初めて出会った場所で、また出会う。

運命なんて信じちゃいないが、こんな『偶然』もあっていいか、と思う。

 

「オデッサ!?」

 

思わず俺は彼女をそう呼びとめていた。

髪は黒色で、オデッサとは全然違うのに、なぜか俺はそう叫んでいた。

雰囲気が…彼女の纏う気が、オデッサに似すぎていたんだ。

 

 

 

 

面影

 

 

 

 

 

「そう、貴方のお知り合いに似ていたんですか。」

 

勝手に勘違いをしたのに怒るでもなく、彼女は微笑んで許してくれた。

彼女の名前は

グレッグミンスターの外れに住んでおり、家畜を飼って生活しているらしい。

「あの女」とはまったく違う環境で育った彼女。

それなのに、何故こんなにも…似ているのだろう。

 

「すまないな。くだらない事で呼びとめてしまって。」

「いいえ、いいんですよ。この前も、グレッグミンスターの国境警邏隊長の…バルカス

 さん…って言ったと思うんですけど、その方に呼びとめられたんですもの。」

「バルカスに?」

「お知り合いですか?」

「ああ、まあな。昔…ちょっと縁があってな。」

 

…らしくもない単語を使っちまったな。

縁って言葉にいい思い出がないんだ。

 

「ふふ…。いいですね。私、縁って言うものがなくて。今までずっと父と

 2人きりで暮らしていたから…。」

「じゃあ、今日初めて、縁が出来たって事か。」

「そうですね。ありがとうございます、フリックさん。」

「礼を言われるような事じゃないさ。それに、さん付けなんてがらじゃない。

 フリック、でいい。」

 

訪れたの家は申し訳程度の広さで、貧しい事は一目瞭然だった。

でも、はそんな事をけして口には出さない。

いつもにこにこと微笑んで、休む事無く働いている。

その意思の強さは、やっぱり…あの女に。

オデッサに…。

 

「その、オデッサさんって、どんな方なの?」

 

あれから俺は、ちょくちょくを訪ねるようになった。

彼女は変わらず俺を温かく迎えてくれたが、心には引っかかっているらしい。

自分に似た、オデッサという女性の事を。

 

「あ…その、だな。」

「その剣…オデッサって名前だったわよね。」

 

何といっていいか分からない。

俺は言葉に詰まる。

 

 

 

の瞳が、揺れていたから。

 

 

 

「いいの、正直に…言って。…好きな方だったの?」

「……好き…だったのかな…。俺も、どうなのか分からない。」

 

オデッサは、俺の『憧れ』だった。

いつも凛としていて…綺麗という言葉が、ぴったりの女性だった。

 

 

 

 

けど、どうしてだろう。

あんなに憧れていたのに…。

 

 

 

 

もう、顔がぼんやりとしか思い出せない。

声も…よく、わからない。

 

 

 

 

 

くすんだ写真を見ているような…。

どこか、遠い記憶。

 

「フリック…?」

 

が、俺の名前を呼ぶ。

 

 

オデッサに似た、彼女が…。

 

 

 

 

 

 

 

いや、

 

 

 

 

 

 

本当にそうなのか?

 

 

 

 

 

俺の思い込みだけで…。

 

 

 

はオデッサに似ていないのかもしれない。

 

『人は生まれ変われるってホントかな?』

 

あの台詞を言ったのは、誰だったか。

 

『フリックさんは、信じる??』

 

ああ…そうだ。

リオウ…だ。

 

「俺は、信じないかな。」

 

その時に…たしか、ティルもいたな…。

俺の答えに、肩を竦めて、

 

「やっぱりね。フリックはそう言うと思った。」

「リオウは、信じてるのか?」

「うん、まあね。ゲンカク爺ちゃんが言ってたんだ。人は、魂が永遠にこの世と

 あの世を行き来してて、何度でも生まれ変われるんだって。」

 

俺は、つい口に出してしまった。

ティルがいるっていうのに…。

 

「魂がなくなったらどうなるんだ?」

 

しまった、と思ってティルの方を向くと、ただ哀しげに笑うだけだった。

 

「さあ?生まれ変わらないんじゃない?」

 

リオウは純粋にそう答えた。

ティルの…「あれ」の事を知らないからだろう。

もし知っていたのなら、この優しい少年は答えないだろうから…。

 

 

 

 

オデッサの魂は、生まれ変わる事はない。

 

…多分。そうだろう。

 

ティルもそれが分かっていて、あんな哀しい顔をしたんだ。

 

だから、はオデッサじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

分かりきってたはずなのに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

胸が騒いでくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フリック!!?」

 

 

俺は、その場を走り去っていた。

何でだろうか…。

 

 

 

 

罪悪感……?

 

 

に対する…?

 

 

 

 

 

彼女の声が聞こえなくなっても、俺は何かに追われる様に走っていた…。

 

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送