Take Care




















「…あー…暇だなぁ…。」


がさついた声が自分の口から漏れる。

風邪をひいているのだから『暇』という表現も不適切なのだが、何せもう眠気が訪れないほど寝てしまった。

今日は買い物をしようと思っていたのに、予定が丸つぶれなのだ。


窓の外は憎いくらい快晴。さっき窓の下を順平が軽い足取りで出かけたのを目撃している。

ついガルーラジェムが所持品にあったかと思考を巡らした。


「ワンッ!ワンワンっ!」


聞き覚えのある鳴き声がドアの外から聞こえた。


「コロ?…俺今お前と遊べないから…。」


犬にも風邪がうつるのだろうか?少し疑問に思ったが、それより自分の風邪が悪化しては困るだろう。

仮にも「リーダー」なのだから。


「ワンッ!」


がちゃっ、とドアが開くと同時に鳴き声。


そして、自分の目に飛び込んできたのは、今にも走りこんできそうなコロマルを止める人の姿。


「…美鶴…先輩?」


何とか声が出たのは、自分でも驚いた。


「あ………。ど、どうだ具合は?」

「熱はだいぶ下がりました…けど。まだ声が。」


ドアとベッドの距離は数メートル。


もしかしたらうつるかもしれないけれど。


でも、それ以上に彼女の姿を見ていたかった。

ずっと憧れていた人。やっと振り向いてくれた、彼女。

風邪で弱っているところへ顔を見せに来てくれたのに、無下に追い出す事はできない。


会いたかったのだから。


「食事は摂れているのか?」

「あんまり…食欲なくて。」


と、コロマルが隙をついて美鶴先輩の腕からするっと抜けだし、自分のほうに駆けてくる。

ベッドの前でくるくると駆け回り、遊んでほしいとアピールしてくる。



「こら、コロマルっ、は風邪なのだから傍に行ってはならないと言っただろうっ。」

「仕方ないですよ、美鶴先輩。コロだって普通の犬なんですから。」


上着を羽織り、ベッドから起き上がる。

しばらく寝続けていたせいで少し目は回るが、だるさは軽減していた。


「俺だって…うつしたくはないけど、傍にいたいんです。先輩の傍に。」

「っ!?」

「先輩のそういうしっかりしたトコも好きだけど、俺を心配して来てくれたトコの方がもっと好きだから。」

「なっ、何をいきなり言っているんだ、っ。」


慌てふためいて真っ赤になる。自分よりも熱がありそうなぐらい赤くなる彼女が可愛過ぎて、つい笑みがこぼれる。


「コロがいると二人きりじゃないからダメ…ですか?」

「そ、そういうわけではないが…。」


きっと、俺が具合悪いから甘えるのにも葛藤があるんだろう。

生真面目な人だから。


「先輩…看病してください。でないと俺、このままずっと寝込みますよ?」

「…そうなのか?」

「看病してくれたら早く治る気がする。」


俺がそう言うと、おずおずって感じで俺の部屋へと入ってくる。


いつもは腕を組み、威厳を漂わせながらなのに。

こんなにも可愛らしい姿を見る人はきっと限られているだろう。


「しかし、看病といっても何をしたらいいのだ?…そうだ、食事を摂っていないと聞いたが…。」

「先輩はここにいてくれればいいんです。」

「…どういう事だ?」


首を傾げている先輩。本当に色恋沙汰に疎いから出てくる言葉なんだけど。


「好きな人が傍にいればいつだって頑張れる。笑顔になるし、強くなれる。

 …美鶴の婚約者に食ってかかれたのだって、美鶴が傍に居て欲しいから…居てくれたから。」


ふらつく足を叱咤して、美鶴の元へ行く。


「……。」

「ようやく、名前で呼んでくれた…。」

だって、ずっと先輩と呼んでいたじゃないか…。」


美鶴の体をそっと抱きしめる。僅かに強張った後、ふっと体を預けてきた。

ほのかに甘い香水の匂い。


「俺のあげた香水、つけてくれてるんだ。」

「ああ。」


一つ一つ。

彼女の心の中に「俺」を広げている。


「これで風邪がうつったら俺、看病に行くから。」

「…ふっ…そうだな。だが、それだときりがなさそうだな。」

「俺はそれでもいいけど。そうしたら美鶴と二人きりなのが多くなるし。」

「っ…!」





でもまだまだ。






俺はもっと、美鶴で心がいっぱいだから。
























☆epilogue☆


「そうでありますか。お疲れ様であります、コロマルさん。」


「どうしたの?アイギス。」


さんを看病しに行く美鶴先輩を送り届ける任務を遂行したそうであります。」


「えっ!のやつ、風邪を利用してそんな事を!?くそー、羨ましい奴!」










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後足掻き

はいっ、すいません!ただいちゃつかせたいだけですいません!

本当は美鶴先輩に多機能エプロンをつけていただいて看病してほしいところだった…(殴)

あの人は本当に可愛いよ!ダウンの時真正面にいてスカートの…(以下自粛)

できればもう少しコミュが早めに発生してくれたらいいのに。本気で。


    2009・1.11  月堂 亜泉  捧





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