時には落ちこんだっていいよ。

その時は私がそばに居るから。

不完全な羽、一緒に広げて、あの場所へ飛ぼう。

 

 

 

Shortage

 

 

 

コンソレーションが終わり、聖ルドルフ男子テニス部の大会は終わった。

あれ以来、皆はとりあえずのところ日常生活を何気なく過ごしていた。

もちろん、全てが上手くいっている訳じゃない。

マネージャーの一人である私は、それなりに気を使ってたりもしているのよ?

 

「うまいこと考えたよねぇ…金ちゃん。『バカ』澤…ねえ。」

 

2年の教室に来て、金ちゃん(金田、だからカナちゃん。)と話す。

3年の、しかも女子が2年男子に親しく話しかけている図というのも目立つ。

 

「せ、先輩…あれは何て言うか、ノリで。」

「ノリなんだ?ほえー、じゃ常日頃からそう思ってたって事?」

「い、いや、そうじゃないです…」

先輩。それくらいにしたらどうですか?」

 

後ろからよく聞く声が降ってきた。

 

「んゃ?あー、ユタ。先輩って呼んでよ。…まいいや。ういっす。」

「っす。…何で二年のクラスにいるんですか?」

「後輩たちをからかいに。」

「…。」

「いや、まあそれは半分冗談だけどね。」

(半分は本気なのか…。)

「それがさ、木更津と柳沢と私でこの間の試合のことダベってて、赤澤の話をしたら

 急に二人で笑い出すもんだからさー、何なんだって話になって。

 詳しくは金ちゃんに聞けっつーから聞きにきたのよ。」

「先輩、試合の時は?」

 

私はテニス部のマネージャーをしているから(観月とは違って半雑用だけどね。)

もちろんコンソレーションにも応援に来ていた。

 

「ちょうど本部に行ってた時でさ、聞き逃したの。叫びは聞いたってか聞こえたってか。

 …ところでさ、そのバカ澤はいずこよ?」

「クラスにいんじゃないですか?」

「あー、教室にいない事の方が多いし。なによりめんどいもん。」

「二年のクラスにくるほうがめんどい気が…。」

「微妙に近いんだよ二年のクラス。私赤澤と真反対のクラスだから。」

「でも、探さないんですか?」

「んー、多分見つかるよ。金ちゃんのヒントでね。じゃまたねー。」

「…ヒント?」

 

金ちゃんとユタは顔を見合わせて不思議そうな顔をしていた。

で、私が向かったのは、屋上だった。

 

「ぴんぽんぴんぽん大当たりー☆さすが様。」

「なっ、!?どうしたんだよ」

 

外を見ていたらしい赤澤は振りかえって、驚いた表情で私を見た。

 

「いやー、格言は正しいモンねぇ。ナントカと煙は高いところを好む、ってね。」

「俺はバカだと言いたいのか?…ったく、皆して。」

「良く知ってたね格言。国語は得意なのかい?」

「ほっとけ!」

 

また背を向けて外を見つめる赤澤の背に、私はぽつりぽつりと話しはじめた。

 

「…みんな、ぴりぴりしてるよね。コンソレーション終わってから。」

「…。」

 

赤澤は答えない。

私は別に答えを求めてるんじゃないから、そのまま続ける。

 

「観月は見ての通り綺麗な顔に不機嫌充満させてるしさ。木更津と柳沢も平気そうには

 してるけどいまいち歯切れ悪いし。野村は観月とかにさりげなく当たってるしね。

 赤澤もこんな状態で。」

「どうせ不機嫌だよ。しばらく放っといてくれ。」

「無理だよ。…私はこれでも聖ルドルフ男子テニス部マネージャーを三年やってるん

 だから。誰よりも長く皆を見てるんだから。…私だって、最後の、夏だったんだから。」

「悪かったな…。」

「あやまんな、バカ。」

「バカって言………。」

 

振り向いた赤澤が驚いている。

さっきよりも、相当。

めったに泣き顔など見せない私が、大粒の涙をぽろぽろと零していたからかもしれない。

 

…。」

「なんなのよ、みんなして!まるで選手生命絶たれた人みたいに!!あんた達レギュラー

 は最近のコート見た事ある!?金ちゃんとユタが先頭になって、後輩の面倒見てるの、

 見たことあるの!?レギュラー落ちした3年が、メニュー考慮してやってるってこと

 知ってるの!?」

 

流れ落ちる大量の涙と共に、そんな言葉が溢れて止まらない。

赤澤を責めたいわけでも無い。それなのに、自分勝手に暴走した脳みそは言う事を

聞いてくれない。

 

「赤澤、あんたそれでも、部長なの!?自分が負けて引退したら、それで終わり!?

 それとももう、テニスなんかうんざりだって思ってるの!?」

「そうじゃないっ!!!!」

 

赤澤はそう叫ぶと、私に駆けよって、抱きしめた。

男らしい、しっかりとした腕が私を包む。

 

「あ、赤澤……。」

「…確かに、お前の言う通りだ。でも俺は、テニスが好きだ。だから、おざなりにする気

 なんて無い。…サンキュな、。目が醒めた。」

 

なんだか分からないんだけれど、すごく赤澤がかっこよく見えて、

私は更に激しく泣き出してしまった。

 

「…遅いよぉ、バカぁ……。」

「ああ…そうだな、俺、バカかもな。」

 

泣きじゃくる私を、赤澤はずっと抱きしめていてくれた…。

 

 

 

 

 

 

「おらそこぉ!だらけてんな!!新人戦まで日数ねえんだぞ!!」

 

コートに赤澤の大きな声が響く。

 

「君はこのメニューで。主にここを強化しましょう。」

 

観月の的確な指示が飛ぶ。

 

「相手になるだーね、裕太!

「手加減してやれよ、柳沢!」

「先輩、手加減なんかいらないですよ。」

「ゆ、裕太君…。挑発しない方が…。」

 

最近柳沢は裕太の練習相手になってあげているらしい。木更津や金ちゃんも参加したり

しているみたいなんだけどね。

 

、赤澤部長が呼んでるよ?」

「あ、ホント?ありがと野村っ。」

 

で、私はというと…。

 

「吉朗!!」

。」

 

 

 

今まで通りと、ほんの少しだけ違う日常を送っています。

…いや、変わらないのかもしれない。

 

 

 

時には悲しんだっていいよ。

その時は私がそばに居るから。

不完全な羽、一緒に広げて、いつもの空へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

初赤澤ー☆ルドメインなくせに観月以外をあまり書かない。(オイ)で、部長さん見参。

赤澤は好きだけど、友人として好きなタイプ。苛めたい。(爆)最初と最後の3行は

歌詞でもなんでもナシ。単に何となくイメージで。ポエマーな自分。(笑)えと、題のイミ

は、不足、欠乏とかいう意味です。やっぱり題は日本語がいいなぁ…。英和や和英辞書を

引っ張り出してこないとならないので(汗)それより日本語のバリエーションを増やそう。

まだまだ勉強不足やんねぇ…。

 2003・2・11 月堂 亜泉 捧

 

 

 

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