

遠くで誰かが喋ってる…。

答えなくちゃ…。

 

「大丈夫か…!?」

 

何か、地球が回ってる…。

ううん、地球が回ってるのなんて分かんないし…じゃあ私の目が回ってるのか…。

 

っっ!!」

 

うー?この声って、

 

 

 

 

手塚の声?

 

 

 

って…呼んでたよね。

 

 

 

こんなに焦った手塚の声、初めて聞くかも…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さわさわ…と、爽やかな葉擦れの音がして、

草の青臭さとアスファルトの焼けた匂いとが私の鼻腔をくすぐる。

うっすらと目を開けると飛び込んできたのは木漏れ日の優しい光と、手塚の顔…。

 

「って、手塚!?」

「っ、いきなり起きるな…!」

 

手塚の忠告も一歩遅く私はまた芝生に倒れ込む。

 

「はにゃにゃ…。」

「全く…。」

 

手塚に手を貸してもらってゆっくり起き上がる。木の幹によりかかって、

 

「私、倒れた…の?」

「ああ…平気か?」

「何とか。まだ少しくらくらするけど。」

「…大丈夫なら、いいんだが。」

 

暫くの沈黙。

でも、嫌な沈黙じゃなかった。

 

静かな時がゆっくり流れていく。

と、風にのってストロークを打つ音が聞こえた。

…練習してんじゃん!?皆!!

 

「手塚、練習!私なんかに構ってる暇はないってば!」

 

私が急かしているのに、手塚は気に留める様子もなくゆうゆうと、

 

「部員たちには練習をさせている。」

「そーじゃなくて!手塚、部長なんだから。ほら、私は大丈夫だからさ。」

「いや、こうなったのは俺の責任だ。」

 

いや、責任は私にあると思うんだけどな。

自分の体調管理できてなかったわけですし。

 

「私はほっといてもいいから。」

「放ってなんておけるはずがないっ!」

 

急に声を荒げて手塚が私をじっと見つめた。

本当に心配そうな目をしている手塚は、何だか新鮮で、照れ臭かった。

 

「手塚…。」

「…すまない、騒いでしまって。」

「いいよ。それだけ私の事心配してくれたんでしょ?ありがと。」

「いや…構わん。」

 

あらら、またいつもの仏頂面だし。

 

「さ、手塚、練習に戻りなよ。」

…。」

「私もすぐ行くから。ほら、部長がいなきゃみんな覇気が出ないって。」

 

強引に手塚の背中を押してコートへ向かうように促す。

 

 

 

。」

 

「ん、何?」

 

 

 

 

「…いや、なんでもない。」

 

頭に?マークを大量に付けている私に気付いた手塚が振り向いて、

 

「無理は…してくれるなよ、。」

「っ…!」

 

心配そうなのだけれど優しい、柔らかな表情の手塚に、見とれてしまった。

 

「…無理せずに、ゆっくりと来い。」

 

ぶっきらぼうというより不器用な、彼らしい台詞に、嬉しさと

小さな炎のような初めての感情を感じる。

 

「…うん。」

 

暑い夏も負けてしまうくらいの熱情になる予定の気持ちを抱いて、

私はゆっくりと彼の待つコートへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

喧嘩売ってません。すいません。真面目に生きてます(嘘)…手塚じゃねえ!!

なんだこいつ!なんだこいつ!!なんだこいつ!!!男蛸何時!!!!(お前が何だ)

もう自信半分喪失気味です。王道を走ろうと思ったくせにどこかひねくれてますね私。

夏は嫌いです。でも、手塚に看病されるならちょっといいかも。とか思ってくれたら

幸いです(どんなじゃ)。とにかく修行の旅(!?)に出よう。

 

 2003・5・19 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

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