久しぶりに来た、俺の転校前の高校、冬華高校。

この高校ならではの冬の文化祭ということで招待された。

 

…恋人のお披露目も兼ねて。

 

中学の頃の2ショット写真しか見てない友人は、俺がベタぼれの恋人を

生で見たいってうるさくて…で、デートの気持ちで連れてきたけど…凄く心配。

 

「なーなー、誠人っ、どんな屋台ある?」

「模擬店?…ま、定番かな。焼そばとかクレープ…ホットドックと焼き鳥…」

「うぅ〜、うまそう!誠人、早く早く!」

「走ってこけるなよ、恭介。」

「大丈夫ぃ!」

 

ふわふわの茶色かかった金髪、くりくりとした橙色の瞳に、

女より綺麗で白くて細い身体、甘く響く声…。

もうどれをとっても最高と言うしかない、俺の恋人。

 

 

ただ、最大級の天然かつ世間知らず…。

 

 

大食らいなため、食い物に釣られてさらわれそうになったり、

人を疑わないためあっさりついていったり…。

 

あっちからは恋人として認定されているのかどうか

…はたまた恋人の定義を知らないのか…

とにかく、心労は尽きないけど…惚れた弱み…ってことで。

 

「あっ、誠人だ!」

「お?絢之丞、元気そうじゃねぇか。」

「たりめーだろ?日々修練してるんだ。」

 

杉原 絢之丞(すぎはら あやのじょう)。

ちびっこいけど空手は半端なく強い。俺に空手を教えたのもこいつだ。

純朴な所は恭介に似ているかもしれない。

 

「なんだ、郁もいるんじゃん。」

 

桜 郁(さくら かおる)。軽い感じだけどかなりの美形でモテるのに、筋金入りのタラシ。

一時期俺にまで手を出したがっていたくらい…。

 

まぁ、今は幼なじみの絢之丞とのんびり同棲生活らしいけど。

 

「彼が、誠人の恋人君か。俺は冬華高校2年桜 郁。

 こっちも一応同じく2年の杉原 絢之丞。」

「一応って但し書きは必要ねーだろがッ!っと、キミ、名前は?」

「う?俺は青空学園1年、鳳白 恭介!よろしくなっ、兄貴’s!」

 

にこーっと満面の笑みを浮かべる恭介。

そんな姿がまた可愛くて…って、危ない…顔がにやける…。

絢之丞はすっかり恭介が気に入ったらしい。にかっと八重歯を見せて、恭介の手を引いて

 

「んじゃあ、屋台案内してやるよ!あ、ちょっとなら割り引いてやれるからな。

 まずは〜…たこ焼きの屋台からかな!」

「たこ焼き!うんうん、食う!」

 

人の波をかき分けて走っていく二人を追いながら、郁は俺を見て小さく笑った。

 

「なっ、なんだよ、薄気味悪ぃな…。」

「いやいや、誠人があんな表情するなんて俺も知らなかったから。

 なぁ、冷風のお姫様。」

「…郁、喧嘩売ってんのか?」

 

拳を握って見せると、自称軟弱な郁はお手上げポーズを取る。

 

「おぉ、怖っ。まぁ、冗談はともかくとしてだ。…マジで変わったよ。

 棘があったっつーか、寄せ付けねーオーラがあったんだけどよ。」

「そうか?」

 

俺は変わったなんて自覚はない。

まあ、変わったとすれば、睡眠薬で無理やり寝なくても、あいつと一緒なら

良く眠れるようになった事。

 

「可愛くなった、誠人。」

「はぁっ!?」

「素っ頓狂な声上げるなって。」

「上げたくもならぁ、んな事男に言われた日には!」

「他に言葉のバリエーションがなくて。…何だろう。彼と居る誠人は…。

 あるべき姿、って言うか…この二人だけには、手を出しちゃいけないなって…。」

 

そんなに(男を)誉めなれてないからかもしれない。

拙い言葉で教えてくれた、俺達の他者からの見た感じ。

そう映ってくれているなら、嬉しいと思う。

恭介のためだけに、俺は生きて、努力している…そう言ってもいいくらいだから。

 

「…ってちょっと待て。今の発言…お前はあわよくば恭介に手を出そうとしてたのか!?」

「ううん。…出来れば二人と手合わせ願いたいかな〜と。」

「ざけんな!恭介には絶対手は出させねぇからな!」

 

言い争いが始まりそうなところへ、たっぷり食料を買ってきた二人がご機嫌で戻ってくる。

 

「ん?ふぁひ、ほーひはほ?(ん?何、どーしたの?)」

「恭介、食いながら喋るな…。」

 

そっと恭介を抱き寄せながら、絢之丞に耳打ちする。

 

「…って。どう思う?絢之丞。」

「…………さ・く・ら・く〜ん?」

「何ですか、絢ちゃん?」

「おめーマジでふっざけんなー!!」

 

絢之丞から鮮やかに繰り出される鋭い技を素早く避けながら郁は

 

「安心しは?本命は絢之丞。んで、浮気は男のロマン。

 そして何より、浮気すんのが男なら子供できゃしねーからよ。」

「おめーには倫理観というものがないのかーっ!!」

 

…まぁ、毎度毎度の痴話喧嘩だけど…。

 

「兄貴’s、何か楽しそう!誠人、混ざろっ!」

「え、いや…あれは混ざるもんじゃないと思うけどな…。」

「う?…違う…?誠人、一緒にっ。な?な?」

 

きらきらとした子犬のような目で俺を見つめ、くいくいと服を引っ張ってくる。

それがまた可愛い…。

 

「一緒なのはいいけど…あれは二人のコミュニケーションだから邪魔しちゃダメだって。」

「そうなのか?…う〜…残念…。」

「俺達は俺達で…コミュニケーションしようぜ。」

 

俺は恭介の腰を抱き寄せて、ほんの一瞬だけ唇を重ねる。

最近やっと意味が分かってきたのか、頬を薔薇色に染めて

 

「ま、誠人…恥ずかしひ…」

 

呂律が回らなくなりながら甘い声でそう言ってくれると、それはもうたまらなくて…。

 

「二人はほっといて、俺達は二人きりで楽しもうぜ?」

 

そっと相手の唇を指でなぞってから微笑みかけると、俺の腕に絡みついてこくんと

小さく頷く。……あー…恋人バカだって言われてもいい…。

 

「じゃ、絢之丞、郁。もう恭介は一人占めしていいだろ?」

「えっ?あ、もう行っちまうのか?」

「うん、回ってみる。他の出し物とかも見たいしな。」

 

いつの間にか郁に手玉に取られている絢之丞。これもまたいつもの事だけど…。

二人に別れを告げ、俺と恭介は人込みの中を歩き始める。

 

「絢之丞も、郁もいいやつだろ?まぁ、一癖も二癖もあるけど…。特に郁は。」

「う?うん!いい人!兄貴に奢ってもらった!」

「お前の基準は奢ってくれるかどうかなのか…?」

 

苦笑がつい浮かぶ。

それでも。何があっても、俺はこいつから離れられない。

俺の存在理由は、恭介のため。喜びも、幸せも全部…恭介から貰ってるから。

 

「出し物、オバケ屋敷とかもあるけど?」

「おっ、オバケ!?や、やだやだっ!他のがいいでありあり…。」

「クッ、しょーがねぇなぁ。じゃ、それ以外の見て回ろうか。」

「うんうん!ゴーゴー!」

 

 

 

心配も、不安もいっぱいだけど。

 

 

愛ってそんなもんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、今日も俺は世界一…いや、宇宙一大切な人の隣に居る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

これは難だって聞かれたら、単なる惚気SSだと答えます(オイ)結城です。

ナリメキャラ第2弾、至上最強の恋人バカ、清瀬誠人の出陣です(笑)

こいつは一途なトコ、根暗なと事いい、すごく結城にそっくりですね。(苦笑)

その分同化も激しい…ココで書いてる事の99%自分が思ってる事ですから。

冬華高校の二人組は、現在執筆中のBLSSの奴です。そのうちお目見えするかと。

この話、誠人の恋人に限りお持ち返り可!(いらねぇよ/笑)

 

 2005・1・13 結城 麻紀 捧

 

 

 

 

 

 

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