電話しようかな

 

 

 

ピピッ…。

体温計が軽い音を立てる。

 

「三十八度二分…。」

 

僕は呟いて、体温計をしまう。

 

「全然下がりませんね…僕としては珍しく」

 

ベッドへ倒れ込むように寝ころがって、独り言を言う。

風邪の時は弱気になるのか、独り言が多くなる。

 

もう動きたくない…。

 

 

そうは思えど、この有様は酷過ぎる。四日間もろくに動いていないせいで、

部屋は散らかっているし、髪の毛もガザカザと不快な手触りになっている。

 

『はじめの髪の毛、私好きだな。すごく綺麗なんだもん。』

 

…僕の髪を触ってそう微笑んでいた。

は今何をしているんだろうか。

勉強…食事…まさか寝てはいないだろう。

 

「ああ…考えるのはよしましょう。」

 

頭がくらくらしてしまうし、何より、に逢いたくなってしまうから。

 

「…はぁ。」

 

深い溜息をつく。

ふと延ばした手に当たる硬質なもの。

 

携帯電話だった。

 

液晶画面を見ると、そこには今一番逢いたい人の名。

 

『熱出したって聞いたんだけど、大丈夫なの!?心配だよぉ〜(;_;)

 楽になったらでいいから返信してね。』

 

どうしてこうもタイミングがいいんでしょうか、この人は。

 

『熱は下がらないですが大丈夫ですよ。心配しなくても寮ですから皆がいますし。』

 

そう返信してやると、五分と経たないうちにメールが帰ってきた。

まさか…携帯の前で延々僕のメールを待ってたんじゃないでしょうね。

 

『大丈夫じゃないじゃない!何度あるのよ!!』

 

怒っているのがメールでも分かる。感情の起伏が激しい彼女らしいなあと思う。

表情がありありと浮かんできてしまって、愛しさがこみ上げてくる。

 

『…ちょっとメールが辛いので、電話しても構わないですか?』

 

などと、打ってみたりする。

半分は本当だけれど、一番はの声が聞きたい。

 

そんな気持ちから、僕の手はそんなメールを送信していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、着信。間違いなくからの。

 

「もしもし…。」

「はじめ!?大丈夫なの?熱は?食欲ある?」

 

心配そうなの声。ちょっと鼻にかかっているから、今にも泣き出しそうなんだろう。

 

「大丈夫ですよ。大丈夫ですからそんなに大きな声を出さないで下さい。」

「あ…ごめん。…で、どうなの?調子は。」

「三十八度から熱が下がってません。」

「ええっ!?ちょっと、全然大丈夫じゃないじゃない。今から行くっ。」

「駄目ですよ、にうつったらどうするんですか。」

「いいのっ!」

「良くないですよ…って、ちょっ、!?」

 

僕が止めるのも聞かず、彼女は一方的に電話を切ってしまった。

これは本格的に来る気なんだな、と思う。

溜息もつきつつも、嬉しかった。

 

 

僕の為に一生懸命になってくれるが、いとおしくて。

本当はずるずる甘えてしまいたい。看病なんてされたい。

 

(こんなことを言うなんて、僕らしくありませんね。)

 

そう思うけれど、これは本当の気持ち。彼女にだけ、僕は甘えられるんです。

幾度もけんかしても…それでも、お互い好きだから。

僕の弱いところも、見せられるんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

こんこん、と軽くドアがノックされる。

ふらつきつつもドアへ向かい、開けたそこに愛しいの姿。

 

「はじめ。」

。本当に来たんですね。」

「当たり前じゃない!高熱で苦しんでいる彼氏をほっとける彼女が世界のどこにいる

 って言うのよ。」

 

言いながら、てきぱきと部屋を片付けはじめる

置きっぱなしになっていたドリンク剤も、薬の瓶も、散乱していた洗濯物も。

 

僕はそっとに近づいて、後ろから抱きしめた。

僕の熱が高いせいで、彼女の体は冷たく感じた。

 

 

 

「ありがとうございます…。」

「はじめっ…。」

「…好きですよ。誰より、貴女が。」

 

「…うん。」

 

 

 

 

 

彼女の優しい声に、ふと力が抜けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電話と君の声があればそれでいい。

 

でもやっぱり、

 

 

 

 

 

、貴女のぬくもりが、いとおしいんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

========================================

後足掻き

うわわわ…何を書きたかったんだ。私。看病ネタでも一風変わったものをセレクト

しました。これ、実はSMAPの木村拓哉ヴォーカルのアルバム曲なんですよ。

いい曲なんで使いたいなあと。で、大好きな観月に白羽の矢が立ちました。ホントは

もっと長くなる予定だったんだけどなぁ…?友人宅で書いているせいかしら。

焦って仕上げてるのかな。うん。まあ…うちのパソコさんが直ったらまた修正でも

しましょう。はひ。

 2003・6・7改

 2003・5・26 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送