「美鶴先輩…。」



下駄箱は靴を入れる所であって、ポストでも何でもない…。


そんな言葉をいつだったかどこかで聞いたことはあるけど。


こんなにも色々なものが詰め込まれた下駄箱を、僕は初めて見た。



「手伝いましょうか?」


「…すまない、頼めるだろうか。」


「いいですよ。これじゃあ帰れないし。」





行きよりも多くなった荷物を肩代わりし、俺たちは一緒に下校する。




















only one



















「何故私になのだろうな。日本では通常女性が男性にチョコを贈るものだろう?」


「まぁ…そうなんですけど。」



それはきっと、この人が女性の憧れの象徴のような人だからだろう。




才色兼備で、誰に対しても自分の主張をはっきり言い、媚びることはない。



男性だけでなく、女性をも惹きつける魅力にあふれていることを、この人は気づいていない。





「そう言えば、ゆかりと風花にもチョコレートをもらったのだが。」


「ああ…友チョコってやつですかね。」


「と、友チョコ…?」


「知らないですか?友達同士でチョコ送りあうんですよ。」


「…まるで歳暮や中元のようだな。」



随分と大人びた…この人にとっては大人との付き合いが多いから仕方ないが…バレンタインの解釈。


「男同士はそんなことしないんで、女の子特有じゃないですか?」


「そうか。…は、貰ったのか?」


「え?」


「女友達とか…多いだろう?は。」


思ってもみない返事に、足元へ落としていた視線を彼女の方に向ける。



いつも毅然として、こちらが目を逸らしたく程まっすぐ見つめてくる彼女だが、目線が合わない。


恥ずかしがっているのは分かり易いぐらい分かってしまうけれど、


彼女はこれで必死に隠しているつもり、なのだ。



「義理チョコは。余りとかを適当に詰めてもらうのは何個かありましたけど…


 俺がよく食うの知ってるからくれただけで。」



最近気づいたことだけれど、俺は体の割に食べる方らしい。


確かに末光先輩と一緒にご飯に行くけど、その後またすぐお腹が減るし…。


というか、基本的に貰ったら食べる。そんな感じだから別段男の甲斐性的なものを感じない。


でも。



「…先輩は、くれないんですか?」



小首をかしげてわざと甘えてみせる。


美鶴先輩は、困っている人を見逃しておけない人だから。


そう、すごく女性らしい、母性にあふれた人。





俺の大好きな…女性。






だから、彼女からの『特別』が欲しい。





「わ、私からか?」


「はい。俺、先輩からのチョコが一番欲しいです。」




ストレートに、シンプルに。はっきり言うと美鶴先輩は真っ赤になる。


可愛過ぎて、抱きしめたい衝動に駆られるくらい。



「ダメですか?」


「そ、そう聞くのは卑怯だぞ、っ。」


「卑怯でも、どうしても先輩から欲しいんです。それとも、もうほかの人に


 本命あげちゃったとかないですよね…?」


「そんなわけがないだろうっ。」




鞄を開けてずいっと、乱暴にというか…投げやりに?


恥ずかしさでいっぱいの彼女が渡してきたのは、彼女らしい高級感ある包みに、


赤いリボンが掛けられている。



「用意してくれてたんですね?嬉しいです。」


「…確信犯だな…。」


「人聞き悪いですよ、それは。期待してたってことですよ。」




知らず知らずのうちに、口元が緩む。





「…美鶴。」





「っ…な、何だ…。」




「…大好きです。」





今度は耳まで真っ赤になった美鶴先輩を見て、逆にホワイトデーがまた楽しみだ…と思う。
















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後足掻き

バレンタインというかホワイトデーのタイミングでUPとかすいませ…!

ケンカ売ってないです。すいません。

そんなわけでホワイトデーのSSも考えてますがもしかして一カ月遅れとか…

あるとおもいまs


   2009・3.1  月堂 亜泉 捧






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