あーあ。僕ってすごいお人よしかも。

祭りのお囃子や人々のざわめきの中、独り言を言う。

 

 

 

Summer Sound 番外編

 

 

 

英二、今ごろ彼女と上手くやってるのかな。

ま、僕がお膳立てしたんだ。上手くやってなくちゃ怒るけど、ね。

 

 

 

 

 

 

 

『悪い悪いー!つい飛ばし過ぎちったー!』

 

あの日、羽根を飛ばした場所は偶然にも、音楽室。

英二の好きな人がいつもいる部屋。

そこで、僕はチャンスだと思ったんだよね。

 

『ごめんね。今から取りに行くよ。英二が。』

『ええっ!?』

『いいじゃない。英二は彼女が好きなんでしょ?』

『にゃっ!?なんでそのコト知ってんの!?』

『だって英二、バレバレなんだもん。ね、取ってくるついでに顔を見ておいでよ。』

『うー、分かったよぅ。』

『ふふっ、嬉しいくせに。』

 

 

 

 

 

あの時は、英二と彼女が付き合えるようにと思って手助けをした。

でも…。

ピアノを演奏し終わった彼女の、輝くような笑顔に…惹かれてしまった。

 

今日だって本当は、姉さん達と祭に行く予定だったのを蹴ったのは、彼女に逢うためだった。

 

 

彼女が僕に想いを寄せているだろう事は、薄々気づいていた。

 

 

でも今日、それは違ってきていることに気づいた。

 

 

彼女が僕を見る目は、単なる憧れ。

 

 

彼女の想いはいつのまにか、英二に向かってるんだと分かった。

物分りのいい性格は、こういう所で損だと思う。

 

 

まあ…これが本来、望んでいた結果と言えばそうなるのかもしれないけど。

 

 

 

ふと気づくと、人の波が海岸線へと大きく動き始めた。

花火の始まる時刻が近づいてきたんだろう。

 

 

「うえぇーーーんっ!!お母さーん、どこーっ!?」

 

人込みの中で泣きじゃくる少女が一人。みんな振り返って見はするものの、

誰一人として立ち止まるものはいない

 

僕が歩み寄ろうとしたとき、さっと青い花が通った。

 

「大丈夫?お母さんとはぐれちゃったの?」

 

青い朝顔の花が描かれた浴衣を着た人が、少女に話しかける。

浴衣を着た人は、多分僕と同じ年くらい。小柄で、浴衣の良く似合う可愛らしい人だった。

 

「そっかぁ…じゃあ迷子の呼び出しをしてもらおう。じゃあ、お姉ちゃんと一緒に行こうか。」

「うん。」

「えっと…本部は…。」

 

と言いながら、その人は本部とまったく違う方向へ歩き出した。

不安だな…と思った僕は、声をかけることにした。

 

「あの。」

「えっ?」

「本部はこっちのほうですよ。」

 

そういうと、頬をほんのり赤らめ、小さな声で

 

「すいません。…実は私、ちょっと方向音痴なんで…。」

 

ここへ来たのも、神社へ行こうと思ったら迷ったのだと、後で聞いた。

 

「じゃあ、僕も一緒に本部へ案内しますよ。

 ねえ、お兄ちゃんもついていってもいいかな?」

「うん、いいよ。」

 

彼女は微笑んで、ありがとうございます、と言った。

その仕草や表情が可愛らしい…と思う、自分の想いに驚かされた。

 

 

歩いていく、三つの影。

海岸線とは逆なため、人が少なく、歩きやすい。

影を見ていると、家族みたいに見えた。

 

 

 

 

 

 

 

「本当にありがとうございました。」

 

深深と頭を下げる少女の母親に、僕達も頭を下げる。

 

「お母さんと逢えて良かったね。」

「うんっ。お兄ちゃん、お姉ちゃん、バイバーイ!」

 

二人で手を振って見送る。少しだけ静寂。

 

「…さて。花火が始まるかな?」

 

僕が言うか言わないかのタイミングで、大輪の花が夜空に咲いた。

 

「わあっ…綺麗…。」

 

花火の光に照らされた彼女の横顔は、綺麗だった。

 

 

 

…うーん…。

 

これって、一目ぼれっていうやつかな…。

 

 

 

ふふ…くすぐったくて、嬉しいような…。悪くない気持ちだね。

 

 

 

「本当に…綺麗だね。」

「うん…。」

 

大輪の花を咲かせ、次々に散って行く花火。

 

移り変わる、景色。

 

「…そう言えば、君の名前…まだ聞いてないね。

 僕は不二 周助。青学の三年。」

「あ、えっと、私は、 。山吹中三年なの。同い年だね。」

「山吹中なんだ。山吹中とはテニス部で試合をしたことがあるから知っているよ。」

「あ、不二君はテニス部なんだ。」

「うん。」

 

ぱらぱら、と花火が散って行く。

それを待たずに次の花が咲く。

 

「テニスは楽しそうだけど、やったり見たりする機会がなかなかなくって。

 部活はお邪魔するのもなんだから…。」

「そうなんだ。じゃあ、今度の大会、見においでよ。」

「いいの?」

 

咲いて行く花火が、彼女の瞳にも映りこむ。

 

「もちろん。」

「わあっ、楽しみ☆」

 

ひときわ大きな花火が打ち上げられる。

その音の大きさに思わず、さんもびくっと肩を竦める。

 

「ふふ…。」

「あっ、やだ…見ちゃった?」

「うん、しっかり。」

「恥ずかしい〜…。」

 

 

 

  「―――打ち上げ花火、以上で終了となります。なお、この後…―――。」

 

 

 

「もう終わっちゃったんだ。早いなぁ…。」

「そうだね。…あ、そうだ。携帯の番号、教えて?試合の日にち、教えるから。」

「いいよ。ちょっと待っててね。……いい?……。」

「…OK。ありがとう。僕の番号はね…。」

「…うん。大丈夫。」

 

にこっと、何故かお互い笑い合う。

不思議に、幸せな気分だった。

 

〜!!」

「あっ、!ごめん不二君…。」

「不〜二〜っ。」

「うん、僕も連れが来たみたいだから。」

 

 

 

 

 

 

「「じゃあ、また。」」

 

 

 

 

 

 

友人の元へ駆け寄り、少し振り向いてから去った彼女を見送る。

 

「不二?にゃんか嬉しそうだよ??」

「うん。ちょっとね。…それより英二、良かったね。」

「う?あー…うん…ありがと不二。」

「それから。後ろに隠れている彼女に伝えておいてね。

 僕も、一番側にいて欲しい人が見つかりそうだよ…って、ね。」

 

 

太陽のいない青空。

 

 

そこに咲いた花。

 

 

 

 

 

 

僕の心は、夏模様…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

おまけSummer Sound不二子。言い訳ドリ+不二ドリ風味…ですね。

これで大体裏事情は言ったかな。不二さん、意外と黒くならなかったなぁ…相手ヒロインを作ったせいかしら。

青い朝顔の浴衣は私が欲しいんですよね。(爆)今持ってるのは紺地に紫陽花なんです。それもいいんですけどね、

水色の浴衣に濃い青の朝顔とその蔓が書かれてるのが可愛いんですよ☆あー、浴衣の似合う女性になりたいわ(多分無理)。

何はともあれ、ドリムの質を上げようよ、ね…。

 2003・7・5 月堂 亜泉 捧

 

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