着物の裾を翻し

 

貴女と歩く夜半の道

 

 

 

 

凛と響くは風鈴が

 

夜風に吹かれ鳴く音で

 

 

 

二人戯れ歩く道

 

月の明かりが鳴いている

 

 

 

 

 

 

 

 

 夏の夜の誓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「縁日なんて久しぶり♪凄く楽しかった〜。」

 

色紙の美しい風車を回しながら、はボクに微笑みかける。

その様子をボクは目を細めて見つめる。

 

「そうだね。堤燈の灯りが並んで点っているのも綺麗だったし、それに…。

 の浴衣姿も、綺麗だったよ?」

 

にっこり微笑んで言うと、小さく「馬鹿」と呟いて、着物の裾を翻し先を行く。

ボクは笑ってゆっくり彼女の後を追う。

は、ああしていながらもボクの方に気を向けているのが分かるから。

 

 

 

彼女はふと何か思いついたのか立ち止まり、空を見上げる。

 

 

「大文字焼き…きちんと都の方から見てみたいなぁ…それか、おっきな花火!」

「花火?あぁ、舶来ものの火薬球のこと?」

「うん!」

 

カラカラと下駄を鳴らして少し先まで走り、大ぶりに手を振って見せる。

 

「1度だけ見たわ。江戸城からどーんっと上がるのを!凄いのよ、それが。

 お腹にびりびりと響いて、夜空にこんなに大きく赤や青や黄の火の粉が広がるの!」

 

くすりと笑って、ボクは相手のもとにゆっくりと歩み寄る。

 

「その火の粉、危なくないの?」

「そりゃ、近くで見れば危ないわ。でも、少し遠くから見るのがいいんですって。

 本当に夜空へ花が咲いたようだったのよ。」

 

嬉しそうに語らう彼女の頭を撫で、そっと髪を梳く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、幸村。」

 

ボクは名前を呼ばれて、ゆっくりと目を細めて相手を見つめる。

 

「ん?な〜に?」

「また、こっそり山を降りて都に行こうよ。一緒に大文字焼き見よう?」

 

くいくいとボクの着物の袖を引っ張ってくる姿が、何だか不思議にいじらしくて、

ボクはその細い身体を抱きしめる。

 

「きゃあ!?ゆ、幸村…。」

 

 

 

、いつか大きな花火を見ようよ。空を焦がすほどの、大輪の花火を。」

 

 

ボクがそう言って微笑むと、はわずかに頬を染めて頷く。

 

「…約束だよ?」

「うん、約束v指切りする?」

 

ボクが小指を出して尋ねると、彼女はその白くて細い小指をボクの小指に絡めて

 

「指切りけまん、嘘ついたら針千本飲まそっ…指切った。」

 

京の訛のある言葉で指切りをすると、嬉しそうに微笑んだ。

 

 

そのまま抱きしめていると、ゆっくり相手が身体を凭れさせてくる。

その感覚が愛しくて、抱きしめる腕に力を込めようとした時。

 

 

 

チリリン…

 

 

ぱっ、と相手が慌てて身体を離す。

音の正体を見つけようと見まわすと、近くの家の軒先に、風鈴が下がっていた。

涼やかな音色を奏でているそれを見て、くすりと笑う。

 

、風鈴の音に驚いたの?」

「ちっ…違うもんッ!」

 

恥ずかしいと耳まで染まる正直な彼女の性格が、ボクの表情を自然と緩めてしまう。

結い上げた黒髪がほつれて少し耳にかかり、どこか艶めく。

 

「風流だね。風鈴だなんて…。屋敷にも吊るしてもらおうかな。

 ボクは江戸風鈴より京風鈴の方の音色が好きだから、新調しようかな。」

 

彼女は花が綻んだような笑みを浮かべて、

 

「それなら、七条の風鈴屋さんがおすすめ。透明な彩色が綺麗なの。

 お東さんから上がって行くとすぐ分かるわ。見世棚に沢山の風鈴があるから。」

「それなら、に案内を頼むよ。…一緒に行こうねv」

 

ボクが言うと、嬉しそうに微笑んで何度も頷いてくれる。

 

…可愛いなぁv

 

 

 

 

 

「幸村、早く早く!」

 

 

 

 

この笑顔を失いたくない。

心からそう思う。

 

 

 

過去にも、そう思いながら出来なかった…。

 

 

 

今も残る後悔。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2度と、あんな思いはしたくないし……させない。

 

 

 

 

 

 

「幸村?」

 

「うん?」

 

「なんだか、ボーっとしてたみたいだったから…。」

 

 

 

 

 

 

相手の手を取り、そっと頬に当てる。

細い身体。

 

その全てを。

 

 

 

 

守り通すと…誓わせて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「月明かりに浮かぶ、の姿に……見惚れていただけだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君だけを、愛しているから、ねv

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

……結局何が書きたかったんだか…(オイ)何だか中途半端なものになってしまった

気がする…うん。(気のせいじゃない辺りが何とも…/泣)多分、ひたすらいちゃつかせ

たかったんだと思う。あと、花火が舶来モノだって言うのも書きたかった…。

解説として舶来=外国製のもの。指切りけまん=指切りげんまんの事。昔はこう言って

いたそうな…。お東さん=東寺のこと。上がる=内裏(北)の方から順に一条…となって

いるので、北の方に向かう事。逆は下がるデス。天気とかでも北上、南下といいますよね。

そんな感じで…。

 2004・8・9 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

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