幸せ。

 

 

 

テニスをやってて楽しいと思った事はある。

試合に勝って嬉しかった事もある。

 

でも、幸せを感じる事はなかった気がする。

 

「誕生日、いつだっけ?」

 

メモ帳を取り出して嬉しそうに聞いてくるのは、 

同じクラスの女子なんだけど。

夏場にここまで元気なのも、正直呆れる。

 

「…12月24日。」

「うわ、すんごい嫌そうに言うのね。」

「べつに。」

 

もうそんな気にしてないしさ。ただあんたに言うと絶対何か言いそうだと思っただけ。

 

「そっかそっか。ふむふむ。じゃあまだ12歳なんだー。ふーん。」

「…チビだって言いたいわけ?」

「べつに。」

「俺の真似しないでくれる?」

 

は身長が高い方だ。155…とか言ってたっけ…。

別に高くない、とか思うけど、実際俺のが低い。腹立つけど。

 

「んー、なるほどねー。」

「で、あんたは?」

「は?」

 

口をぽかんと開けたままこっちを見る。

…恥じらいってもん、ないわけ?

 

の誕生日。」

「…知りたかったの?」

「そうじゃない。」

 

何となく、フェアじゃない気がする。

そんな理由もどうかと思うけど。

 

「4月4日。」

「ふーん。」

「…だったら良かったなーって。」

「はあ?」

「また『はあ?』ってゆったー!」

「いや、言ったのあんただし。」

「私の誕生日は企業秘密なのだー。」

「企業じゃないじゃん。」

「冷ややかなツッコミ、ありがとう。かなーり痛いっすよー。」

 

胸の部分を押さえてよろけてみせる

あー、疲れる。

 

 

そういや俺、と話した後にいつも疲れるくせして、話に乗ってやってる気がする。

何でだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いいや。

考えるの面倒くさいし。

 

 

「で、本当の誕生日。」

「だからあ、企業秘密だっての。」

「じゃあ4月4日ってことで。もう過ぎたし、プレゼントいらないね。」

「どうせ素直に教えたって絶対忘れるね。」

 

多分ね。他人の誕生日覚えてたってなんにもなりゃしないし。

 

「あんたは俺の誕生日知ってどうするつもり?」

「どうにもしない。」

「何それ。」

「趣味の領域においてだから。」

 

…乾先輩みたいな事…。

まあ、悪用なんかしない(むしろ出来ない)だろうからいいけど。

 

「にしても、何で4月4日生まれになりたかったわけ?」

「やっとそこを聞いてくれた?」

 

ニヤニヤと、最高潮に嬉しそうな顔をして、

 

「知りたい?」

 

…腹立つ。

 

「別に。」

「あらん、可愛くないのー。」

 

わざと「しな」をつくって言う。

 

「可愛いって言われても嬉しくないし。」

「じゃあなんて言って欲しいのさ?」

「…さあ。」

 

ちょっと考える。

別に、嬉しい言葉なんてない。

ファンタ奢ってくれたりしたら嬉しいかもね。

 

「俺、もう行くから。」

「ああっ、ちょっと待ってよぉ。聞きたくないの?」

「…聞いて欲しいの?」

「半分半分。」

「じゃ。」

「あああああーっ、待って待ってお待ちくだせぇ!!」

「(何なんだ…。)…で?」

「…4月4日はねー、何かあった日なんだけどー、覚えてないかなー?」

 

4月4日…?

入学式はそれより前だし…、クラス発表も入学式の日だった。

なんかあったっけ?

 

「覚えて無さそうなカオしてるね?」

 

はそこでいったん言葉を止めて、俺をまっすぐに見てきた。

 

「4月4日は『幸せ』の日なのですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

「はあ?」

「また『はあ?』っつったー!!もっと語句のバリエーションを増やしなさい!

 ノットモノトーンスピーク!!」

 

英語の使い方間違ってるし。

 

「訳が分からないって言ってんの。」

「理解しようとしてないだけなんじゃないの?」

「理解できそうな事をあんたが言ってないだけだと思うけど。」

「ヒドッ。」

「いいから、さっさと教えてくんない?」

「偉そー。

 まあいいや。4月4日ってさぁ?不幸の日とか言うじゃない。『死』だからとかそーいう

 理由でさ。でも私は逆だと思うんだー。『し』が二つもあるんだよ?」

「だから?」

「そう焦りなさんなリョーマさんっ。だから、『し』が2つあるってことは、『し』が

 出会ってる…つーまーりっ、“『し』あわせ”な訳ですよぉ!!」

「…。」

「くだらないっていう目つきしてるー。」

 

くだらないって言うか…。

そういう変なところに頭が回るのに感心してるだけなんだけど。

 

「それにっ、私は身をもってその日が『幸せ』の日だってコト、分かってるしさ。」

 

にっこり微笑んで、は俺に背を向けた。

その背中はどこか、嬉しそうだった。

 

「…ひょっとして、あの時?」

 

 

4月4日かどうかは忘れた。でも、入学式の何日か後、雨の降った日があった。

 

 

 

 

その時、3分咲きの桜が雨に打たれて、ぱらぱら散っていた。

は一人、昇降口にいた。

 

「そこのあんた、何してんの?」

「え?」

「…(同じクラスにいた気がする…。)えーと…。」

「越前君だよね?」

「…、だっけ。」

「うん、よく覚えてくれてたね。」

「…傘、ないの?」

「うん、うっかり置いてきちゃってさー。失敗失敗。」

 

は桜の木に目をやった。

 

「でも、ダッシュで帰れば平気かなって。」

「結構雨強いけど?」

 

言葉に詰まる。俺はため息をついて、

 

「これ、貸すから明日返して。」

「えっ、あ、ちょっと!!」

 

 

 

 

 

 

 

「…すごいね、てっきり忘れてると思った。」

「…今思い出した。」

 

 

覚えていたのは多分、返してもらった時の…。

 

「ありがとう、越前君。助かっちゃったよ。」

「…ドウイタシマシテ。」

「ボー読みだね…。まあいいや、ありがとね!」

 

その時の、の笑顔が妙に印象的で…。

 

不思議だけど、いい気分になったのは覚えてる。

 

 

 

 

 

「で…?」

「あの時私は、『幸せ』だったって言いたいの。」

 

俺が不思議そうな顔をしていると、

 

「…ニブっ。鈍すぎ。」

 

は一呼吸置いて、

 

「好きな人に少しでも優しくしてもらったら、幸せになるのっ。」

…。」

「だから、私にとって4月4日は重要な日なの。」

 

…じゃあさ。

 

「あんたの誕生日、教えてよ。」

「だから、企業秘密だって何度も…。」

「俺の『幸せ』の日は、の誕生日がいい。」

 

顔を赤くして、時が止まったように固まる

 

「何月、何日?」

「…。」

「…絶対忘れない。」

 

俺がたとえ疲れても、と話している理由。

分かっていても、口に出す事のなかった理由。

 

 

 

の事が好きだから。

 

 

 

と話していると、『幸せ』になれるから。

 

 

「俺の『幸せ』の日は毎日だけど、特別なのが、。いいよね?。」

「……うん…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

幸せは、結構身近に落ちてたりする。

拾い上げるかどうかは、自分次第。

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

ダダだだだダダだダダだ、駄文だーん!!(狂)なんかだらだら長っ!!うわー…。

4月4日…のくだりを書きたくて書き始めたらいつのまにかこんな長い駄文になって

しまいました…。アホい掛け合いとかも多すぎなのかなぁ…?前後編にするには切れ目

がないし、リョーマはエセだし…。うわー、捨てたい☆そのうちドリムの墓場を作ろう。

むしろ残るものが少なすぎ。(吐血)もっと考えて話を書こう…。

 2003・3・17 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

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