彼らは、非常に不思議な関係で成り立っている。

 

「赤澤、誕生日…八月三日だよね?」

「…ああ。」

「…プレゼント、欲しい?」

「無理してくれなくてもいいぞ。」

「うん、無理するつもりはないんだけどさ…。」

 

恋人同士の会話としてはどこかズレた会話。

それでも、この二人は上手くやっているつもり…らしい。

 

 

 

 

 

PRESENT FOR YOU

 

 

 

 

 

「赤澤、今日は早めに終わらせましょうか。」

「珍しいな、観月がそんな事言うなんて。」

「今日は赤澤の誕生日でしょう。僕はそこまで鬼になりきれませんよ。」

「(ウソつけ…。)じゃあ、ありがたく。そうしてもらおうか。」

「おおっ、今日は赤澤の誕生日だったんだーね、おめでとうだーね。」

「ふうん。八月生まれって似合うよね、赤澤。(暑苦しくて。)」

 

さり気に黒い木更津。純粋に祝う柳沢。かなり対照的ではある。

 

ところで、当の赤澤はあまり嬉しくなさそうな顔。

 

「どうしたんです?赤澤。」

「いや…それがな。」

 

彼の言う事には、今日彼が最も側にいて欲しい人物が、いないという事。

テニス部のサブマネージャー、 

赤澤の彼女でもある。

 

何でも、「夏ばてをした」という理由で、このところ一週間近く、部活に顔を見せていない。

 

「メールのやり取りはあんだけどさ、それも途切れ途切れで全然話がすすまねぇし、

 途中でメールやめちまうしで…。」

「寮には寄ったんですか?」

「寄ってはみたんだが、部屋には入れてくれなかった。」

 

ひどく落ち込む赤澤。

 

「気にする事ないだーね。」

「そうそう。きっとこの暑ささえ治まれば、元気になるって。」

 

かなりいい加減な慰めの言葉をかける。と、裕太がフォローに出る。

 

「部長、そんなに気にする事ないっすよ。だって先輩は……むぐぐっ!!」

 

木更津と柳沢がナイスコンビネーションで裕太の口をふさぐ。

 

「?」

 

「(こそっ)…裕太、あの事は秘密って言っただろ?」

「(ひそっ)喋ったら刑執行だーね。」

「…んふっ、どうしました、裕太君?(脅し)」

「(コワっ!!)…イエ、ナンデモナイデス。」

 

企みは、赤澤にばれてはならないのです。

部活のせいとはいえ、普段をないがしろにしがちな赤澤に、を会わせずに

その重要性を認識してもらうという。

なおかつ、更なるビックプレゼント。

 

を赤澤の嫁に仕立て上げる。

 

そう、今ウエディングドレス製作の真っ最中。

レースカーテンの生地を買い、せっせと作っているのだ。

それもあって、メールも上の空、部屋に入れることなどもってのほか、というわけだ。

 

 

、どうですか?出来の方は。」

「あともう少し…なんだけどさ、もういい加減軟禁状態は辛いんですけど。」

「今日が終われば終わります。大体、あんな会話恋人のするもんじゃありません。」

 

そして、冒頭部分へ戻るわけである。

 

「いいじゃない、こんなに大掛かりにしなくてもさ。」

「たまにはいいでしょう。」

「よくないっ。あー、お日様に当たりたいよぉ。」

「当たり過ぎは良くありませんよ。のような肌の弱い人は皮膚ガンになりやすいん

 ですから。赤澤を目指すのはやめなさい。どっちにしろじゃ無理ですけどね。」

「あのね、はじめこそ外に出てるんだからちっとは日に当たりなさいよ。青っ白い顔して。

 そんなんじゃビタミンが生成されないわよ。」

 

妙に親しげなのも実は従兄妹だからである。

何を隠そう、赤澤はこの繋がりでと付き合うようになったのだ。

 

「ねー、赤澤いつ来んの?」

「集合は七時にテニスコートへかけてあります。」

「ここへ迎えに来るんじゃないの??」

「違いますよ。」

「ふーん。」

「迎えに来て欲しかったですか?」

「別に。」

 

本当にこの二人は付き合っているのだろうか。

よくそういう疑問にぶつかるが、これはこれで、当人達はいいらしい。

 

「じゃあ先にいっててくれる?」

「分かりました。七時過ぎ、赤澤が着たらメールしますから、それから来るように。」

「うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「珍しい事もあるもんだなぁ。…あいつらが誕生日を祝ってくれるなんてよ。」

 

ぶつぶつと独り言を言いながら、テニスコートへ向かう赤澤。

彼はいつも、正規のルートを行かずに、女子寮の裏を通る近道を使ってテニスコートに

向かう。…そのおかげで、の姿を見るためという日課も、最近加わったものだが。

 

「赤澤。」

 

上から降ってくる、聞き覚えのある声に、赤澤は即座に反応する。

 

「り、!?お前、体調は、それに、そのカッコ…。」

 

うろたえる赤澤に構わずは、

 

「いくよ、赤澤!受け止めてよね!」

 

なんと、二階の窓から飛び降りた。

それを赤澤が必死にキャッチした。

 

「イテテ…お前、何で…。」

「赤澤の誕生日だから。私からのプレゼント…かな?ま…ちょっと乱暴な渡し方だけど。」

「…。」

「誕生日おめでと、吉郎。」

「…サンキュ、。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んふ…シナリオどおりですね。」

 

見事に僕の想像どおり動いてくれましたね。

実に完璧なシナリオ運びです。

まあ…惜しむらくは、あそこでが飛び降りた辺りでしょうかね。

僕のシナリオでは、慌てて駆け下りてきたを赤澤がドラマティックに抱きしめる

予定だったんですが…。の行動力をなめていましたね。

まあ、良しとしますか。

 

 

僕はゆっくりとテニスコートに向かった。

これ以上二人の間を観察するというのは無粋以外の何でもないですからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はじめのやつ…。」

「ん?どうかしたか?」

「ううん、何でもない。」

「そうか。」

「ね、テニスコートに行こう。」

「ん?」

「(はじめはともかくとして)みんな吉郎のお祝いするために用意してるから、ね。」

「ああ。」

 

 

 

 

 

 

傍目から見たら異色な格好の二人は、幸せそうな笑みを交わしつつ、テニスコートへ

ゆっくりと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わりあいと風の吹く、星の綺麗な晴れた夜の事…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

========================================

後足掻き

間に合わない、とか思って慌てて、40分で高速仕上げ。ごめんよ赤澤。忘れてなかった

けど、忙しかったんだよ、私も色々と。そして語りを観月にさせていたのはお気づき

ですか?分かりやすいように後半に言い訳がましい観月の語りを入れましたが(汗)

他者から見たカップルってどんなんだろう、とか思って書いてみました。

さっぱりティスティなカップルでも、やっぱり互いを想ってるから付き合ってるん

でしょうし…とか。その辺りを書きたくて。(書けてないけど/泣)なにはともあれ

HAPPY BIRTHDAY 赤澤☆

 2003・8・3 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送