One Of These

 

 

 

真剣勝負。

まさにその言葉通りの試合。白刃と白刃がぶつかり、金属質な音を響かせる。

 

「甘いなっ、!」

「くっ!」

 

剣がはたき落とされ、地に刺さる。

 

「…やっぱりまだ勝てない…。」

「諦めろ。そもそもは女なんだから、体格も力も違うんだ。

 俺にかなうはずがないだろ?」

 

シードの言葉に、思わずムキになって反論する。

 

「絶対かなうはずなくないわ!出来ないことなんてないの!」

 

私の言葉を聞くと、シードは一瞬目を見開いて驚き、

 

「くっくっく…ははははは!やっぱりお前変わってるよ。普通の女じゃないな。」

「当たり前よ!そのへんの女と一緒にしないで。」

「分かったって。負けず嫌いなんだからよ。」

 

肩を竦めて笑う。

と、そこで一人の兵士がやってきた。服装からして伝令係なんだろう。

 

「シード様。皇王様がお呼びです。急ぎ会議室までご足労願います。」

 

その声を聞くと、シードの顔がすっと「猛将・シード」の顔になる。

 

「分かった。じゃあまた後でな、。」

「…うん。」

 

ハイランドはどちらかというと男尊女卑の社会。どうしても女の立場は弱い。

私がどんなに頑張っても、どんなに実力があっても、シードと肩を並べられる事はない。

 

「宿舎へ帰ろう…。」

 

誰に言うでもなく一人呟いて、私は剣を持って宿舎へ向かった。

 

 

 

 

 

 

『将来、何になりたい?』

『そうだな、俺は大金持ちにでもなりたいな。』

『きゃははっ、なにそれ!大金持ちになってどうするのよ。』

『うるさいな。じゃあは何になりたいんだよ。

 お姫様、なんつったら笑い飛ばしてやるよ。』

『違うわよ!私は戦士になりたいのよ。』

『そう。戦士。男とでも同等に戦える戦士。アマゾネスって言うらしいんだけどね。』

『ふーん。まあいいんじゃねぇの?お前らしくて。』

『ちょっと、それどういう意味?』

『まんまの意味。ククク…。』

『あっ、こら待て、シード!!』

 

 

 

あの頃は、日々がとても楽しかった気がする。

もちろん、今も楽しくないなんて事はないけれど。

今は自分の夢も叶って、ハイランド第4軍の部隊長を任されている。

それでも、シードに追いつく事なんて叶わない。

 

「はぁ。」

「どうしたんだ、あんたみたいな年頃の子がため息つくなんて。」

 

宿舎の掃除を担当しているバーネットさんが、私の様子を見て肩を竦めた。

 

「バーネットさん…。」

「俺じゃ話しにくいかい?」

「いえ…。」

 

私はバーネットさんにほとんどを話した。

夢の事も、

自分自身の事も、

そして…シードの事も。

 

「そうか。なるほど…。まあ確かに、女にゃ生きにくい世の中だからな。」

「…それは、わかっていたんですけど、やっぱり、理想と現実は違うなあって。」

「でも、諦める気もないんだろう?」

「そりゃそうです。やっと掴みかけた夢なんですから。」

 

そう言うと、バーネットさんは豪快に笑った。

 

「はははは!ちゃあんと分かってるじゃないか。なら大丈夫だよ、

 夢があるってのは、それだけで強くなれるもんだ。」

 

バーネットさんは昔、軍に入っていたこともあるという。

でも、夢が足りなかったんだ、と哀しく笑って見せた。

 

「…私は…。」

 

夢が、本当に足りているんだろうか。

でも、足りていると信じたい。

そうすればきっと強くなって、シードにもひけを取らない将に…。

 

「侵入者だ!!捕らえろ!!」

 

ガシャガシャと騒々しい鎧の擦れる音と、喧しい兵士達の叫び。

ザアッ、と鳴っているかのごとく、緊張が全身を駆け抜ける。

 

「剣…ッ!!」

 

剣は自分の部屋においてきてしまった。

持っているのは護身用の帯剣。

長剣とはいえ、あまり使い勝手のいいものではない。

しかし悠長に部屋に戻っている暇はない。結構な手だれが数人。兵士も押され気味だ。

 

「…ッ!!」

 

そうこうしている間に、敵との間がなくなってきた。

仕方なく帯剣を抜き、応戦する。

相手は男。力では勝てないことくらい分かっている。

ならば…。

 

「ぐうっ!!」

 

うめいて男が倒れ込んだ。

しゃがんで足払いをかけ、そのまま切り伏せたのだ。

そこまではよかった。

 

「あぶない!!」

 

誰かの叫ぶ声。視界が翳る…しまった…。

 

 

 

熱い血潮が背中に広がるのを、私は霞みがかった意識の中で自覚した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…。」

 

目が覚めたのは、白い空間。

救護室だった。

 

、目が覚めたか!?」

 

慌てた風に私を呼ぶのは…。

紅い髪の…紅い、瞳の…。

 

「シード!?」

「バカ、慌てて起きるな!疵が…。」

「うっ…いたたたた…。」

「だから言っただろ…ほら、ゆっくり…。」

 

シードの手を借り、ゆっくりとベッドに横たわる。

 

「…どうして、シードが…。」

「いちゃ悪いのかよ。」

「そうじゃなくて…。」

「…お前が斬りつけられたって聞いて…慌てて走っていったんだ。そしたらお前、

 倒れてるし…。」

「うっかりね…。」

「うっかりってお前な!!1歩間違ってたら死んでたかもしれないんだぞ!!」

「そうだけど!そんな怒る事はないんじゃない!?あそこで私が応戦しなかったら、

 他の誰かが死んでいたかもしれない!!それに、今は戦争中なの、いつ死んだって

 おかしくない世の中なのよ!」

「っ……!」

 

シードは言葉を失い、そっぽを向いた。

ちょっと言いすぎたかな、と思ってフォローの言葉を発そうとしたその時。

 

「悪ぃ…俺…お前に当たっちまって…。」

「え?」

「…悔しかったんだ、自分が。猛将だとか何だとか言っておきながら、こんな時には

 なんの役にも立ちやしねえ。…守りたい人ですら、ろくに守れてない俺が。」

「シード…。」

「すまない、。」

 

ばっ、とシードが頭を下げた。

何だか居心地が悪くて、目を逸らす。

窓ガラスの向こうで、事態の収拾にあたっている兵の姿が見えた。

 

「…俺、斬られたのがお前じゃなきゃあの場にかけつけなかったかもしれない。

 卑怯だよな。お前さえ無事でいてくれりゃそれでいい、なんてよ。

 はっ…将として失格だな。の方がよっぽど、将の器を持ってるぜ。」

「そんな事…。」

「でも、ホントに安心した。が無事で。」

 

シードは、笑ってた。

窓ガラスに映った姿だから、うっすらとしか見えないけど。

 

…そのまま、こっちを向かなくていいから、聞いてくれ。

 俺は、が好きだ。だから、お前を守りたくて…将になった。

 でも、今日なんかこのザマだ。でもな、お前を想う気持ちは、本物だから。

 …守らせてくれ。お前を。」

「……。」

 

じわっ、と熱いものが込み上げる。

息を飲むのに、喉が痛い。

 

「…守られたりなんか、しないもの。」

…。」

「私も、シードを守りたいんだからね?」

 

あそこで誰かが死んでいたかも…なんて、綺麗事に過ぎない。

私だって貴方がいなくなったらとおもってて…。

 

「…シードが、好きなんだから。」

 

振り向くと、シードは照れながらも、優しい笑みを浮かべていてくれた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

ありきたり駄文!!(ぐはっ!)シードを書きたくて書いたにはいいけれど……。

あたいがバカでした。素敵な幻想キャラを短編で全て言い表すなんて出来なかった…私の

駄文じゃ…(泣)シード好きなのに…。(ハイランダー)やっぱり連載モノにすれば

よかった…。そうすればこんなキツキツにならなかっただろうに…。

思い付きで書いている自分が悪いんです、プロット立てない自分が悪いんです

分かってます……。これからもっとちゃんとプロット立てよう…。(今更)

 2003・3・5 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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