この世界、トーアルリングにあるクランブール王国。

 

広大で肥沃な領土を持ち、科学・文化レベルも高い水準を誇る。

 

気候も地方によって様々で、観光をするとしても興味深い国になっている。

軍事力も有し、治安も良くこの数十年と平和を保って来た。

 

 

 

 

 

 

しかしそれは、徐々に音を立てて軋み始めたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「侵入者だ!至急持ち場に着け!王の間への侵入を許すな!!」

 

虫の声もしない、皆が寝静まっていた真夜中。

 

指示を出す隊長の声と、兵たちの騒然とした足音が鳴る。

 

 

自室で仮眠を取っていたディオも、すぐに目を覚ます。

幸い、仮眠の間に剣を刷いたままでいる癖があるために、すぐに戦闘体制に入る。

 

「ディオ!」

 

同僚で親友のジェイが武装した状態でやってきた。

金に近い茶の髪を乱しながら剣を一旦納める。

 

「ジェイ!今城の中の状態は?敵は何人だ!?」

 

矢継ぎ早にディオが質問を投げかけると、ジェイは至極冷静に答えた。

 

「城内は混乱している。丁度交代時間だった事も災いしたな。敵は…一人だ。」

「この守りの堅い城に、単身で!?」

 

ジェイの言葉に目を剥くディオ。

 

 

この城は王国を統べる王の住まいだ。

 

ディオやジェイのように、城に住み込みで兵達が城を防衛している。

もちろんそれは他国との戦争にも耐えうる強固なものだ。

 

 

その武力たるや世界中に知れ渡るものなのに。

 

たった一人で城攻めなど聞いた事が無い。

 

ジェイは神妙な顔をしながら

 

「ああ、なんでも妖術を使うらしい。魔術とは違う…。」

「くそっ…!」

 

吐き捨てるように言うと、ディオは剣を抜き、王の間へと駆け出していった。

 

走っている間にも、傷ついた兵士や召使たちがそこここに倒れている。

 

苦しんではいるものの、妖術を食らったためか血はさほど出ていない。

 

 

この国で魔術と呼ばれるのは、主に化学の分野だ。

 

それとは違い得体の知れない力を妖術といい、異端の力、忌避の対象とされる。

 

しかし実際は眉唾も多く、その存在は殆ど伝承化されていたのだが。

 

「ディオ!一人で突っ走るなって!」

 

ジェイが後を追って走ってくる。

 

猪突猛進型のディオをいつもこうしてサポートしてくれるのがジェイなのだ。

 

 

「俺の剣の腕を見せてやる!俺の剣は魔術にも、勿論妖術にだって負けはしない!」

「お前の剣がたつのは知ってる!けど、少しは冷静になれって言ってるんだ、

 相手の手の内や目的が見えない以上、あっちの策に乗ってることだってある!」

「それなら俺は、その策とやらを凌駕してやる!」

 

 

妙に口の達者な相棒に、深くため息をつきながらも見放すことは無い。

 

 

ジェイは一見冷たいと思われがちだが、友情には厚い男なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あいつか!!」

 

王の間へと続く大階段に立ちはだかる、

 

 

大きな影…。

 

 

その影自身が長身であるせいもあるが、背に翻る呑まれそうな闇色のマントが

更に相手を巨大で禍々しく見せていた。

 

 

ディオは剣を構え直し、その影を厳しい表情でにらみつける。

 

 

「お前は何者だ!!何のために我らが王の安全を脅かす!!」

「そう聞かれ、目的を話すものが幾許も居るものか。貴様は平和な世に浸かっているな…。」

「何っ!?」

「馬鹿!挑発に乗るな、ディオ!」

 

 

ジェイの制止も遅く、ディオは刹那その影に切り込んでいった。

 

 

「ふん…青い上に短慮と見た。…他愛ない。」

 

 

低い、よく耳に残る男の声。

 

ただし、顔は覆面をしており、何者かは分からない。

 

 

 

マントに隠れていた右手が、すっと眼前に翳された次の瞬間。

 

ディオの身体は易々と浮き上がり、壁に打ち付けられた。

 

 

 

「ディオ!」

「ぐっ!!げほっ、はっ…。」

 

 

あまりの衝撃にディオは噎せ返る。

 

 

男は一瞬にして間合いを詰めてきた。

その動きは歩いているようではなく、瞬間移動でもしたかのようだった。

 

 

(これが…妖術…!?この俺が、一切歯が立たない…こんな屈辱…っ!)

 

 

 

男の右手が再び、ディオの前に翳される。

まるで空気が動いているかのように、男の掌の周囲が、どんどん密度を濃くしている。

 

死にたくない。

そして、守らなければ。

 

 

意識の片隅で叫ぶ自分の声。

その声のまま、男に向けて剣を振りかざし、男の右腕めがけて薙いだ。

 

 

 

「ディオーッ!」

 

 

次の瞬間は、何が起こったのがわからなかった。

 

いや、『理解したくなかった』だ。

 

 

 

 

 

自分の手にしていた剣に、ジェイの右腕が深々とめり込んでいた。

 

 

 

 

 

「…ジェイ……?ジェイ!!!!」

 

「美しい友情とやら…確かに感服するが…私がもっとも嫌悪する部類の感情だ。」

 

 

 

 

 

 

 

男はマントを翻し、同じ色の宵闇に溶けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

NEXT…

 

 

 

 

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後足掻き

オリジナルファンタジー小説第1話です。これは『ベタまっしぐら』の王道で

行こうかと思ってます。始めのシーンなんかはモロに『聖剣3』な雰囲気で(笑)

きっと黒衣の悪役さんはいい声だと思います(笑)美形でカッコイイ感じ。

あ、出てくる人物にはモデルが居ますね。2次元だったり3次元だったり。

余りにローカル過ぎるのでモデルは伏せておきましょうか、ええ。(笑)

 

 2007・5・26 月堂 亜泉 捧

 

 

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