私は凄い話好きだった。

 

朝から晩までずーっと喋ってて。

親にも友人にも感心されるぐらい、遭遇した事や感情を事細かに話しまくっていた。

それが、私には寂しくない方法。

コミュニケーションの手段だって思っていた。

 

 

思っていた。

 

 

いた、のは彼に会うまでは、の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

センテンス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…。」

「…。」

 

かさっ、と紙の擦れる音。

それから、窓の外から小さく雀の鳴く声と、風の音。

 

 

。」

「…何?」

「重いぞ。」

 

だらんと相手の肩にのしかかって、細かい文字の並ぶ本を眺める。

 

「うん。」

「うん、ではないだろう。」

 

ふう、と小さなため息。

 

彼がかちゃりと眼鏡を上げるその仕草にドキッとさせられて、

私は心にある言葉とは違う単語を舌に乗せる。

 

「だって見えないんだもーん。」

「後で貸すと言っただろう。」

「待ちきれまっせ〜ん。」

「わがままを言うな。」

 

カッコよく響く、人によっては冷たいといわれる彼の声。

私にとっては、凄く暖かい、ドキドキする声。

わざと口を尖らせて、文句を言う。

 

 

「だって、国光が読むの遅いんだもん。」

「じっくり読んでいるからな。」

「じっくり読みすぎ。」

 

「読みすぎということはないだろう。」

「私が読む頃には新刊出てたりするもん。」

「…そうか。」

「そうだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

再び、静かな時が流れる。

 

 

凄く心地いい。

 

 

 

「…。」

「…。」

 

 

 

静寂のおかげで彼の心臓の音が聞こえる。

少し早い気がするのは、気のせいじゃありませんように。

その心音を消すように、彼の声が響いて伝わってくる。

 

「それなら、が先に読めばいいだろう。」

「それはダメ。」

「なぜだ?」

 

「本の話ができないから。」

「…そうか。」

「そうだよ。」

 

やっぱり、お喋りは好きだから。

 

貴方が「ああ」とか「そうか」とかしか返してくれなくても。

ううん、そう返してくれるから。

ちゃんと話を聞いてくれるから。

 

 

だから、たくさん喋りたい。色んな事を。

 

 

「ページめくるぞ。」

「うん。」

「面倒じゃないか?」

「そうでもないよ。」

 

相変わらず相手に軽くもたれた状態で一緒に読み進める。

 

「……。」

「気になる?」

「…何がだ。」

「私。」

 

尋ねると、返事が躊躇われるのか黙った。

前まではうるさいぐらいにその答えを求めていたけど。

 

「…言わなくてもいいよ。」

「そうか?」

「そうです。」

「『言わなくても、いい』なら、『言っても、いい』んだな。」

「…え?」

 

いつもと違う返事が返ってきて、私は驚く。

 

 

「………。」

 

 

 

耳元で囁かれる言葉。

 

嬉しいけど、たまらなく気恥ずかしくて、思わず顔を隠す。

 

「…ページ、めくるぞ。」

「ちょっと待ってよ…。」

「…動揺したのか。」

「するよ、そりゃ…。」

 

 

 

 

静かな時が流れる。

でも、心臓はさっきよりうるさくて。

 

 

彼の「好きだ」という言葉一つに、こんなにもかき乱される。

 

 

 

 

 

 

 

…私も、彼が凄く「好き」だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

抽象的シリーズ(コラ)いやぁ、感覚忘れてますなぁ(笑)

(ウチの)手塚さんはこういう不意打ち作戦が凄く好きです。そして私の中では勿論

置鮎さんヴォイスで流れております(笑)くぅっ、囁いて欲しいなぁ〜!ナマで!(殴)

 

 2005・8・1 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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