回り回る 時間はゆく

足跡 残して

遠く過ぎた日々は きっと

明かりを ともすよ

 

 

Spend The Time

 

 

今、a.m.12:30。

場所は、聖ルドルフ男子寮、観月はじめの部屋。

目の前に燈るキャンドルが、私達を照らす。

 

 

 

 

 

闇が全てを 消したら

消せない炎 燃やそう

信じてあげよう 自分を

やがて来る 明日のため

 

 

 

 

 

そもそも、なぜ私がこんな所にいるかと言うと。

 

 

 

 

 

……どうして、来たんです?」

 

私が予想した通り、はじめは荒れていた。

最初からくせの強いはじめのくるくる巻く髪が、いろいろなところで絡んでいる。

でも、散らかすのが嫌いなはじめらしく、部屋はいつもの通り、綺麗なままだった。

…私には、それが痛々しかった。

 

「どうしてって……うーん。逢いたかったから。」

「僕のこんな姿を見に来たかったんですか?」

「うん。…って言ったら、どうする?」

 

はじめの目が吊りあがる。

元から少々きつめの瞳が、更に鋭くなる。この瞳を恐いって言う人がいるけど、

私はこの瞳がたまらなく愛しい。

いつもの大人びた余裕さがなくなった、血気盛んな「中学生」の瞳だから。

 

「…帰ってくれませんか?今、僕は誰にも…。」

「逢いたくないんでしょう?分かってる。でも、私ははじめに逢いたかった。」

「こっちの事情も考えてください。」

「無理。…私、いつもはじめが言う通り、バカだから。」

…。」

 

こんな所で怯まない。

 

伊達にはじめの彼女を自称してないわよ?

 

 

「…今日、泊まる。こんな状態のはじめを一人になんてしておけない。」

「なっ…何を言ってるんですか!男の部屋に泊まるなんて…!親に…。」

「親には合宿だって言いくるめておいた。今更帰れないよ。…もし泊めてくれないなら、

 柳沢か、赤澤か…木更津のところへ行く。」

「………分かりました。…泊まるかどうかはともかく…とりあえず、入ってください。」

 

根性勝ち?ってやつで、はじめの部屋に入る。

 

 

 

 

部屋にはきちんと電気がついていた。なのに薄暗く感じるのは、

はじめの気分のせい……なんだろうな。

 

「どうぞ。は、砂糖ダメでしたよね。」

「うん…ありがとう。」

 

甘い物がダメで、コーヒーをブラックで飲む私に、「胃に悪いですよ」と言って、

牛乳を入れてくれるはじめ。今日のコーヒーも、キャラメル色をしていた。

 

「まったく…貴女は、何を考えているんですか?」

「ん?はじめのことよ?」

「僕の事を考えてくれているなら、こんな時に来ないでしょう?」

 

ため息混じりに、コーヒーを飲むはじめ。…絵になるなぁ…。

 

「あー…じゃあ…はじめが私の事を考えてくれるようにするための対策を考えてたの。」

「……はあ?」

「(そこまで声ひっくり返さなくても…。)だって今、半分くらいは私のこと考えて

くれてるでしょ?全部じゃないにしてもさ。」

「……。」

「私はいつだって、はじめの事、9割近く考えてる。」

「…だから勉強が頭に入らないんですね。」

「(あ…いつもの笑みだ。)…むーっ。」

 

 

――――不思議な人だ。――――



――――部の奴らも、苛立つ僕に何も言えなかったのに。――――



――――今の今まで、ずっと苛立っていたのに。――――



――――貴女が来てから、半分…いや、7〜8割は、貴女の事を考えている。――――

 

 

「…はじめ、タオル、ある?」

「…はい?」

「タ・オ・ル。」

「はあ……あるにはありますけど。……はい。」

「借りるよ。」

 

私はタオルに顔を埋めた。ふかふかする。

はじめは「?」と思っているだろうな。

 

「………っく……。」

「!?」

「…っく、ひっく…っ…。」

「なっ……ど、どうして…。」

「私と…はじめの分、泣くの。はじめ…泣いた感じないし。だから、代わりに私が泣くの。

 …私だって、辛かったんだから。あの時コートの中に入って、はじめを抱きしめて

 あげたかった。応援したいのに、はじめの辛そうな顔見たら、声も出なくて…。」

…もういいです。」

「…はじめ?」

 

はじめが、私をそっと抱きしめた。

ふわりと、はじめの愛用している香水が香る。

 

「貴女が泣く姿なんて、見たくありません。…優しすぎますよ、は…。」

「そんな事…ないよ。もっと、ちゃんとした言葉かけてあげれれば…。」

「いりません…言葉なんて。がここにいて、僕の事を想ってくれた。

 僕はそれだけで…十分です。」

 

はじめは少し震えていて。

肩口が温かい雫に濡れて。

私ははじめを、強く抱きしめ返して。

 

 

 

 

手探りの 今日もいつか

振りかえれば 道になり

流した涙は 花

足元 飾るでしょう

 

 

 

 

 

 

いつのまにか、月が輝いていた。

漆黒のはじめの瞳に輝く、涙のように。

 

 

「はじめ…これ、あげる。」

 

落ち着いて、ゆったりとした時間を過ごしている時。

 

「これは…キャンドルですか?」

「うん。…あのね、これを…今までの嫌な思い出として。

 そうして、火をつけるでしょう?時が経つ毎に、それは溶けていく。

 そのうち、なくなる。だから…ね?」

 

勘のいいはじめは、私が何を言いたいのか分かったみたい。

優しく微笑って、ライターで火をつける。

 

「じゃあ、この炎は…僕を救ってくれた、…でしょうか。」

 

 

 

 

 

廻り廻る 時の中

一瞬は 全て

遠く過ぎる日々がほら

光を 放つよ

 

 

 

 

――――Fin――――

 

 

 

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後足掻き。

長……長い…。歌詞を入れたら大幅に長くなりました…。でも、ひとえに観月が

好きだから。ちなみに、spend The Timeは私の大好きなR&Bミュージシャン

Tinaの曲です。こりゃーコンソレーションで負けた観月氏に使うっきゃないわ!

と思いまして。Tinaの曲ネタ、また出てきそう(笑)素敵なので機会があったら

お聞き下さい。…しかし今回、何したかったんだか…。「んふっ。」も出てこないし…。

読み返すとホントワケ分からんです。修行…せねば…。

 2002・10・2 

 2002・11・11改  月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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