凍える寒さの中、私達は手を繋いだ。

冷え性な貴方の手は、冷たかったけれど。

 

心には、伝わったよ?

 

貴方の、暖かさが。

 

 

 

クリスマスの暖かさ。

 

 

 

「ミサかったるーい。何でこんなもんやるんだろーねぇ。」

 

私、 の通う聖ルドルフ学院中では、12月24日にはイブを祝い、

25日はミサをするという行事がある。

 

で、私は今その作業に狩り出されているわけです。

さっきから聖堂の中を行ったり来たりしていてそりゃあもう大変。

 

「とりあえず、うちはカトリックの学校ですからね。」

 

文句たらたらの私を横目で見ただけ(ちょっとムカッ。)の、「見かけ」はめちゃくちゃ

カッコイイ観月 はじめはそう言って黙々と作業をこなして行く。

 

あ、私、テニス部のマネージャーなるモノをやってまして。

だから観月と接点があるんだけど。

観月は一緒にいて楽しいんだけど、時々腹立つからな〜…。

 

私は何ダースものキャンドルが入った箱を一つ一つ開けて仕分けしながら、

独り言みたいに観月に話しかけた。

 

「あのさー…聖堂は綺麗で好きなんだけど、ミサの準備をやらされるのは

 イヤなんだよなぁ…。」

「でも、ミサの支度が出来るのは成績優良者だけなんですから。有難く思いなさい。」

「有難くないわよ!聖堂の祭壇の部屋はエアコンがあるけど、他の部屋はついて

 ないんだもん!寒いっ!!こういうのは赤点保有者にやらせればいいのよっ。」

「煩いですね、もう少し静かに出来ないんですか?」

 

観月は重そうなキャンドルスタンドを数本持って配置させる。

線が細く見えるけど、やっぱり男の子なんだなぁ…なんて、改めて実感。

そんな事言ったら、数倍の厭味が返って来そうだけど。

 

「しっかし、クリスマスってキリストの誕生日でしょ?どうして

 “恋人達のイベント”かな?」

「日本人に親しみやすくしたんでしょう。」

「大迷惑だよね、キリストさん。」

「不思議な事を言いますね、貴女は…。」

 

私はいっつも突拍子がないって観月に言われる。

 

私は私で色々考えてるんだけどなぁ?

 

 

「…観月、小さい頃、サンタって信じてた?」

「また唐突ですね。」

「寒いから気を紛らわす。んで、どうだった?」

「そうですね…。本当に小さい頃は信じていましたけど…小学生になる頃にはもう

 信じられませんでしたね。街頭にあんなにサンタがいる辺りで、ありえない。…とね。」

「ふーん…。」

はどうなんです?」

「私?それがさあ、私小さい頃、サンタが怖かったのよ。」

「はぁ?」

「だって考えてもみてよ!?全身赤い服で、何が入ってるんだか知れない大きな袋

 担いでて、もう髪なんだか髭なんだかわかんないくらいの毛が顔を覆い尽くしてて、

 ふおっふおって笑ってさあ!?おまけに人が寝入ったところを見計らって不法侵入

 だよ!?めちゃくちゃ怖いよ!!」

「その考え方はどうかと思いますが…でも意外ですね。は居ると信じこんでいる

 タイプと思ってましたから。」

「それ、皆に言われる。」

 

ぎいっ、と重くて大きい聖堂のドアが開いて、冷たく乾燥した風が頬を撫でる。

 

「観月、、そっちはどうだー?」

「ん?あ!赤澤!!どーしたの。まさかあんたがトップに入れるとは思えないん

 だけど…。」

「せっかく差し入れ持ってきてやったのに、その扱いかよ。」

「いやー、まあ、ねえ…あれ?柳沢に木更津。不二も。」

「準備が終わったら部活を行う予定だったと思うんですが。」

「テニスコートも今、準備しているから使えないだーね。」

「え?何の準備です?」

「クリスマスツリーをあそこに作るんだってさ。」

「さっきちらっと見ましたけど、結構凄かったですよ。」

 

グラウンドはキャンプファイヤーをするため、クリスマスツリーは飾れないという事で、

テニスコートに白羽の矢が立ったらしい。

 

「それよりほら、これ飲めよ。せっかく買って来たのに冷めちまう。」

 

赤澤がビニール袋を渡す。中には暖かい飲み物が入っていた。

 

「ありがとー。じゃあコーンスープ頂きっ☆あったかーい。観月は、コーヒー?」

 

コーヒーの缶を取って観月に手渡すと、彼の手はひんやりと冷たかった。

 

「あ、観月手冷たーい。死んでるっぽいよ??」

「死んでるって…の手は暖かいですね。」

「これでも冷たい方だよ?」

「んふっ。幼児体質なんですね、は。」

「バカにしてるでしょっ!!」

「バカにはしてませんよ。可愛らしいと思っただけです。」

「へ?」

 

幻聴でしょうか。

そうでしょう。うん。(暗示)

 

だって有り得ないもん。

 

観月の口から誉め言葉が出るなんて。

 

 

いっつも「バカ」だの、「煩い」だの、「のろま」だの、「不器用」だのって…。

 

あー、もう…。寒いから都合のよい言葉が聞こえただけだね、きっと。

だって観月の次の台詞は、

 

「さあ、さっさと終わらせますよ、。貴女は仕事が遅いので。」

「(こいつ…)はいはい。じゃあ、皆また後でねー。これ、ゴチになるよ。」

 

 

 

 

 

 

「やっぱりそうだな。」

「間違いないだーね。」

「あんなに分かりやすいのに、どうして気がつかないんだろうね、。」

「で、どうするんですか?」

「まあ色々と…ね。」

 

 

 

 

 

 

「んー!!やっと終わったぁ。もー、腰が痛いよ。ボール拾いより辛いかも。」

「何言ってるんですか。途中僕にも手伝わせたじゃないですか。の仕事までやる

 義務はないんですが。」

「やる義理ぐらいあっても良いんじゃない?」

 

ちょっと残っていたコーンスープを飲む。コーンが缶の底に残っていたけど、

もういいや、とごみ箱に捨てる。

 

「ねえ、観月。ちょっとクリスマスツリー見に行かない?」

「帰らないんですか?もうそろそろ施錠されますよ?」

「いいじゃん?もし施錠されたら乗り越えればいいし。いざとなったら抜け道使おう。」

「抜け道?」

「うん。寮への抜け道。夏はそこから学校へ入ってきもだめししたんだよ?」

「はぁ…夏にそんな事してたんですか。」

「いいから、早く行こうよ!ほらほら。」

「ちょっと、引っ張らないで下さいよ。」

 

テニスコートには大きなツリーがあって、電飾が全体、そしててっぺんからコートの

フェンスまでかかっていた。

 

「あー、綺麗だけど、電飾がついていて欲しかったなー。」

「明日になればつきますよ。」

「今がいいなぁ。ツリー1人占め…あ、観月といるから2人占めだ。」

 

ビュウ、と冷たい風が吹く。

 

「うう…さむっ。」

「だから言ったでしょう。帰りましょう。」

「やだ。」

 

私は観月の手を取って、しっかりと手を繋いだ。

 

「なっ、何ですか?」

「寒いでしょう?こうしてればちょっと暖かいかなって。」

の手が冷えてしまうでしょう。」

「平気平気。…ねえ、観月。」

「なんですか?」

「いつもいるテニスコートなのに、全然違う気がするね。」

「…そうですね。」

「ここでテニスするのも、あとちょっとだね。」

 

繋いだ手が、ほんの少し暖かい。

 

観月の手、すごく冷たいはずなのに。

 

 

「高等部に行っても…。」

「へ?」

「高等部に行っても、このツリーが見たいですね。」

 

観月の顔を見ようとするけど、ツリーを見上げていて表情は分からない。

 

「…ツリーを見るだけじゃつまらないよ。」

「え?」

「だってクリスマスは“恋人達のイベント”なんでしょう?クリスマス中一緒に

 いなくちゃ。」

「へぇ、恋人だったんですか?僕達。」

「ちょっと違うかも。だけど、一緒にいて欲しいなー、なんて思ったり…。」

 

 

不意に観月の顔が近づく。

 

 

 

 

パッ、とツリーの電飾がついたけど、私には見えなかった。

 

 

 

 

「…本当にバカですね。貴女は。」

「んなっ…。」

「僕が必死になって隠そうとしていたものを、どうしてすぐ無防備にさらけ出すんです?」

「へ?」

「…バカの上に鈍いがつきましたよ、たった今。」

「しっ、失礼な事…。」

「でも。…それ以上に…可愛いと思いました。」

 

観月が私の身体を抱き寄せる。

 

 

観月の腕の中は、掌とは違って、暖かかった。

 

 

 

 

が好きなんです。ずっと、ずっと…秘めていましたけれど。」

 

じんわり、暖かさが込み上げる。

それが瞳から零れ落ちそうになるのを我慢しながら、

 

「…今、ちょっとだけサンタ信じてもいいかもしんない。」

「…どうしてです?」

「今年ね、友達とおふざけでサンタに欲しい物をお願いしたのよ。そしたら叶っちゃった。」

「…なんです?欲しい物って。」

 

 

 

 

 

ずっと一緒にいたいと思えるような、素敵な人。

 

 

 

 

 

 

にっこり笑って見上げると、そこには珍しく顔を真っ赤にした観月がいた。

 

 

 

 

そのあと、私達は手を繋いで帰った。

 

凍える寒さの中、私達は手を繋いで帰った。

 

冷え性な貴方の手は、冷たかったけれど。

 

心には、伝わったよ?

 

貴方の、暖かさが。

 

 

 

私の暖かさも、伝わったよね?

 

 

 

 

 

☆☆☆☆EPILOGUE☆☆☆☆

 

「何であのツリー、電飾ついたんだろう?」

「さあ…。まあ、お節介なサンタが4名程度いたんでしょう。」

「お節介なサンタ?」

「今回ばかりは、ほんの少し感謝しておきましょうか。」

「???」

 

 

 

〜〜〜〜Merry X’mas!〜〜〜〜

 

 

☆END☆

 

 

 

 

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後足掻き。

はい、クリスマスドリの予定だったのに、完全に観月ドリですね。もう分かってます。

だから突っ込まないで下さい。石を仕込んだ雪玉投げないで下さい。

こんなのを送りつけてしまってすいません、長南様(平謝り。)どうにもこうにも

話がまとまらない…長くなる…文才が欲しいよう…(泣)こんな物をオンラインに載せる

私は勇気のある人ですね。ようは世界にこんな駄文をご披露しているわけですから。

修行致します…。

 2002・12・3 月堂 亜泉 捧

 

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