サンクチュアリ

 

 

 

遠くなる指先 めがけて

何度も何度も 名前呼ぶ

時を 空を越えて

貴方を 守っていると伝えたいの

 

 

 

 

 

「…引きとめられるわけないじゃない?」

。」

「貴方が決めた事なんだもの。」

 

我ながら、嫌な女。

こんな事言いながら、本当は嘘だと言ってくれる事を待ってる。

打算的な考えは、綺麗事を紡ぐ。

 

「…すまない。」

 

すまない、なんて思ってないくせに。

そんな見せかけの言葉、かけないで。

 

でも…私も見せかけの言葉をかけているんだ。

 

 

 

 

「腕の治療のため…ドイツへ…行く。」

 

誰かの落としたボールが跳ねた。

跳ねて転がるボール。

止まる。

 

 

彼の前で、止まる。

 

 

にじんだ黄色が、止まる。

 

 

「長期になるだろう。」

 

 

どうしてそうも淡々と言えるのか分からない。

テニスは、どうしてそこまであなたを捕らえて離さないの?

 

それとも、華の香に誘われる蝶の様に…逃れられないの?

 

 

 

「…何の用だ。」

「見学。駄目?」

「…邪魔しないのなら、いいだろう。」

「邪魔はしませんって。大人しく見てます。」

 

 

最初の印象は、単なる「カッコイイ人」だった。

その辺の男の子より端正な顔をしていたから、気になっていただけだった。

 

「手塚君ってテニス上手いんだねー。」

「…そうでもない。俺より強い奴はまだまだいる。」

「まあ…そうなんだけどさ。」

 

無愛想…その言葉がぴったりな人。

初めの頃の会話は、5分ともたなかった。

 

 

「手塚君って…入学当時から無敗なんですか?」

「ああそうだよ。校内ランキング戦、公式戦、非公式戦…全ての試合に無敗さ。」

 

顧問の先生からその事実を聞かされたとき、私は身をちぢこませた。

私はそんな才能のある凄い人と話しているなんて。

急に、彼が遠い雲の上の存在の様に思えた。

 

でも、それと同時に、強く惹かれたのも確か。

ううん…最初から、惹かれていたのだという事に、やっと気がついた。

 

チリチリと胸を焼く、小さな炎の存在。

 

 

 

冷ややかな空気も

胸の奥宿った 熱は奪えない

たとえ今はまだ

小さく儚い 愛でしかなくても

 

 

 

「あのっ、好きなんです!付き合ってください!」

 

偶然出くわした、告白の瞬間。

ばれない様にとこっそり歩き出した私の足を止めたのは、彼の声。

 

「すまないが…。」

 

自分の事じゃないのに。一気に心拍数が上がって、足がカタカタと震えた。

ぐるぐると目の前が回り始める。

 

「俺は…俺の横に、ある女性以外を据える気は無い。」

「…ッ…。」

 

私に気付かず、走り去って行く女生徒。

私もそうできたら…。

さっきまで怖いくらいに速かった脈は、今は恐ろしいくらいに静かになっている。

 

「……。」

「っ!!」

 

心臓を捕まれた様に、私は息を飲んだ。

足は、彼から去ろうと動き出す。

 

「待て。」

 

私の腕を掴む、彼の手。

マメのごつごつした感触のある、努力家な彼の手。

 

「…聞いていたか…?今の…。」

「…。」

「…なんと言ったらいいか…分からないんだが…その…。」

 

言葉に詰まる彼を見ると、彼らしからぬ表情をしていて。

それは私の見た事のない顔。

それだけで、私には十分だった。

私の胸に宿る炎を感じるには、十分だった。

 

「国光――ッ!!」

 

ああ…そう言えば、この時もだった。

にじんだ黄色を見た時。

 

「もう嫌だよ、やめて!!国光が壊れちゃうッ!!」

「…。」

「国光…っ!」

 

私はいつも止められない。

ただ、ついてゆくだけ。彼の後を。

 

 

 

 

 

「…?」

「ん…大丈夫。」

 

そして私は、彼の背を見る。

指先を見る。

足元を見る。

 

「いってらっしゃい。…気をつけてね。」

「ああ。いってくる。」

 

行って「来る」んだよね?

帰って来るんだよね?

 

 

彼の姿が、にじむ。

 

 

 

「国光……国光…ッ……国光ッ!!」

 

 

 

遠くなる指先めがけて

何度も何度も名前呼ぶ

 

 

 

「待ってる…日本で…貴方が頑張れるよう、祈ってるから!!」

 

 

時を 空を越えて

貴方を 守っていると伝えたいの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま…。」

「…お帰り、国光。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

…何だかなあ。微妙な仕上がり。プツプツ切っちゃったのがいけませんね。

このドリムは坂本真綾さんの「サンクチュアリ」という曲を使いました。大好きなんです、

この曲。地球少女アルジュナの挿入歌なんですがねー。短いんですが泣けます、はい。

私のイメージとしてはジョウイなんですが(殴)もっとまともなの書きたい…(泣)

修行せねばなりませんなぁ…。

 2003・4・20 月堂 亜泉 捧

 

 

 

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