クリスマスは、いつも賑やかだった。

親父に、お袋、由美子姉に、兄貴に、俺。

お袋が腕によりをかけた料理に、ロウソクのともる由美子姉手作りケーキ。

だから、今年はちょっと寂しいかと思っていた。

 

 

ロウソクの火に。

 

 

「裕太!裕太!!」

「何だよ、。」

 

こいつは 。同級生で、テニス部のマネージャーだったから知り合った。

 

「もうすぐクリスマスだね!」

「あー、そういやそうだったな。」

「何それ、興味なさそー。」

「で?プレゼントが欲しい、なんて言うんじゃないだろうな。」

「あ、よく分かったね。」

 

こいつの思考回路は結構単純だ。

まあ、頭の中で難しい事考えるヤツよりはいいかな、とも思うが。

 

「あんま高いもんはやれないぞ。」

「そんなに高くないって。あー、でも考えようによっちゃ高いかもね。」

「はぁ?」

 

考えようによっちゃ高くなる物?

何だそれ。なぞなぞか?

 

「裕太、今年寮居残り組でしょ?」

「ん…ああ。」

 

今年は色々ありすぎて、ちょっと家に帰るのがイヤなだけだ。

ガキっぽいって言われるかもしれないけど、俺は変に頑固だったりするから。

分かっちゃいるんだが、どうにも出来ない。

 

「私も居残り組なんだ。だからさ、一緒にクリスマス祝おうよ!」

「どこでだよ。女子と男子の寮の行き来は原則禁止されてるんだぞ?」

「それは原則でしょー?窓から入れば問題なしっ☆」

「おいっ!いつもそんな事やってるのか!?」

「へ?うん、もちろん。先輩んち部屋にも入らせてもらった事あるよー。

 赤澤センパイに、木更津センパイでしょー。あ、観月センパイんとこは恐ろしい

 から入ってないけど。」

「恐ろしい?」

「部屋の装飾とか、クローゼットとか見たらきっと色酔いするよ。」

 

確かに、観月さんの所は凄かったけど…(色んな意味で)。

色酔いとはまた新しい言葉を作るな、こいつは。

 

「まあとにかくだ。一緒に祝え。な?」

「(命令かよ!)…なんで俺なんだよ。」

「だってさぁ?クリスマスって恋人と過ごすのが定番じゃん?友達に聞いたら

 『彼氏とデート』だってさ。はあ…皆友情より男を取るのよ。」

 

クリスマスに恋人と過ごすのが定番…。

そうなのか。

 

……って、何考えてんだ、俺!?

は、そんな意味で俺を誘ったんじゃないって分かってるのに。

こいつは多分、俺の事なんて異性として見てないだろう。

 

…俺の気持ちにも、気付かないで。

 

 

「で、どうよ?ケーキ代はこっちもちにしてあげるからさー?他の物はワリカンで!

 ねー、いいじゃん?減るもんじゃなしー。」

「減りはしねえだろうけどよ…。」

「頼む!女一人孤独にクリスマスはいやだよーう。ね?ね?」

「――…しかたねえなぁ。分かったよ。」

「ホント?ホントに!?よっしゃ!!イブの夜七時半、押しかけるからね!首を洗って

 待ってろよ!」

「(決闘!?)…あー、あんま騒ぐなよ?」

「はいはいー。んじゃ、そゆことで!!」

 

 

 

 

 

小さい頃、遠足とかの前の日はわくわくして眠れなかった。

そんな感じは、随分前に忘れていたと思ったのに。

 

今日、24日になってからはずっと部屋をうろうろしている。

珍しく念入りに掃除をした。いつもよりちょっときちっとした服を着た。

何だか、不思議な感じだった。

 

コンコン…

 

来た。だ。

 

「今開ける。」

 

ドキドキを抑えつつ、あくまでいつも通りに応答して、ドアを開ける。

 

「こんばんはーっ。へへ、あがらせてもらうね?」

 

白いハイネックセーターに、チェックのキュロットスカート。

制服を見慣れている俺としては、いつもと違う可愛らしさに少し見蕩れていた。

 

「ケーキ、ショートケーキにしちゃったけどいい?」

「別にいいけど。」

「ホント?良かった。私ショートケーキ好きなんだよね。あ、あとこれ、お菓子ね。

 後で半分請求するから。」

 

妙にちゃっかりしてるんだよな、こいつ。

でも憎めない。

惚れた弱み…ってこういう事を言うのか?

 

「グラス借りるね?」

 

シャンメリーがグラスに注がれる。淡いピンクの中を、泡が泳ぐ。

ケーキにはロウソクが灯っている。

その光が映って、ゆらゆらと揺れる。

 

「んじゃ、Merry X’mas!!」

 

カチン…とグラスの触れ合ういい音がする。

 

「んー、おいし。やっぱクリスマスはこうじゃなくちゃね。」

「…ところで、結局クリスマスプレゼントは何が欲しいかって事、聞いてないぞ?」

「へ?あー、もう貰ったよ?」

「は???」

「私が欲しかったクリスマスプレゼントは、裕太と一緒の時間。だから今、

 進行形でプレゼントを貰ってるってわけ。」

 

にこっ、と邪気のない笑みを返す

 

 

敵わねえな、こいつには。

 

 

「私ってさ、父さんも母さんも働いててね。ついでに兄弟もいないもんだから

 いつも一人ぼっちだったの。クリスマスもそれは例外じゃなかったの。

 クリスマスの朝、枕元にはプレゼントだけが置いてあってさ。」

 

ロウソクの炎が揺らめく。

 

「そりゃ、2人だって一緒にいたかったんだろうと思う。けど…そういう事がわから

 なかったから。寂しくて、クリスマスは誰かといないと、ダメになっちゃうんだよね。」

 

俺にはそういう事はなかった。

いつも忙しい親父だって、クリスマスとか行事の時は必ず帰ってきて。

必ず家族5人で、お祝いをしていたから。

 

「でも、ホントに良かった。今年は裕太と一緒だもんね。」

 

暖房のおかげで上気したの顔。

心臓がドキドキと早鐘を打つのがわかった。

 

 

「あ…雪??」

 

反射的に窓を向くと、ちらちらと白い雪が降り始めた。

 

「裕太!雪だよ!雪!!うわぁー、ホワイト・クリスマスだ!!」

、騒ぐなって…。」

「でも、綺麗じゃん?皆きっと外見てて気づかないよ。」

「そう言うもんか?」

「そう言うも……。」

 

 

暖房のおかげだろう。

こんなに、顔が熱いのは。

 

暖房のせいで、ちょっと頭がぼうっとしていたんだ。

に、キスするなんて。

 

 

「裕太…。」

「っ…悪い…そのっ……。」

「これが裕太の欲しかったプレゼント?」

「ちっ、違…!」

「私はすごく嬉しかったんだけどな?」

「へ?」

「裕太、鈍すぎ!!」

 

顔が赤いのが、暖房のせいだけじゃないのは…もだったんだ。

 

「…。」

「はい?」

「…好きだ。」

 

そっと、を抱きしめる。

 

「……ねえ裕太?」

「な、なんだよ?」

「来年もクリスマス、一緒に過ごせるよね?」

「………来年だけじゃない。」

「…ずーっと…いてくれる?」

「ああ…。」

 

家族で過ごすクリスマスも、賑やかで好きだけど。

と一緒に過ごすクリスマスは…もっと、好きだ。

 

 

 

 

 

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後足掻き

初裕太でクリスマスー!!いえーい!!(妙なノリ)裕太は好きです。不二兄とは違って。

でも書くのは大変。ピュアっ子め!!ああどうせ私はブラッキーさ!!友人数人に

「(性格)間違いなく不二だ。」と断言されたヨ…チクショイ。速攻で書き上げたので

色々変なトコあるかもですが、ご了承くださいませ…はい。

ショートケーキ…食べたら死ぬわ、私…(吐血)←甘いモノ嫌い。

 2002・12・6 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

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