夏
の日、夜、想い
夏のうだるような日差しにいい加減へばった私は、部室でぐてぐて転がっていた。
「観月先輩、合宿しようよー。」
私は氷水を飲みながら、パソコンに向かっている先輩に言う。
「何で合宿する必要性があるんです?スクールで充分ですよ。」
「だって合宿楽しいじゃん。スクールに宿泊施設あるしー、ね?」
上目遣いの私を一瞥してから、
「可愛こぶってもダメですよ。」
観月先輩の強情さに私は口を尖らす。
「何を話してるんだ?二人とも。」
一通りのメニューが終わって、お昼を食べるために、皆が部室に戻って来た。
「あっ、皆、あのね、合宿しよーよ。」
「「合宿?」」
皆が声を揃えて疑問の声を上げる。
「そう。楽しそうでしょ?いいっしょ?」
「楽しさで合宿はするものじゃないぞ…。」
「合宿かぁ…。」
部長はそう言ったけど別に反対する気はないみたい。
ノムちゃんも満更でもないらしい。
「くす…でも、いいんじゃない?」
「うんうん、やりがいありそうだーね。」
木更津先輩と柳沢先輩は楽しいことは大体賛同してくれる。
「俺はやっても構わないっすよ、観月さん。」
「うん、俺もいいと思います。」
裕太と金やんはテニスが上手くなるためなら色々やる方。努力家なんだよね。
だから性格が正反対に見えても仲がいいのかな。
「ほらー、いいっしょ観月先輩。合宿合宿〜行こう?」
観月先輩は少し考え、
「そうですね…コンディションの面から言っても、合宿してもよい頃合いでしょう。」
「やったーっ!ナイス素敵観月先輩!」
「調子いいですね、は。」
「調子は抜群だよ、先輩っ!」
というわけで、我が聖ルドルフ学院中は、合宿を決行したのであります。
そこでは、非日常の連続に見舞われるともしらずに…ね。
「いつも来てるとは言え、やっぱお泊りとなると勝手が違うなー。うん、新鮮☆」
腕を掴まれ、ぐいっと引っ張られる。そちらを向くと、裕太が私の腕を掴んでいた。
「、入口につっ立ってると邪魔だぞ。」
「あ、うん。…そう言えば裕太。この合宿費って学校持ちなの?」
「だろうな。」
「まーすごい☆前にいた学校なんていくらか徴収してたのに!」
そこでひょいっと話に入って来たのは木更津先輩。
「そういやは特待で入ったんだったね」
「そうナノダ☆うちはしがない一般家庭だからね。」
「学校で全費用負担、施設も19時以降使い放題です。」
という観月先輩の解説が入る。
「ホント!?観月先輩じゃあ、中にあるゲームコーナーとかは…。」
「あまりに遅くはならないようにしなさい」
「マジ!?やった!」
ガッツポーズをする私に、観月先輩が釘を刺す。
「ただし、お金は貸しませんよ。」
「いーよ。部長とかから借りるから。あ、ノムちゃんがいた☆ノムちゃん、貸してね♪」
「ええっ!?」
「先輩にたかるなよ、。」
「じゃあ金やん貸してくれる?」
「それは話が別だろ。」
んー、ナイス突っ込み金やん。
「…お金を借りなくてすむぐらいに留めておきなさいと言ってるんですよ、僕は。」
「うい。」
「返事ははいって言われませんでしたか?」
「ういってはいの意味だよ?むしろウイのほうが丁寧よ?」
「発音が変ですよ。」
そんなバカっぽい会話をしていると、受付に行っていた部長と柳沢先輩が戻って来た。
「おい。ルームキー受けとれよ。どれでも変わりゃしないけどな。」
「何号室にしよっかなー?」
「はこれだーね。」
柳沢先輩から渡されたのは8のルームキー。
「えー?何で?」
「シャワーつきの部屋はそこしかないからな。おまえ、部屋にシャワーがないとイヤ
だって散々駄々こねてただろ。」
「え。マジでついてんの?どうして??」
「顧問とかの泊まる部屋だからな。下手するとダブルの部屋より広いぞ。」
「やった!」
私が取った後はめいめい、鍵を持っていく。
部長は1のルームキーを取ってった。
2のルームキーは裕太が何気なく取った。
3は金やんが無意識に取る。
4は木更津先輩が最後に取ってった。
5は観月先輩。最初から決めてたらしい。
6はノムちゃん。6がラッキーナンバーだそうで。
7は柳沢先輩。ラッキー7だからかな?
覚えておかなくちゃごっちゃになっちゃいそうだね。
間違えて別の人の部屋行っちゃったらおかしいしさ。
「観月、これからのメニューは?」
突如部長が観月先輩に言っても、観月先輩は慌てた様子もなく、
「まず、夕飯までは練習をしますよ。個人のメニューは各々に渡します。
夕食を取ったあとは『自由時間』。練習しても、羽を伸ばしてもいいですが。」
観月先輩は、こういうところがやり手だと思う。
自由時間で差がつくってことをよく知ってる。だから、密やかに挑発してる。
さすが、「敏腕マネージャー」と言わしめるだけはあるわ。
私もまあ…「マネージャー」なんだけどさ、「管理」と言ってもメニューのほうは口出し
してないし。観月先輩は言うなれば「コーチ」も請け負っちゃってるから。
みんなが練習のためぞろぞろとコートに向かう中、私は一人、これからのコトを
考えてわくわくしていた。
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